第50話・呆気
「ど、どうなっているんですか!?」
声を上げたのはミシアだった。
近くの民家の屋根の上に転移させたので屋根の上にいるのだが。
ミシアだけでは無い、式神も巫女もルキも、口が地面につくかのように開ききっている。
「いっつ!!」
ミシアは右目を抑えて尻もちをつきそうになるがルキが支えた。
目からは血が少し出る。
「ふむ……貴女、代償魔法を使ったのですね」
いつの間にかミシアの前に立ったエジル。
エジルは無詠唱で回復魔法を展開する。
「代償魔法はどんな魔法を使っても治せない代償を負う禁忌魔法、やはり完全回復程度では無理ですか」
ミシアの目から出る血は止血されたが眼球の再生まではエジルでも無理なようだ。
エジルはまたもや、気が付いたら目の前にいた。
自分のしたことを恥じるようにエジルは口を開いた。
「クエ……トハン様より高い位置に移動してしまった御無礼、お詫びします」
エジルは、膝をついて深々と頭を下げる。
俺は少し慌てて小声で耳打ちする。
「人間達がいる前でその仰々しさはやめてくれ。まぁでも、俺とエジルとの関係を聞かれた時に返答に困るようでは怪しさ全開だ。俺とお前は……そうだな」
奴隷……はなんか人聞きが悪いし、こんな強い人を奴隷ということにはしたくない。
親子なんてもってのほか。
だったら
「幼馴染ってことでどうだ?」
俺が閃いたかのように指を上に指しながら言うと。
「トハン様が仰るならそういうことにしましょう」
膝をつくのをやめて起立する。
その話をしているうちにルキがミシアを抱えながら屋根から着地した。
同じく式神も巫女を抱えて飛び降りる。
「トハンさん……大丈夫ですか?」
小走りで俺の前に立ったミシアが問う。
俺は何ともなかったかのように
「大丈夫大丈夫、これでも俺強いし、ほら傷1つないだろう」
ミシアは俺の体を見て確かに怪我がないと確認して安堵のため息を吐いた。
しかし対照的にエジルは俺の体を見て。
「そうでしょうか……私から見たらトハン様は傷だらk……」
と俺の体の異変に気づいていた。
「おっほぉん」
俺は手を口の前に持ってきて軽い咳払いをする。
俺の意図を読み取りエジルは謝罪をする。
「も、申し訳ありません」
そう、俺の体は外傷は確かにないが魂への損傷が激しかった。
とんでもなく気持ち悪いし、体の奥底がチリチリした感覚がする。
しかしミシアに悪いとこを見せないようにと必死に我慢していた。
「とにかく一旦休もう、日も沈み始めてしまった」
正気を取り戻したのか町の人達は各々自分の家に帰っていく。
「私はここら辺で失礼させて頂く、災いの元凶は消滅した。この町にいる必要もない」
式神がそういうと巫女もどうやらどこかに帰るらしい。
式神は、巫女を抱えてどこかに消えた。
エジルはその動体視力でどこに向かったかわかるようだが、目で追っただけで追いかけはしなかった。
「我も1度冒険者ギルドを訪ねよう。情報収集という面ではあの場所に優るところは少ないだろう」
ルキはエジルとミシアに挨拶してからこの街にある冒険者ギルドに向かって歩き出した。
ひとまず俺たちは、休む場所を探すため、ミシアと俺とエジルの3人で宿屋を探した。
というよりエジルが探し出した。
「私について来てください、多少壊れてはいますが宿屋らしき場所を見つけました」
一瞬だけエジルが消えたのを俺は何とか認識できた。
恐らく今の一瞬でこの町を全て周り見つけたのだろう。
(サト、今回の被害と俺の精神的ダメージを解析してくれ)
【了解……解析を実行】
ほんの2、30分歩いて付いたのは『宵闇亭』というとこらしいが、今は関係ないとにかく休めればいいと思っていた。
「ごめんね、今ここはあの変な魔物のせいで散らかっててね。泊まるのはオススメしないよ」
いい感じのおばちゃんが窓や半壊した椅子やテーブルを片付けながらこちらに話しかけた。
しかし俺は極論休めればいいのでそんなことは気にしない。
「いや、泊めてくれ、金は払う」
俺は懐から白金貨を1枚取り出しておばちゃんにあげた。
「こ、こんないらないよ銅貨数枚で充分だってのに」
おばちゃんは貰った白金貨を俺に返そうとするが引き返す訳には行かん。
「いや、この店を建て直す足しにしてくれ、とにかく俺……僕は休みたいんだ」
ミシアは魔力枯渇の疲労が落ち着いたことにより襲ってきたのか意識が朦朧としていた。
エジルに関しては腕を組み近くの柱に背中を預け不遜に立っていた。
「まぁそこのお嬢さんもだいぶ疲れているように見えるしこれはありがたくもらっとくよ。貴族様からしたら白金貨なんて安いもんなのかねぇ」
おばちゃんはカウンターの下を少し漁り、鍵を取り出した。
説明を聞く限り2階に部屋があるみたいだ。
ドアを開けて部屋に入ると、ベットが3つ少し間隔をあけて並んでおり、枕元には照明が、窓も小さいながらあり。クローゼット、机も設置されていた。
俺はミシアを抱き抱えてベットにそっと置く。
その瞬間に寝息を立て始めた。寝てしまったらしい。
「ミシアは……眠ったよう……だな。グフッ…………」
トハンは血を吐くが再生で血は消滅……
新しい血に置換された。
くそっ、やはり魂へのダメージが大きい。
こんな顕著に現れるとはな。
「トハン様……大丈夫ですか?」
膝をつき倒れかける俺を支えて回復魔法をかけるエジル。
「大丈夫にみえる?それに回復魔法は意味ないぞ」
トハンはまた血を吐く、だが再生能力で身体的なダメージはなくなっていた。
「私には、魂を回復する力があるのですが一瞬で治るようなものではなく……申し訳ありません」
トハンを支えながらエジルは申し訳なさそうな声で言った。
「気にするな。ゆっくり治してこう、本当は傷だってゆっくり治っていくんだからな」
トハンはおぼつかない足取りでベットに座り、エジルが魔法式を展開、詠唱を開始した。
(本当の上位の魔法は詠唱がないと安定しないんだっけ)
【はい。今、名称『エジル』が唱えているのは超越魔法です。魔力消費量は絶大な量必要で、安定させる精神力も尋常ではありません】
「………今此処に力を!」
魔法陣が一気に光を増す。
『豊魂の治癒』
体がポカポカするようだ。
少し体調が良くなり、気分も良くなった。
「ありがとう……エジル」
俺はエジルに感謝の礼を言い頭を下げた。
エジルは主人が頭を下げたことに驚きを隠せないようだ。
(俺の今回のダメージは?)
【はい。能力により外的損傷は見当たらないものの、魂への甚大なダメージが蓄積しております。名称『エジル』の超越魔法により時間経過で治ることは見込めますが、数ヶ月はかかるでしょう】
(そうか、ありがとうサト)
トハンは慌てているエジルを横目にベットに寝転がった。
もう時間は21時を超えていた。すっかり陽は落ち、電気が無いため綺麗な夜空が拡がっていた。
にしても、呆気なかったな。
俺が多大な損失を負ってやっと瀕死にした幼体より何倍も強い成体をエジルはたった一撃で葬り去った。
まぁもちろん全盛期の俺より強いのだから当然ちゃ当然なのだが、だとしても呆気ない。
俺は疲れが溜まっていたのか、いやそんなことは能力で有り得ないんだが、まぁ疲れが溜まっていたのかそのまま眠りに落ちてしまった。
気がつくと朝で窓から暖かい光が入ってきていた。
「おはようございます。トハン様」
だがそんな光を超えてくる眩気を放つ天霊族ことエジル。
「あぁ、おはよう」
俺は看破の魔眼の効果をエジルには発動しないようにして、光をおさえた。
(にしてもこの偽装精巧だな)
【どうやら人間に紛れ込む為に、長い白髪で赤い目のアルビノを再現しているようです】
まぁ武器にも似合う見た目ではある。
エジルは色々と白いからな……。
「私は……」
「あぁ、おはようミシア。体の方は大丈夫?」
目を覚ましたミシアだったがやはり右目の損傷は目立つな。
「はい。一晩寝て、魔力もほとんど回復しましたし、朦朧感は無くなっています」
「そうか、なら良かった」
ミシアは顔を洗いに洗面所に行き、俺はサトからこの街の損失を、エジルはこの街の周辺を調査しに行くといい気が付いたら消えていた。
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