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四・散・爆・破  作者: ドナルド均一ン
1/1

プロローグ

 花屋が爆発した。シクラメンが宙を舞った。花弁と茎は断罪され、そのすべてが赤く染まった。通りの人間たちは痛い目を見、爆破された者の残骸を見た。


 虫けらのようではないか! 何が命、何が尊さだ。ここには薄暗い血と暴力しかない。少なくとも俺は行動を起こした。だからこそ俺は今、しこたま血と暴力の雨に打たれているのだ。


 顔面を打ちつける水。俺は腫れ上がった瞼を持ち上げる。するとイボまみれの顔が現れた。

「起きやがったぜ、この野郎」イボ男が言った。

「ひでえ顔だ、2時間噛んだガムみてえ」知らないバカが言った。


 暗い部屋だ。打ちっぱなしコンクリートルームの真ん中で地べたに座らされている。首は回らないし腕も脚も動かないが、それぐらいは分かる。絶望的な状況だということも。

「それじゃあ、切って終いにするか」イボが言った。

「何を、なにを、ナニを?」バカが言った。

 イボが懐からナイフを取り出し、バカが手拍子する。


 信じられないことに、拘束は一切されていない。もっとも、ぶちのめされた身体は微動だにせず、健康的な部位は一つも見あたらない。逃走不可能、反撃不能。おまけに今から勃起不能にも陥るらしい。


 イボが俺の太ももに手をつける。やつは手慣れているようだった。途端に現実味がなくなる。増えるものはたくさんあるものだ。ムダ毛、腫瘍、面倒。しかし無くなってしまうものは……いや、こちらもたくさんあるな。忘れてくれ。

「永遠におさらばだ」イボは刀身をぎらつかせた。

「さらば青春の光」バカはバカを言った。


 俺は最期に何か言おうとした。懇願だろうが悪態だろうが何でもいい。この空気に、社会に、人間の愚かさに、杭のような言葉を。くそったれ資本主義。すべての弱者に女神を。パソコンのフォルダにあるエロ画像を削除してくれ!

「うぉべべっ」俺は呻いた。血が喉に詰まったせいだ。言葉にならないなんて、これ以上ない表現じゃないか。


 俺はそこで、行方不明者リストの新規メンバーになる予定だった。しかし、最悪の闖入者がそうはさせてくれなかった。それでも、その時の俺には、死ぬよりマシだと思ったんだ。

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