第53話・復興
ここが貴族の屋敷か。
そうして俺が見上げるのはこの街の中部広場から少し北に行ったところにある貴族邸。
王都の貴族街に負けず劣らない大きさの豪邸であった。
「庭の世話も行き届いているな。シャレオツな豪邸だこと」
「シャレ……オツ?」
俺はミシアとエジル。ミシアとその護衛2人、ランバールの6人で門に来た。
門番は、俺とランバールのギルドカード、ミシアの貴族証明手形階級王、を見て俺たちが話をしに来た者たちだと判断したのか、門を開けた。
ちなみにミシアが貴族証明……長いな。まぁ証明手形を見せた時、門番が驚いて腰を抜かしたのは少し笑えた。
王族が来ることは知らされていなかったらしい。
そして、エジルはそういうの持ってないがランバールが事前に伝えていたのかとやかく言われることは無かった。
「ようこそ、私の邸へ。名前を『ハズラ・カラテアラ・レイヴンチェスト』という。以後お見知りおきを」
大きな扉から出迎えたのは、いわゆるカッコイイ、クールな大人だ。
この世界では珍しい黒い髪。砂のような色の瞳。
貴族と言うが鍛錬を積んだ騎士にも見えるその風貌は、平和ボケしている他の貴族とは少し違う感じがした。
「これはどうも。私はSS級冒険者『スログアドラー』という。こちらもよろしく頼む」
「私の名前はエジル。特にギルドには所属していませんが傭兵として活動しています。どうぞよろしくお願いします」
そして貴族……いや、ハズラは俺の後ろにいる人に驚いた顔をする。
ハズラはミシアがここにいることに気付いたようだ。
「こっ、これは姫様。1週間ぶりほどでしょうか。知らなかったとはいえ、御無礼致しました」
ハズラはミシアの前に移動し跪いた。
「よい、顔をあげよ」
これがカリスマ性ってやつか?口調もそうだが、とてもかっこいいな。
しかし打って変わってミシアの満点の笑顔で話し出す。
「なーんて、言えばいいですか?そんな畏まらないで、今の私は、この街を重んじる1人の少女ですから」
エジルに匹敵する1ミリの悪意の無い輝く笑顔に、俺は見惚れた。
「クエター様はこのような女性が好みなのでしょうか」
小さく頬を少し紅潮させるエジルが何か言ったが、聞き取ることができなかった。
「では、立ち話もなんですから、邸へお入りください。すぐにお茶をお出しします」
◇
「俺は敬語が苦手だ。素で話させてもらう」
俺がそう言うとハズラは気を害した様子もなく了承した。
「ランバールから話は聞いているな?」
「あぁ、モンスターの出現率が異常なまでに低くなっていると聞いている」
ハズラはお茶をひと口飲みテーブルに戻す。
その優雅な姿を見ると貴族なのだと改めて認識する。
「それによるこの街の経済的影響も、貴殿なら容易に想像ができるな?」
「あぁ、もちろん。今、レイヴンチェストの私兵を送り調査に向かわせていたところだ」
まぁ冒険者の方がモンスターの調査に慣れているからギルドの方が早く情報が手に入ったのだろうか。
「いくら王都が支援をしてくれるとはいえ、一時しのぎに過ぎない。この街だけで安定させるにはやはりモンスターの力が必要だ」
「そうだな」
「そこで、これを使えば良いと思うのだがどうだ?」
俺は1本の線香を取り出して渡した。
手に取ったハズラはよく見渡すが、見た目はマジでごく普通の線香だ。
「これは……魔呼びの線香…………?」
「!」
「広範囲の魔物を線香へ集結させる超広範囲影響魔導具?」
俺は何も言っていないのに、ハズラはこの魔導具の効果と名前を当てた。普通の人間にこれを当てるのは不可能だ。
だとすると……
(サト、ハズラを解析しろ)
【解析開始】
「これは強大な魔導具だ、使ったら凶暴化したモンスターが集まってくるだろうな」
【解析完了。名称・ハズラの『超鑑定』の能力所持を確認】
超鑑定か……
俺は大丈夫だが、ミシアを鑑定されると困るな。
超鑑定の能力には相手の称号を見ることができる効果がある。『神に愛されし者』の称号を見られたら、余計な詮索を喰らうかもしれない。
(サト、ミシアに鑑定遮断を一部発動させてくれ)
【了解。鑑定遮断を付与します】
「とても素晴らしい魔導具だとは思うが、自ら街の人たちを危険に晒すようなことはできない。ここまで長く待たせてしまったが、要求は受け入れることができないことを許して欲しい」
「いや、気にしないでくれ、こちらにも非がある。街の者たちを気遣うことができなかったのはこちらの責任だ」
確かに、いくら街が復興するための重要なものだからといって、相手はモンスター。
人を殺し、食し、犯す。
この世界で1番多い死因報告は、モンスター、魔物による攻撃、魔法など。である。
それをこちらから呼ぶのは街を危険に晒す行為でしかない。
「すまなかった」
ハズラは自分は悪くないのに、俺たちが帰るまで謝罪を続けた。
多分ハズラの罪悪感を大きくしている理由は、王族を待たせたのに望む結果にすることができなかったこととかそこら辺だろう。
責任感のあるいい貴族じゃないか。
ほかの貴族共とは違って。
「トハン様」
ミシアはとっくに宿に戻って俺はエジルと一緒に散歩をしていた。
そんな折にエジルは様付けで話しかけてきた。
様付けは今後の課題だな。
「なんだ、エジル」
俺は歩く足は止めず、少し後ろから聞こえる声に応じた。
「私が転移魔法を使ってミシアが通っている学院まで転移させれば良かったのでは無いですか?」
「あぁ、そのことか」
足を止めて振り向く、エジルは仰々しく起立していた。
跪こうとしたので制止して話をし始める。
「この世界の集団転移魔法は個人で発動できるものじゃない。自分1人であればできるものは少ないがいるにはいる。だが、集団転移魔法は違う」
俺が前に使った空間魔法は誰も見ていないと思ったから使ったが、今回は事情が違う。
もしエジルが集団転移魔法が使えると広まったら政治的に面倒くさくなるのは目に見えている。
貴族は強欲だからな。
見た目も良くて、強くて、移動もできる。
エジルがやられるとは思わないが念の為だ。
「くれぐれも力を出しすぎるなよ。この町だってお前の力があれば数秒で直せる。でも、全てを助けるのは人族のためにもならない。力を出すのは本当に危険だと判断した時だけにしろ」
「お気持ち、理解致しました」
「分かればいいんだ」
さて、そろそろミシアの出発準備も整ったかな?
国に帰ろう。
そうしてトハンは宿へ歩き出す。
平和が戻ったと思われた町を、不吉な気配が覆った。
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