第40話・一生の傷
「魔力が空っぽになる感覚は久しぶりだ」
普通の魔法使いなら気を失ったり最悪死ぬらしいが俺には耐性がある。こんなの聞かぬわ
ゆっくり歩いて街に向かう。
グシャン!
鮮血が砂を赤く染める。
「え……」
こちらへ向かってきていた町の人達が何十人かが集まった瞬間、砂の下から大きな口が現れる。
その大きな口は外から力を与えられたトイレットペーパーの芯のように一気に縮む。
それと同時に先程の音が聞こえ、口から赤い液体が飛び散る。
口の正体はなにか、言わずもがな蚯蚓の口であった。
ルキは焦っているかのような表情を見せる。
命令するかのような強い口調でルキは言う。
「おい、お主。放心している場合ではない。ワームが死んでいない以上、ワームは町にいる人間達を捕食する。早く助けるぞ」
その言葉と同時にルキは一気に駆け出し歩いたところの砂は高く舞い上がっていた。
どういうことだ、天地破滅花は確かに発動してヤツを頭から尻尾まで消滅したはずだ。前に使った時より10倍以上強くなっている。いくら魔純鋼砂とはいえ、あの時より何倍か強い威力なはず。
【天地破滅花は確かに発動し命中しました。演算結果・確実に死亡。しかし死亡は確認できませんでした。理解不能】
そう、トハンが放った魔法は確かに命中し、確かにこのモンスターを倒す程の威力があった。
しかしワームはピンピンしていて町の人達を捕食していたのだ。
「考えてる場合か!早く助けないと!」
トハンもルキに遅れて超加速で走り出した。
◆
町の地面が所々綺麗な円形で落とし穴のように穴が空いていたり、穴が空いたところから地面が抉れていたり。
町は完全に混乱状態であった。
明らかに爆発音のような音がする方向へ走る。
もしあのワームがずっと最高速で走っていたとしたらもう少しで着く。
前方には地面を何度か殴っているルキが見えた。
「そっちはどうだ!?」
「ダメだ。この町は魔純鋼砂の上にできている。私の攻撃ではワームに直接的なダメージは与えられない」
とは言うが俺にはどうしようもない。
俺の使える最大威力の天地破滅花を当てたのに倒せなかった。
心臓と脳がないとかあるのか?
もしくは魔法が全く効かない特殊能力でもあるのか?
そしてトハンとルキは協力して喰われかけた人達を持ち前の瞬足で何度も助けていた。
1人の子供を助けて急いでワームに追いつこうと駆け出した時。
長い一直線で食われかけている人影を見つけた。
距離的に助けられないと悔やむ……
だがその人影の正体は━━━━━━━
【報告。名称『ミシア』の命の危機を感知】
━━━━━━━━ミシア・アダルシアであった。
その事に気づいて超加速で走り出す。
だがやはり距離的に間に合わないし、縮地も再度発動可能時間が経過していないから使えない。
ルキも他の人を助けていて間に合わない。
トハンは絶望する。
どうする!?ミシアは今この町を混乱に貶めているモンスターが地面の中を移動するということに気付いていないだろう。
気付いていたとしても彼女は今おばあさんを助けていて周りへの注意を怠っている。
どうするどうするどうするどうするどうするどうする
新しい能力を創造するか?
でも超加速より速度を出せる能力は思いつかな……
1つあるじゃないか、超加速より速度を出せるある能力が。
この能力と合わせれば!
「奥義『創神速』代償魔法『能力瞬間上昇』」
この代償魔法は少しずつ効果が強くなる漸増系能力を一瞬で最高値にまで引き上げる魔法。
しかし代償魔法の名の通り発動には代償が必要だった。
代償はその時その時で代わり効果の強さによって代償のレベルが上がる。
今回はサトですら制御が難しい能力の能力上昇を選んだから相当な代償のはずだが。
ゴウン
大きな音が町を支配する程のソニックブーム。
トハンが通った跡はガラスが全て粉々になり、最初の蹴りの影響かまるで波の様な形を維持した町の煉瓦と砂があった。
ミシアとおばあさんを抱えたトハンは自分を下にして町の建物にぶつかった。
ミシアもおばあさんも無事で傷一つ無い。
そのことを確認したトハンは死体のように力が抜けた。
◆
【視点変更・名称『ミシア』】
今ミシアは国の用事でこの町の貴族の方へ会ってきていた。
円満に話は終わり、これからも国の為に尽くすことを約束してくれた、平等派の数少ない王族支持派である。
帰り道、護衛と一緒に町を見て回った。
今度、トハンさんと一緒にこの町を回りましょう!
私がエスコートしてトハンさんから「物知りなんだね」
そう言って貰えるかもしれません!
想像したらニヤついちゃいます!
でもいけません。今は護衛の前、王族として相応しい格好を見せなければ。
そうして浮かれているのが護衛にバレバレなミシアは服屋、レストランなど様々なところを見て回っていた。
「今日は風が強いですね」
麦わら帽子を被って晴れ渡った青空を見上げるミシア。
それに平民の格好をした何人かの護衛の1人が答える。
「そうですね。少し砂も舞っています。お身体を壊しては大変です。国に戻りましょう」
「そうね。風邪を引いてしまったらトハンさんが心配してしまいますわ」
国に帰るため、馬車を置いた場所へ戻ろうと1歩踏み出した瞬間。
耳にとても不快な音が聞こえる。
まるで悪魔が叫んでいるかのよう。
しかしミシアには不快感を与えただけで催眠はされなかった。
【称号『神に愛されし人』の効果が発動しました】
「どうしたのですか?」
護衛がミシアを離れ、悪魔のような叫びが聞こえた方向へゆっくり歩き出す。
それは護衛だけでなく町の人達も老若男女関係なく1つの方向へ歩いていく。
今の不快な音はなんだったのでしょう?
なにかの魔法でしょうか?でも私には効果がありませんし。
動き回るのは危険と判断したミシアは町にあるベンチに座る。
何分が経過し危険がないか周囲を警戒していると。
「大丈夫ですか?」
転んでしまって立てなくなっているおばあさんがいた。
ミシアは立ち上がり回復魔法を発動させる。
「ゆっくりしててください。私が治しますから」
緑色の光がおばあさんを包む。
「もうそろそろ治る!」 そう思った。
しかし気がつけば大きな口の様なものがミシアの下から出ていた。
周囲の警戒を怠った。
確実に死ぬ。
魔法でもこのモンスターには何やっても無駄な気がする。
ミシアは悲しんでいた。
走馬灯が見える。
楽しい記憶が蘇る。
トハンさんと会った日
私は彼に一目惚れした。
でも何故か悲しみの心も浮かんできて
なんで一目惚れした相手に『後悔』の記憶があったのか
今まで分からなかった。
でも今なら少しわかる気がする。
彼は
いや、私の魂と彼の魂は
きっとずっと前に会っていたのかもしれない。
ミシアにモノクロのノイズのかかった映像のようなものが見える。
「俺さ、君が好きなんだ」
「えっ!」
「もしかして気づいてなかったのか?」
「はい」
「そうか、まぁ気づいてなかったならなかったで丁度いい」
白黒の記憶の男が箱を持って開けながら差し出す。
「貴女の一生を私に頂けませんか?」
箱の中からでてきた指輪。
その宝石はこの白黒の記憶の中でも青く輝き。
私は泣く。
そこで途切れるモノクロの記憶。
この記憶は一体━━━━━━━━━━
体が持ち上げられると認識した時には数百mを一瞬で移動していた。
死体のように寝転がるトハンと正気を取り戻したおばあさんが近くにいた。
「トハンさん!?大丈夫ですか?」
すぐに脈を確認する。
しかし少しずつ弱くなっているのが分かる。
「目を開けてください!トハンさん!」
少し遅れて大きな角を持った長身の男が守るように前に立つ。
「お嬢さんとおばあ様。ここは危ないですのですぐに避難を」
地面から飛び出してきたミミズのような大きなモンスターを男は粉砕する。
肉片になったモンスター。
だが肉片は消え、またモンスターの部分が出現した。
なにかの能力だろうか。
モンスターが、走り出した長身の男を興奮気味に追いかける。
周りは静かになったが少し離れたところから何度も何度も爆発のような音が鳴り響く。
ミシアは回復魔法をトハンにかける。
「お嬢ちゃん。私も手伝いますよ」
おばあさんは水晶のような物を取り出して魔法をかける。
緑色の魔法陣、回復魔法だ。
2人がかりで魔法をかけ続ける。
しかし一向に良くなる気配はない。
「どうして!どうして治らないの!」
ミシアは泣きながら魔法を強くする。
頭からは血が流れ、背中からも出血している。
上位回復魔法『超回復』
ミシアの使える最上級の回復魔法であった。
魔力が枯渇し、魔法陣が維持されなくなる。
魔法陣は消え、魔法が使えなくなる。
おばあさんも今も一生懸命に魔法をかけ続けている。
「なのに……どうして治らないの?」
ミシアの全魔力を使って回復魔法をかけた。
ミシアはただの魔法使いではなく、天性の才能を持った魔法使い。
魔力量も常人の数十倍ある。
それでも治せない……
ミシアがトハンの手を握る。
ひたすらに祈った。
この世界にいるかわからない神に祈った。
彼を助けて下さいと
【了解。名称『トハン』を助ける方法が一つだけあります】
どこからともなく聞こえる抑揚のない声。
声は続ける。
【代償魔法の損傷は代償魔法でしか治せません。名称『ミシア』に提案「トハンの生命活動正常化」を何かを代償にすることで名称『トハン』は死に至りません】
声が聞こえた瞬間にミシアはその提案を飲む。
【了解。代償魔法を発動します】
白色のなにかがトハンを包む。
脈を再度確認すると、一定のリズムで正常化していた。
【では代償を支払ってもらいます】
いつまでも変わらない抑揚のない声。
しかしその言葉は重く、私にのしかかった。
【代償は────────】
◆
【視点変更・名称『トハン』】
目を開けるとそこは綺麗な青空だった。
しかし周りの至る所に瓦礫があり、空とは裏腹に未だ不穏な空気は流れている。
俺はなんで目を覚ましたんだ?
代償魔法で【生命活動異常化】という俺にとって悪い効果なのかよく分からない代償を背負わされ。
創神速の速度に体が耐えきれないから風魔法を応用して空気抵抗を無くした。
だが、2回も大技を使い魔力的にも精神的にも限界が来ていたその上に更に魔法を使い、完全魔力枯渇状態。
数年は目を覚まさないはずだった。
なのにどうして。
トハンはようやく気づく。
おばあさんに回復魔法をかけられているミシアのことに。
「ミシアはどうしたんですか?」
俺が眠る瞬間は傷一つなかった。なのにすぐ近くにはミシアの血が大量に流れていた。
トハンも大量に血を流していたが再生能力が動き出し、血液が回復したため再生能力にある『喪失部位灰化』が発動した。
「あなたが目を覚まさない間、彼女はずっと回復魔法をかけ続けていました。魔力が枯渇したのか回復をやめ、急に上の空になったと思ったら何かを話だし。急に右眼が破裂しました」
トハンが驚く。
苦しそうなミシアを見てトハンも回復魔法をかけようとするが止められる。
「止血は終わりました。時期に目を覚ましますよ。彼女の眼が破裂した瞬間、あなたは驚く程に回復しました。恐らく禁忌魔法に分類されている【代償魔法】を使ったのでしょう。しかし代償は右眼だけのようです。あなたはこの町を荒らしているモンスターを倒しに行っていただけませんか?」
ミシアの血は確かにもう出なくなっていた。
俺は自分のしたことを後悔する。
今思えば一瞬だけ速度を上げる能力を創れば良かったんだ。
盲目的になりずっと速度をあげることに固執していたのかもしれない。
「本当にごめん。ミシア、守るって言ったのに、一生の傷を君に作ってしまった。今はゆっくり休んでくれ」
トハンは立ち上がり魔法で肉体を強化する。
ミシアのおかげか魔力が全回復していた。
もっと慎重に考えて使わないと、ただ高威力にしただけでは意味が無い。
トハンは青色の光に包まれ浮かび上がる。
この町を恐怖に陥れた元凶を倒すため。
大きな音のする方向へ飛ぶ。
どうでしたか?楽しんで行けたら幸いです。
もし楽しんでいけたのなら、下にある
☆☆☆☆☆
の評価をつけてくれると嬉しいです。
1つでもつけてくれたら私は嬉しくてどんどん作品を書いていこうと思います。
ぜひよろしくお願い致します。




