第35話・堕ちた理由
「さて、どうするか」
トハンは王都にある塔のてっぺんで周りを見渡しながら考えふける。
正直どうやって証拠を掴めばいいかも分からないし、何が証拠になるのかもわからん。
この国では奴隷売買が合法化されている。だが、貴族は売る行為を禁止としている。
貴族が奴隷商売をした時、領民。
つまり自分の領地の民を奴隷化させることは容易い。
しかし、そんなのを合法化してしまうと誰も領民になろうとはせず、自分達で領外に出てしまう。
それを防ぐため、貴族による民の奴隷化、すなわち奴隷商売を禁止している訳だが……
「あいつは奴隷を買う時に怪しい動きを見せているしかし」
どういう訳かあいつの記憶には悪事をしている記憶がない。
まるで記憶を見られるのをわかっているかのように。
しかし記憶に悪事を行った記憶が無い。
だがリーハル家に定期的な高額な収入が入っているのは本人もわかっている。
「あーもう、なんであいつはこうも面倒臭いことをしているんだよォ」
(サト、お前の見解は)
【どうやら取引の際に記憶の忘却、もしくは封印を条件としているようです。条件達成型契約魔法による物です】
確か条件を満たすと契約が発動する魔法だったか。
なるほど情報隠蔽が完璧なのは本人が忘れているからか。
「でもそれがわかったところで俺の情報は証拠ならない。やはり実際に行っているところを現行犯でとっ捕まえるしかないか」
◆
そして数日後。
俺は学院を休み高台からリーハル家を監視している。
「サトが5分もかけて行った精密演算通りならそろそろだな」
ガラガラガラ
馬車がリーハルの門前に止まり。
扉からリーハルが出迎えていた。
『聴覚強化、望遠眼』
「ようこそお越しくださいました」
「出迎えご苦労、サイガン・リーハル殿」
「早速中へどうぞ」
中に入ったか、仕方ない強引な方法を使おう。
『存在遮断、隠密』
◇
堂々と中にいるがやはり存在遮断強いな。
「それで、今日はなんの御用で」
リーハルが謎の男に問いかける。
すると謎の男は。
パチン!と指パッチンをした。
その瞬間、リーハルがほんの一瞬意識を失い。
また目を覚ました。
「今日もあの件ですか」
リーハルはニヤリと笑い、お茶を飲む。
「あぁ、今日は白金貨50枚だ。今日は8人を貰いたい」
あの男の記憶を解析したいが、解析するには俺に恐怖心を抱かせないと。
まだ情報がハッキリしていない、まだ見ていよう。
「好きにしろ、私は金だけあれば問題ない。3日間私の領地を無制限に移動できるよう手配しておく」
そうしてリーハルは8枚の手紙を男に渡す。
「感謝するよ」
謎の男は手紙を貰い、手紙を異空間に入れて、同じく異空間から50枚程の白金貨を取り出した。
『透視、無属性魔法・模倣印刷』
アイテムボックスが使えるのか、あれは本人の意思がないと取り出せない倉庫のようなもの、ただの人間の入れられる量なんてたかが知れてるが、それでもあれくらいなら隠すのは簡単か。
「それではいつも通りこの白金貨を受け取った瞬間記憶が消えますが問題ありませんね?」
男は白金貨を10枚ずつ並べて50枚あることを証明する。
「あぁ問題ないぞ」
リーハルが白金貨に手を出す。
『契約破棄、強制契約』
トハンが右手を突き出しリーハルに向かって2つの魔法を行使する。
1つは男による契約を破棄する為に。
もう1つは今までと同じく白金貨を受け取った瞬間に全ての記憶を封印し、トハンの意思で元に戻すというもの。
謎の男は契約が破棄されたことも気付かず、馬車に乗ってリーハル家を後にした。
「さて、お前には眠ってもらおうか」
リーハルは声に反応し勢いよく振り向いたが、そこには紫の魔法陣、闇魔法を行使するトハンがいた。
「ではこいつを連れていくとしよう」
トハンはリーハルを担ぎ、青い光を纏って飛翔した。
◆
王室の窓からなんの悪気もなくすんなり入るトハン。
「陛下、リーハルを連れてまいりました」
しかし、「いつもの事」と気分を害することなくトハンに話しかける女王。
「何用で?」
「条件達成型契約魔法による記憶封印を掌握しました。今から尋問を開始すれば尻尾を掴めます」
トハンは経緯を説明してリーハルの記憶を戻して女王に渡した。
◇
【視点変更・名称】
私は侯爵家リーハル家の当主、サイガン。
私の領地はあまり富に恵まれていなかった。
そんな時、ある1人の男が現れた。
最初はもちろん警戒したが、話し合いをするためだけに、白金貨100枚を持ってきた。
白金貨100枚は他の貴族なら小遣い程度の金だろうが、私は違った。
「それで?そんな金まで用意して、私になんのようなのだ?」
話は簡単だった。
この領地に住む美男美女を奴隷にし、闇オークションで売るとの話だった。
領地を統括する貴族にはその領地の実質的な王である。
私が一声かければ、それは命令となり。
従わなくては行けなくなる。
しかし
「国家反逆罪だ。その話に乗ってしまえば、バレた時に私はどうなるか分からぬ。良くて一生牢獄、悪くて死刑だ」
私も馬鹿ではない。
その話に乗ってしまえば悪に染ってしまう。
「そりゃ、私も稼ぎ頭になるかもしれない御方に捕まって欲しくは無いです。なので御提案です」
「提案とな?」
この提案を聞くことが私の人生1番の悪手だったのかもしれない。
話は条件達成型契約魔法で記憶を消してしまえば、本人から話を聞くことは出来ないし、看破の水晶が発動することも無いとの事。
尋問の時、看破の水晶で相手が嘘をついているか、ついてないかを確認される。
しかし記憶が消えてる以上、消えてる時は本当に何もないように振る舞うことが出来るとの事だった。
「それで、私にどんなメリットがあるのだ」
サイガンは目を光らせる。
すると予め予想していた問いだったのか、即答してきた。
「一月に一回何人かを奴隷化できる権利を頂きたい、その代わりに私はオークションの利益の5割をサイガン殿にお渡ししましょう」
「5割……」
商売ではありえないほどこちらにメリットが大きい。
普通は3割が妥当だ。
「お前はどれほど稼げるのだ?それによって変わる」
「そうですね。もちろんオークションですので日によって変わりますが、白金貨10枚前後と言った所でしょうか」
白金貨10枚、つまり白金貨5枚か。
私にとって少しこの男を遊ばせるだけで白金貨5枚が手に入ると考えれば……
「よしいいだろう。しかし、何かあった時の責任はお前が全て持て」
謎の男は、コクンと首を縦に振って契約魔法を発動させた。
そうして私は悪事に手を染めた。
謎の男による奴隷商売が上手くいったのか、今では白金貨100枚を持ってくるようになった。
私は沼にハマったように抜け出せなくなり、男の手伝いをするようになった─────────
「ということらしいですよ、陛下」
「ふむ、まぁサイガンは処刑させるが領地の代理が必要だ。代理を私が立てるまでサイガンを野放しにしておけ」
そうして未だ眠っているサイガンに目をくばってトハンに言う。
しかしトハンは驚いたような顔で
「よろしいのですか?このままでは最低でも8人の領民が」
そう、あの話し合い的に8人誘拐される。
放置が長すぎたらもっと増えてしまうかもしれない。
「………じゃあ、トハンよ、お前がその謎の男をぶっ潰せ」
トハンは女王へ跪き。
「御意、女王陛下」
そう言って俺はサイガンを家に戻して、能力を駆使し、謎の男のアジトを見つけた
「さて、久しぶりの面白いことの予感だ!」
どうでしたか?楽しんで行けたら幸いです。
もし楽しんでいけたのなら、下にある
☆☆☆☆☆
の評価をつけてくれると嬉しいです。
1つでもつけてくれたら私は嬉しくてどんどん作品を書いていこうと思います。
ぜひよろしくお願い致します。




