第32話・嫌な気配
倒れてから数秒後。
「って……倒れてる場合じゃねぇ。ヤヤの安否確認しねぇと」
トハンは疲労困憊というような感じで立ち上がった。
【最低限活動補助魔力の使用はオススメしません】
「大丈夫どうせ死なねぇから」
【しかし……完全魔力消費は長い眠りに入ってしまいます。神族だとざっと1000年程でしょうか】
「はは、それは困るな」
トハンは無限収納から極上の魔力回復薬を出して飲んだ。
【魔力回復薬は性能が低ければ害はほぼありませんが効果が高くなればなるほど苦痛を感じるのでそれもオススメしな】
「もう飲んだもんは仕方ないし。俺は苦痛は感じないよ」
そうして気力を取り戻し。
探索魔法を使い。
ヤヤを探した。
◆
見つかったのは魔法の効果切れ地点。
発動場所から50km程離れた山のようなところにある崖下に倒れていた。
ヤヤからは火花が出て。
電気がビリビリと音を鳴らして力なく横たわっていた。
左腕、右脚は欠損。
左足もコードのようなものが繋がっているだけ。
腹部も大部分が欠損していた。
【損傷報告。損傷率76%。待機電源状態】
サトによるとそのままにしたら自然自己修復に数十日修復に時間がかかると言うが。
俺のせいでこんなことにしてしまった罪悪感もあり。
機械神のスキルで構造を把握し。
即時修復作業に取り掛かった。
◆
「おーけー。これで大丈夫かな?」
内部構造はほぼ全てを修復した。
皮膚までは修復していないので機械が露出している。
皮膚も直そうかと作業に取り掛かろうとしたら。
ヤヤは起動し始めた。
「部位損傷。外部による修復により状態良好。人間模倣の皮膚は修復されていない模様。自己修復手順を実行」
戦っている時に見たホログラムのようなものが体をつつみ。
ヤヤは見た目は完全に元通りになっていた。
「自己修復手順完了。起動する」
そうして目が開き。
レンズのようなものが少し動いていた。
まるでカメラのピントを合わせるかのように
「大丈夫?」
「…………大丈夫です」
そうしてヤヤはいきなり先程まで倒れていた崖を見据え。
急にパンチを繰り出した。
パンチした部分から大きな亀裂が入り。
岩が落ちてきた。
「ちょっ」
俺が物理障壁を貼ろうとする前に。
既に少し青みがかった障壁が貼られていた。
「急に何を?」
トハンが心配するような声で質問をする。
「原因不明のステータス上昇を確認しました。以前の私なら崖にヒビを入れることは出来ても亀裂まではできなかったはずです」
「そうなのか」
(どういうことがわかるか?)
【はい。彼女の部品は、神力によって創造された部品です。彼女のステータスは部品に依存します】
なるほど。
俺が創造した部品を使ったから前よりも良い部品になって。
ステータスが上がったのか
【上昇率はおよそ34%】
「私は観測機体。戦闘力は戦闘機体の100分の1にも及びません。これでも私は戦闘では弱い方でしょう」
なに?この強さで戦闘機体の100分の1だと!?
(なぁ。この世界で機械族ってどれくらいの立ち位置だ?)
【相手の能力や行動パターンを解析し。新しく設計。最適化を行い。相手を模倣し。相手を超える種族です】
(聞くだけでは最強だな)
【実際。機械族はある一面を除けば魔族より強いです】
(ある一面?それはなんだ)
【それは自発的行動をしないことです】
(ヤヤは自発的な行動をしているぞ?)
【彼女はなにか特別なのでしょう。一般的な機械族は指揮体の命令が来るまで何もせず。攻撃も、されたらやり返すことくらいしかしません】
指揮体に忠実で反撃しかしない。
命令を受けないと動かない。
本当に機械だな。
【相手にすれば最悪だが、仲間にすれば最高。それを体現した種族です】
「マスター?」
「あ、いやなんでもないよ。とりあえず家に戻ろうか」
ヤヤが俺の体に触れる。
にしても……なんで彼女はその影響を受けないんだろうか。
◆
俺は珍しく外をぶらついていた
今日は何も無い日だ。
討伐依頼も簡単な物ばっかで。
初心者の奴らの仕事を奪う訳にも行かないし。
かと言って学院は今日休みだ。
ヤヤとかミシア達は何か用事があるみたいだし。
そんなこんな考えながらトハンが歩いていると。
なにかに人が集まって野次が集まっていた。
「なんだなんだ?」
野次をかき分けながら見ると。
質素な服を着た、やせ細っている少年と。
豪華な服を着た、太った男が立っていた。
【解析結果・少年の方はリアン。男の方はサイガン・リーハル。侯爵家の人間のようです】
『スキル【状況分析】を開始』
よく見ると。
貴族の服が少し泥で汚れていた。
体を震わせながら貴族を見る少年。
怒鳴りつけながら少年を見る貴族。
少年が貴族にぶつかり。
泥が付いて、汚れたから怒っているのだろう。
「ホント、器のちぃせぇおっさんだな」
トハンが小声で言う。
だが、それを聞き付けたのか。
貴族の男は
「誰だ。今私を蔑んだのは!?」
野次を見回し探す。
(なぁ、サト。あいつのスキルって)
【解析結果『地獄耳』小さな音を大きくし。大きな音を小さくする能力です】
(はぁ、めんどいスキルを持ってるな。あのおっさん)
「はーい!俺でーす。蔑んだの俺でーす」
トハンは大きく手を振り。
周りにいた野次は道を開ける。
「平民風情が貴族を蔑みやがって!」
ドカドカ
そんな音が合いそうなガニ股で。
周りの騎士を引き連れて近づいてくる。
「騎士共よ!こいつをひっ捕らえろ!」
そうしてトハンは。
騎士にロープで手を結ばれ。
◆
牢獄のような場所に入れられた。
「さて、どうするか」
少年は、俺に貴族の目が向いた瞬間に路地に逃げた。
偽善者を演じるのも悪くない。
そう思っていた。
生命探知を使うも、俺以外の人はいないようだった。
「ここ出るか。狭いし臭いし」
そうやって結ばれた紐を引きちぎろうとした時。
(……この臭さ。なんか変じゃないか?)
【死臭に該当する臭いです。腐敗が進行しすぎて、臭いだけでは特定できません】
トハンは生命探知から感知魔法に切り替えて。
改めてこの牢獄を感知した。
すると。
(なんだ!?これは!)
【数百の死体が牢獄のあちこちに放置してあります】
よくよく見ると向かいの隣の牢獄には。
壁にもたれかかったほぼ白骨化している死体があった。
見えないが。
隣の牢獄にも、うつ伏せで倒れている死体を感知した。
トハンは縄を引きちぎり。
鉄格子を力でこじ開け。
本当に生きてる人がいないかもう一度生命探知をした。
すると。
【左、前方8個目の牢獄に微かな生命反応を確認】
サトが、トハンでは気付けなかった反応を報告。
トハンは急いで向かう。
「君、大丈夫!?」
先程やったように鉄格子をこじ開け。
小さな体を持ち上げると。
さっき貴族に怒鳴られていた少年にそっくりな子。
だが。
【彼の名前は、リハサ。同一人物ではありません】
その報告を聞いた瞬間。
牢屋に通じる鉄扉を開け。
鎧をまとった騎士がトハンのいた牢獄に向かう。
問題になる前に逃げるか。
トハンは騎士に見えないように亜空間を開いて入ろうとすると。
まるで泡のように境界が歪み。
弾かれた。
(何が起こった!?)
【不明。しかしマスターの体と亜空間に問題は無いようです】
トハンは亜空間を閉じ。
あらゆる可能性を検討し。
サトも同じことをしていた。
「鉄格子が歪んでいる!」
わざわざ声に出してくれて助かった。
リハサを風魔法でゆっくりと浮かせ。
トハンの生命力をリハサに分け与え。
超加速で騎士の背後へ行く。
『眠れ』
言霊を飛ばし、眠らせて。
騎士から鍵を回収、鉄扉を開けて外に出た。
警備が甘いのか。
出たらすぐ中庭のようなところに出て。
超跳躍し、風魔法で浮かせていたリハサを抱えて。
貴族街を抜けて、人のいない路地に音無く着地した。
「意外と逃げるの簡単だったな」
そうして難なく貴族邸から逃げ出したトハンは。
創造魔法でゴミ箱に見えるベッドを創造し。
中にリハサを入れて去ろうとする。
俺の生命力を分け与えたんだ。10日位は何も飲まず食わずで生きていけるだろう。
これ以上この子を生きさせるほど俺は善人じゃない。
もう一度超跳躍を使おうと踏み込んだ瞬間。
「何してるの!!」
声に驚き、超跳躍はただのジャンプとなり。
声のした方向を向くと。
「えーっと。さっきぶりだね
リアンくん」
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