第10話・奴隷を買う
「なぁ、シリク、お前が相棒になった記念に俺のできる範囲で何でもしてあげるよ」
相棒は大事だからな。これからも色々世話になるだろうし、ちなみにシリクは俺と契約をした。相棒として。
シリクは産んだ人と同じで白色の白竜で、契約した結果俺の使える魔法は全て使える。
「キュイ!(家が欲しい!)」
「え?ま、無理じゃないけどなんでいきなり家を?」
「キュイキュイイ!(のんびりできる場所が欲しいから)」
そういえば神竜族ってゆっくり出来る場所が好きだったな。
個体によって、森だったり、海だったり神竜族の分布はハッキリとしない。
シリクは神族へ進化したが、神竜族の特性を濃く受け継いでいる。そして、シリクの場合家が対象だったらしい。
「でも他にもあるんじゃなかったのか?俺なら、星も創ることができるぞ?」
「キュイキュイィ!(トハの好きな場所は俺の好きな場所でもあるから!)」
地球で生活してた時、俺は家が1番好きな場所だった、契約をしてその影響を受けたのだろう。
「ちなみに【トハ】って俺の事か?」
「キュイ!(そうだぞ!)」
まぁ相棒なんだしいいか。
でも、俺は冒険者だ、1つの都市に定着したりしないだろう。どうしたものか。
【なら私におまかせを】
(ほぅ?どうするんだ?)
【新しく空間を創ればいいのです】
なるほど、まだ人間だった時の前提があるから気づかなかったが俺専用の別空間を創ればいいのか。
それは名案だな。
(いいなそれ。頼めるか?)
【了解】
「今からお前の為の空間を創ってそこに家を建てよう」
「キュイ!(ありがとう!)」
【亜空間の創造に成功しました】
そんじゃ亜空間に行ってみるか、ここだと人目に付くから。そう思って路地裏に入って空間転移。
シュン──
近くの森に来た。
「よし、亜空間を開いてくれ」
【了解】
そして目の前に大きな穴が現れた。
光の差か中の様子は見てない。まぁ入ってみたらわかるか。
「よーし!入るぞー」
◆
「ここは、平原!?」
【マスターの記憶にある。【地球】の情報を元に、大自然な地球を創造しました】
「確かに、何故か懐かしい気配がするな」
【それは星力ですね、亜空間と言っても新しい世界をつくったようなものですから、地球とほぼ同じの星力に懐かしさを感じているのでしょう】
「なるほどなぁ」
「キュイキュイ?(トハは誰と喋っているの?)」
「自分の能力にだよ、まぁそんなことはさておき家をちゃちゃっと創っときますか」
(もしかしたら、外の世界に出すかもしれない、だからその世界の貴族の家みたいな感じで創ってくれ)
【了解】
その瞬間、台座などができ、色々なものが積み上がっていく。
そして、気づいたら周りは庭になっていた。
少し見上げるくらい大きい屋敷をみて少しびっくりだ。
【完了】
異世界でよく見る貴族って感じの家ができた。
大きいのはそうだが装飾も凄い。金持ちの家オーラ満載だ。
「うへーデケェなぁ」
ん?デケェってことはこれ掃除するんだよな?
魔法で綺麗には出来るでしょうが、力はあまり使いたくないし………
あんまり気は進まないけど、奴隷を買うか?でも元日本人としてなんかダメな気が……
普通、使用人というのは、代々受け継いで行く、だが、俺は代々受け継いできた人なんて居ない。
それに生命を創るのはもうしちゃダメだし、それは世界の絶対法則に反してしまう。
世界の絶対法則とはその名の通り世界に共通してあるルールのことだ。
父上も宇宙を創った時にはもう既にあったという。
世界の絶対法則を違反し続けると様々な力が封じられるらしい。
弟の1人がルールを破り続け、能力の半分を失ったらしい。
「はぁ、まぁいいかシリクは家の中に入っててくれ俺は少し出かけてくる」
「キュイ!(分かったぞ!)」
◆
よし、とりあえず都市に空間転移だ。
そうして都市に転移し、頭の中にある地図を頼りにゆっくりと歩いた。
「ここが、奴隷商か……」
他の建物とは少し違い大きかった。
二階建てだが、地下もあるだろうな。なにか気配がする。
俺はドアを開け商館に入った。
「ようこそ!奴隷商へ!なんの奴隷をお求めに?」
手をすりすりしながら言う。
アニメとかでもよくあったが、商売する人はなぜみんなあのような行動をとるんだろうか?
まぁそんなことは今はいいか。
「家事を全般的に出来る奴隷が欲しい」
「すみませんが予算は?」
「白金貨5枚までだ」
(!?こいつ、見た目はただのガキだが、相当な金持ち、どこかのボンボンだろうか?こいつ、ここで拘束して金を盗るか)
【と、思っていますが】
(勝手に読心しちゃダメだろう。まぁ奴隷商の人も結構な屑に見えるな)
どうやら、奴隷と一言で言っても違法な奴隷商売もあるようだ。
この奴隷商が違法じゃないことを祈るが。
「それではこちらへどうぞ」
俺を奥の部屋へ送ってくる。
挙動がガッツリ怪しい。
【報告・奥に大量の戦闘能力を持った生体反応を確認】
ガチャ
「今だ!お前たち!こいつを捕まえろ」
「………」
(今、首輪が光ったな、これが奴隷の付ける魔道具か)
『殺意のオーラLv3』
ピクッ
奴隷達の動きが止まった。
やはり覇気は強いな
「な、なんだお前、お前は貴族のボンボンだろ?なぜそんなオーラを出せるのだ?」
「貴族のボンボン?ハッ。俺をあんな奴らと一緒にするなクズめ」
この世界のほとんどの貴族は、同じ貴族以外を平民含め人間などと思ってはいない。
人の事は見下し、駒のように扱う。子爵以上の奴らはそんな奴らだ。
ただ、男爵より下の人達は違う。
この商業都市ザンツブルグや前居たイクリーナだって、男爵家の人が領主だ。
「俺の名前はトハン、この都市の人間なら分かるんじゃないか?」
「お、お前は、スログアドラーのトハンか!?」
「思ってたんだがスログアドラーってなんだ?答えてくれたら、今までしたことは水に流してやる」
「分かった、答えるからとりあえずそのオーラを消してくれ!」
どうやら、スログアドラーは【ストロングアドベンチャラー】略してスログアドラー、らしい。
「ふーんま、いいかとにかく、奴隷、売ってくれるよな?」
「は、はいぃ!少々お待ちください!」
◇
「では、こちらへどうぞ」
そうして今度こそ奴隷がいるところへ案内されたが、ほぼ監獄である。
奴隷はほぼ全てが亜人だ。
亜人の理由はこの世界の人族の国がほぼ全て人族絶対主義、だからだ。
だから亜人は嫌われ迫害される。そして奴隷へと落ちる訳だ。
そもそも亜人とはなにか。
「亜人」とは蔑称だ。人族以外の種族を亜人と見下した言い方をする。
神族として客観的に見て、優れているのは人間ではないと思うのだがな。むしろ身体能力が高い分獣族の方が優れていると思う。
(家事スキルが高い奴を見つけてくれ)
【はい、観察眼・鑑定眼・解析眼を発動します】
「ここには他にも戦闘奴隷や性奴隷等たくさんおりますよ!」
性奴隷、最悪の響きだ、だがこの世界ではこれが普通なのだ。胸糞悪いにも程がある。
【発見】
名称・スラン・クラトリル 種族・白獣族
性別・女
能力
特級家事
特級料理
特級育児
特級護衛
特級護身
上級房中術
称号・亜人奴隷・不運な人生を送りしもの・人間不信
(何だこの家事の為に産まれてきたような子は、最後のはいらないが)
見た目は、白髪に黒目の獣族だ、モフモフしたい……じゃなくて。
「この奴隷にする」
「この物は性奴隷で1つのスキルしか持っていません。家事スキルは1つも持っていませんよ?」
どういうことだ?
【おそらく、上位の能力までを鑑定する物を使ったのでしょうが特級までを鑑定できるものではなかったのでしょう。その為唯一の上級能力である。房中術だけが表示されたのだと思います】
(なるほどな)
「いや気に入ったからこいつにするんだよ。分かってないな」
「それはそれは、良い性格をしてらっしゃる」
◇
「それでは今から奴隷契約をしてもらいます」
その後説明を受けた。
その1・奴隷は隷属の首輪により主に逆らえない
その2・奴隷は自主的に自殺してはならない
それだけだ。
「では今から始めます」
『我・無の精霊の加護を受けし者・今此処にその力を顕現せよ【奴隷契約】』
キィィィィン
「それでは代金、金貨4枚です」
金貨4枚、日本円で40万円だ……やっぱりいい気持ちはしないな。
「ほらよ、俺は優しいからなさっきの騒ぎの謝礼としてやるよ」
そう言いながら大金貨1枚を放り投げた。本音は金貨4枚出すのがめんどかったからだ。
「ありがとうございます。それではまたのご利用をお待ちしております」
見た目通り獣族みたいだ、正確には白獣族というらしい。
この子の称号が気になり記憶を読んだところ。人族に村を襲われ、男は例外なく皆殺し、女はこの子以外の全員が弄ばれ奴隷に…
という感じだ。母親や友達の弄ばれられる姿を目の前で見せられ、父親を殺されれば、こうなる。
どうやら美人な子が未体験だと高く売れるらしい、だからこの子以外は…
そして目に光がなく、生気のない声で
「私を買って下さりありがとうございます。私の名前はスランと申します、私のことは如何様にもお使いください」
どうやら自分が性奴隷として買われたと思われているらしい。そりゃあ自分に性奴隷としての才能しかないと思ってしまっている状態なら仕方ない。
「あぁ、俺の名前はトハンよろしくな。とにかくここは人が多すぎるな」
そして路地裏に来た
「私をどうされるのですか?ここで私は…」
何やら勘違いされている。
「言っておくけど、俺はあいつの前では、演技してたけど俺、君に奴隷として働いてもらう訳じゃないから」
「じゃあ私は何を?」
『亜空間出現』
「来て」
◆
「君には今日からこの家のメイドをして貰うよ」
「……はい」
(なぁ、またなにか悪い方に捉えてないか?)
【読心発動「ここで、ろくに食べ物も与えられずこき使われ続けるのか…さっきはあんなこと言ったけど私が役に立てることなんて1つしかないしあんな言葉嘘でしょう」です。どうやら人間不信により人のことは信じられないようです】
(まぁ別にすぐ働いてもらう訳じゃないしいいか少しずつ慣れてもらおう)
「キュキュイーキュイ!(おかえりートハ!)」
「おうただいま、シリク」
「キュイキュイ?(この子は誰?)」
「この子は、今日から君の世話をしてくれるメイドさんだよ。くれぐれも意地悪とかしちゃダメだからね?」
「キュイ〜(そんな事しないよ〜)」
そしてシリクがスランの肩に乗る。
「キュイ!(今日からよろしくね!)」
【名称、スラン・クラトリルが称号・神族のメイド・元神竜族に気に入られし者・創造神の加護・竜神の加護を獲得しました】
「とりあえず中に入ろうか」
(この人、この猫と喋っているのでしょうか)
ガチャ
(いやぁ始めて入ったけど、意外ときっちりしてるな)
【それは罵倒と捉えて?】
(いや褒め言葉だよ)
「とりあえず飯にするか」
【一汁三菜。栄養を完全に管理された料理を創造します】
俺は椅子に座り、料理を頬張る。やはり美味い。
日本人はやはり和食が1番だな。
「………」
スランは立ったまま。俺の食事を見ている。
「さぁ」
「え?」
「どうしたの?食べないの?座ってもいいよ」
「なぜ奴隷にこんな料理を?」
「だから言ったじゃん君は奴隷として扱わない」
「でも…」
「じゃあこれは命令だ。ここに座って、ちゃんと食べて元気になって」
渋々、と言った感じで座ってスランは料理を頬張った。
美味しそうに食べるその姿はどこにでもいる女の子と変わらなかった
「君はしばらく働かなくてもいいよ。君には休む時間が必要だ。あっちにキッチンあるから食べ物は自分で作って」
「ほら、シリク行くぞー」
「キュイ!(分かった!)」
俺は家の少し大きい扉を開けて
「俺は冒険者としての仕事があるからまたしばらく家を空ける。ごめんね」
そう言って手を振って家を出た。
◆
そして俺は数日間冒険者として依頼をこなした。
数ヶ月後・亜空間
「……あの人は不思議な人だ、こっちの思っていることがわかっているようで、それでいて優しくて、本当に私に何も言わず休めと言われた。たまに帰ってきても私の安全を確認するためだけだったり………少し、あの人を信じてみようかな」
【称号・人間不信を喪失しました】
◆
「ここか…」
読心で見た男を、俺の持つあらゆる方法で見つけ出した。
【融合能力【暗殺】を発動します】
崖に空いた小さな穴。洞窟は明らかに人の手が入っていて人が住んでいる気配を感じさせる。
少し進むと人の声が聞こえてきた。能力で集音し、少し盗み聞く。
「いやぁ亜人の村を襲って奴隷に出すのは儲かるなぁ。それに前に襲った白獣族は美人ばっかで楽しかったな」
どうやら集団として他にもたくさんの村を襲ったらしい。ほんと、こういう奴らはどの世界にもいるんだな。
【融合能力【戦闘のオーラLv5】を発動します】
これくらいあれば人族は恐怖で動けなくなるはずだ。
「やぁお前ら」
「っ!お前、だ、誰だ?」
「ハハッそんな怖がるなよ。俺はSSランク冒険者のトハンって言うんだ!」
「SSランク冒険者だと!?ハッタリだ。」
「これを見てもそう言えるかな?」
そう言いながら竜力を手に込めて
『武技・空拳』
ドガガガガガ
激しい爆音と共に地面を波動だけで抉りとっていく
「おっと、こんなところで使ったら洞窟が崩れてしまうなぁ」
「な、なんだこれ……お前はなんで俺たちを襲うんだ?SSランク冒険者様がこんな雑魚達に手をわ煩わせるほどじゃないだろ?」
「そうだなぁ、人を害する者は、人だろうが魔物だろうが世のため人のために制裁を加える。なんてかっこいいセリフが言えたらいいんだけど俺はそれほどの人間じゃない」
【スキル【縮地】を発動します】
男の目の前に現れる。
目は赤く染まり、男達を威圧する。
【能力【恐怖の魔眼】を発動します】
「ただ、お前たちがやったことが気に食わない、人を騙して村に入り。しばらくそこに住み信頼関係が築けたら、仲間と合流そして、男は殺し、女を弄ぶ。その光景を見ている時の感情を知ってしまった、だから俺が代わりに復讐する、ただそれだけさ?」
「何をするつもりだ?殺すのか?いいぜ殺せよ」
「SSランク冒険者ってのは色々出来んだよね、ここで殺してしまったら、今まで死んで行った人達が報われない、だから全員が産まれてきたことを後悔するようなことをしてやるよ」
パチン
指を鳴らした瞬間男達は死んだ。だがもちろんこの一瞬であいつらは少なくとも今までしてきたことを後悔したはずだ。何をしたかは秘密だ。
そして今思った。人を殺した、なのに何も感じない、むしろ清々しい。
人を殺す罪悪感より、苦しんだ人たちの復讐ができたことの嬉しさの方が勝っている。
「俺は、もう人じゃないんだな、人は下等種族、そういう概念が存在する。生態ピラミッドの頂点、神族、自覚はない、でも少なくとも心のどこかで人族は下等種族という固定概念がある」
それにしてもあいつ、俺の死の恐怖に耐えて俺に話し続けてきたのか……もし、この才能を他のとこに伸ばしていたらな……




