第46話・勝利の糸口
ワームの周りを旋回していた六芒星の札が光り輝く。
なにか見えないものがワームを縛り付けるかのようにしてワームは身動きが取れなくなる。
「防御力を下げるだけではなく動けなくするおまけ付きか。俺はあの式神を敵に回したくは無いな」
球体が一気に収縮する──────
同時に一気に膨張し虹色に輝く閃光はワームに着弾する。
ビームとして放射された閃光は俺の目の前のワームだけではなく建物を貫通し、この都市を貫通した。
地面はえぐれ、地面の中にあったワームの部分にもダメージを与えた。
だが……
「これでも………ダメージを与えるだけだったか……」
トハンは一気に魔力を持っていかれた反動で膝をつく。
しかしワームも少しだけ動きはするが大ダメージは与えられた。
そう「少しだけ動きはするが」だ。
大量の魔力の消失により、体全体が麻痺しているトハンにとって倒せなかった時点で殺されるのは目に見えている。
決着は付かなかったのだ。
「ははっ、ついさっきまで魔力を大事に使うだの散々言っていたのにこれか……【神】とはこんなにも脆い存在だったか?」
俺にとって【死】は状態の一種でしかない。
今死んだところで俺の細胞は神界で増殖し、再生してそこに魂が宿るだろう。
ただ、これは数千年とかそんなレベルでは無い。
万……億、どれほどかかるかはまだ経験がないので分からないがミシアに別れも告げずこの世界を去ることになる。
それだけは避けなければならない。
「はぁ、人間だった頃とは違い世界を達観してしまうのはやはりこの神の記憶のせいだろうか?いや、今はそんなことを気にしている場合では無いな」
魔力は少し残してある。最悪、空間転移でミシアを連れて逃げることもできるだろうが、それでは格好が付かない。
まぁそれで死んだらかっこ悪いどころの話では無いが、勝算があるなら、格好つけたいと思って当然だろう?
俺は喝を入れて無理やり体を動かす。
ギシギシと聞こえてきそうな程無理やりだがそんなん知らん。
『身体強化・極』
これで身体的な能力に差はほぼ無くなった。
身体強化・強だと、俺の魔力回復より消耗が少ないから回復の一方だが、さすがに極まで来ると回復より消耗の方が早い。
俺の魔力容量は常人何人分か計算もめんどくさいほどだが、常人が数秒しか使えないレベルの身体強化だ。どちらにせよ、なるべく早く終わらせたい。
俺のこの身体強化と相性のいい魔法を先程思いついた。
それを今、創造する。
『創造魔法・魔法創造【爆速】』
この魔法は瞬間的な速度は『超加速』を軽く超えて音速に近くなる。
亜音速というのだろうか?
だがあくまでで瞬間的な速度。魔法によって爆発を発生させ、その推進力をそのまま速度に変換する。
超加速は能力だが、これは魔法。
魔力を消耗するし、爆裂魔法は魔力効率のいい魔法ではない。でも、それに見合う威力が手に入るのだ。
もちろん体へのダメージは測りしれるものでは無いが、超再生の前ではあまり気にすることではない。
速度とはエネルギーだ。身体強化で質量が上がり、上級オーガに匹敵する一撃、それに亜音の速度を加えればその威力は計り知れない。
ルキ程の身体強化に青いハリネズミに近い速度を加える。
スマッシュ兄弟で青いハリネズミが魔王様の威力を持っているイメージか?
ってこんな危機的状況で呑気なことを考えている場合ではないな。
俺は爆速を発動させて一気に亜音速に迫った自分の体の速度をそのままに、拳を撃ち込む。
例の謎の防壁に阻まれるが貫通、衝撃が街を覆うと錯覚する程の衝撃波が生まれる。
俺は速度を殺しきれず、上に吹っ飛ぶ。
爆速の2つ目のデメリット、自分では制御できないということ、もちろん直線にしか進めない。
しかしワームに攻撃を与えられる今の手段はこれだけ、やるしかない。
俺は何度も爆速を発動させてエネルギーを生み出す。
ワームの前で腕に爆発を発生させ腕に亜音速を乗せたり、先程のように体自体に推進力を生み出させ、それを自分の体重を全部乗せて威力を一点に集中させたり。
ワームは明らかにもう瀕死という感じだったがワームはおそらく最後の攻撃を仕掛けに来ようと俺を民家の壁まで体当たりで吹き飛ばした。
「この攻撃さっきもう受けたな。なぜ同じ攻撃を交わせないんだ学べよな、俺」
ワームは触手を不思議な形にする。
「これは……設置型刻印式魔法陣!?」
設置型刻印式魔法陣。頭が痛くなってくる名前だが、しっかりとした脅威だ。
この魔法陣は設置型と名の通り本来であれば地面などに書いて魔力を流し込みその魔法陣を起動させる。
だが、この魔法は条件が多い代わりにこの世界の人間達でも俺が評価できるほどの威力、もしくは効果がある。
これはこの世界の人間に唯一賞賛を送れる素晴らしい魔法文化だ。
それをこのワームは触手で代用し、発動しようとしているのだ。
見た感じ攻撃系の刻印魔法だ。
しかし属性も付与されていて、乗っ取ることもできないし。
刻印魔法陣には魔法構築を止める弱点がない。
正確にはあるにはある。刻印されている部分を消してやればいい。
ただこいつは触手で代用しているせいで斬撃を飛ばしてもすぐに新しい触手に置換される。
「そんな刻印魔法の発動の仕方があるのか……覚えておこう」
俺は全力で防御魔法を展開する。
白い魔法陣が何重にもトハンの前に現れる。
だがあっちは条件付きの代償で威力が上がる。詰まるところ原理的には代償魔法を使った攻撃魔法と同じ。
代償魔法は防御魔法をほぼ意味をなさない威力が出る。
その理論で行けばこの刻印魔法は俺の全力でも防ぎ切れるかどうか……
『防御魔法・完全障壁』
この世界は矛盾が多い。
完全とはついているが名ばかりだ。
防ぎきれないとここで死ぬ。
【設置型刻印式魔法・淵極魔牢の発動を確認。炎属性最上級魔法の1つです】
「それはなんとまぁ俺程度にそんな魔法をねぇ」
俺はサトの言葉で10%の魔力を全て防御に回すことを決断した。
じゃないと死ぬ。
魔法陣から鎖のようなというか、黒い炎を纏った分銅が先端に付いた鎖が6本ほど飛んでくる。
迫力に欠けるが威力は本物だ。
俺は防御魔法を後ろに展開しながら、超加速を使って走り出すが当たり前かのように300kmに追い付いてくる鎖
あくまで予想だが1本で2枚くらい割れるだろう、俺の展開できる数は10枚。単純計算で12枚必要だ、普通にやれば死ぬ。
「頭を使え!神だろ、俺は!」
防御魔法は大きさに比例して防御力が強くなる。
それを利用するんだ!
6本のうち1本に集中して防御魔法を圧縮、小型扇風機程に圧縮された魔法陣は分銅に当たるが魔法陣は割れる。
とんでもない威力だ。
俺はもう1枚の魔法陣を今度はペットボトルのキャップほどに圧縮。だが破壊される。
しかし相殺されて鎖は消滅する。
生き残る糸口が見えた。
もう1つの鎖に集中して、ビー玉程の大きさにした魔法陣を当てるが破壊される。もう1枚同じことをすると相殺し破壊。
1枚で割るには鎖自体が持つ速度を殺さないといけない。
2回目になるが速度は威力だ。時速300kmに追いつく速度は伊達ではない。
残る鎖は4つ、俺の展開できる数はあと6枚。
無駄にできるのは2枚だけだ。
この状況下で繊細な魔力操作は難しすぎる。
今度はビー玉よりも小さい大きさにするがやはり破壊される。もう1枚で相殺。
「もっとだもっと小さく」
例えが浮かばないほど小さくした防御魔法。でもやはり一方的に1枚割られ、もう1枚で相殺。
あと2本の鎖で展開できるのは2枚……
もっと……もっと集中しろ。
もはや肉眼では分からないレベルまで圧縮された魔法陣。
魔法陣を当てるだけで至難の業だ。
魔法陣が鎖にあたる─────
ガギン!
その音と同時に魔法陣は割れてしまったが鎖も消滅する。
いける!
俺は勝利の糸口を見たような気がした。
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