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恋したい王子さま

少しだけタイトルを変えました。

よろしくお願いします。


 王子は思春期真っ只中だった。



 顔は整っている。

 悩んでいた身長も、ようやく伸び始めた。

 小さい頃から、可愛い可愛い女の子みたいなんて言われてきたが、近頃は精悍さが増し男っぽくもなってきた。はずである。

 しかし、肝心の結婚相手がみつからない。

 王子として幼い頃はチヤホヤされ寄ってくるご令嬢は数知れず、大人気だったはずなのに。

 そろそろ相手を決めなくてはならない年齢になった今、周りにご令嬢が寄ってこない。



「いま、年頃女子の中で一番なりたくない職業は王妃らしいですよ。まぁ、王妃を職業と言っていいのかどうかは謎ですが」



 この頃は貴族と平民の垣根はだいぶなくなってきた。女性も仕事をし爵位も家名も継げる。

 それに伴い、王族という立場も随分と様変わりしていた。

 今の王族は、国のシンボルマークとして外交するだけで権力なんてものはほぼ何もないのだ。

 王子だって100年早く生まれてきていたら、もう今の歳には正妃と側室をもっていたであろうに。



「俺の嫁になるのが一番不人気……」



「なんでも、王妃になるくらいなら平民と結婚した方がいいと豪語するご令嬢もいらっしゃるとか!」


 

 王子はがっくりと項垂れた。思春期男子として希望も夢も打ち砕かれてしまったのである。



「あと十年もすれば然るべきお嬢様にちゃんと嫁いで貰えますよ」



「俺はっ!恋愛したいっ!!!友達たちは婚約者とか彼女とイッチャイッッッッッッチャッしてんの!!!なのに!!王子ってだけで不人気とか理不尽すぎねぇ?!」



「王子ったら、やんちゃぶってるのに純情なんですねぇ。どんどんお手つきしたらいかがです?顔で釣れば遊び相手には困らないですよ」



「ガーーーーッッ!!そういうことじゃねぇーーー!!!」



 お年頃なのだ。そういう欲求もあるにはある、だが王子は好いて好かれた相手と純粋に恋愛したいのである。



「今時、社交界デビュー前の女子ですらそんな夢見てませんよ」


 

 ゴンッ!!

 机に突っ伏したまま王子は動かない。



「窮屈だ」



 1人の時間なんて無いに等しい。学園と王宮を行ったり来たり。常に人に見られている。

 生まれた時からこの状態だった王子でも嫌になることがある。だいぶ自由になったこの時代、女性たちも嫌煙するだろう。

 このまま成人し、言われた相手と成婚し、時が来たら即位をし……。



「この人生に意味はあるのか」



「はいはいはいはい。もー、なーんでそんな黄昏ちゃってんですか。うちの王子はかわいいなぁ」



 王子は知っている。やたら茶化してくるこの側近候補もちっちゃくてかわいい婚約者がいるのだ。



「こないだ庭園のガゼボであーんってしてた……」



「やだなぁ、見てたんですか。声かけてくださいよー。リリーのお手製クッキー、見た目はあまり良く無いけどなかなかの出来栄えで、たまに焦げたりしてるのなんかがたまらなく愛おしいんですよ!」



 そんな野暮なことするはずない。しかもサラッと惚気をいれてくる。この側近候補はいつもそうなのだ。



「俺もしたい……」



「もー、欲しがりさんですねぇ。このチョコので良いですか?ほら、あーーーん?」



「チ!ガ!ウ!!!」



 そんな2人のやりとりを、遠くの窓から見つめているご令嬢が数人。



「あの2人またいちゃついて、私をどうしたいのかしら」



「王子と側近候補、ごちそうさまです♡」



「あ、あ!降りてきましたわ!!!今ならどんぶりいっぱい書けます!!ペンと紙を持ってきてちょうだいっ!!」



 王子は人気がないわけでは無い。年頃ご令嬢たちによる不可侵条約(妄想ならなんでもおっけー)が結ばれているのだ。



 恋愛に夢見る王子が、少女たちの妄想の中であんなことやこんなことをされているということを、王子はまだ知らない。


 


数ヶ月後、彼女たちの妄想本を側近候補が誕生日のお祝いでプレゼントしました。

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