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「え? レースにチーかまは参加できない?」


 それはその日の酒場での出来事だった。

 今日は雑貨屋が休みで、キョウちゃんも食事に参加していて。

 ついでに捕まったらしいノースも一緒に、グロウと僕と四人でテーブルを囲んでいる。


「そうだよー。だってチーかまちゃんは小型犬でしょ? 雪ぞりレースは人を乗せて走るから大型犬限定になってるんだ。……あれ、知らなかった?」

「……知らなかった」

 ここで衝撃の事実である。

「あれ? でもレースのためにってノース君も僕に犬笛をくれたんじゃないの?」

「君付けするな、気持ち悪い。ノースでいい。単純に犬を買っているなら犬笛くらい必要だろうと思って渡しただけで、他意はない。むしろそれで勘違いさせたのは……」

 ちらりとみな揃って酒場を動き回るオードちゃんに目をやる。

 そうして幼馴染組ははぁっとため息を吐いた。

「あいつの仕業か。あいつ、本当にたまに抜けているんだ」

「まさかチーかまちゃんが小型犬だってことを忘れてるだなんてねー。というか、今も多分気づいてないよね。犬と言ったら雪ぞりレース! くらいにしか思ってなかったんだと思うよ」

 二人は揃ってフォローもせずに言いたい放題で。

 僕は苦笑を返すだけで。他には何も出来ずいる。

 二人は付き合いが長いだけ合って、下手にフォローも出来ないのだ。

「ま、まあ一緒に開催されるペット大会には参加できると思うよ! あっちは名前を呼んで一番に飼い主のところに来たら優勝だから、チーかまちゃんなら余裕でしょ!」

「……なにか違う気がするけど、良いのかなぁ」

「なに、優勝しておくことで箔はつく。あの牧場には優勝犬が居るらしいと言うだけでも人が来るようになるしな」

「現状、人が来ても対応出来ないんだけどね……」

「ほ、ほらノルズ! 気を落とすなって! チーかまと優勝する、それがお前の一番大事なことだろう?」

「グロウ……」

 その変な名前で優勝者はーと呼ばれることを考えるとグロウのことも恨めしくなってくる。最近では可愛いようにおもえてきたところもまた、更にそれを加速させる。

「……来年は余裕ができたら大型犬を飼ってみようかなぁ」

「まあ牧場だし、犬は多くても構わんだろうさ。俺が紹介してやろう」

「ノースく……ノースって案外面倒見が良いよね。最近わかってきたよ」

「ふん、お前のことはどうでもいいが牧場が発展してくれれば町の貢献にもつながるからな。そのための布石だ」

「まーたそんなこと言ってー」

 キョウちゃんは大分酔っているのか、ウリウリとそのままノースの頭をなでくりまわす。やめろよといっているが、満更でもない様子のノースを見ていると、本当に仲がいいんだなぁとぼんやりと思った。

「なんだなんだ? お前もしてほしいのか? じゃあ俺がしてやるよ、ウリウリ!」

「ちょ、やめてよグロウ!」

 そういうグロウも大分酔っている様子で、僕の頭を撫でくりまわし始めた。


「はーい、追加のエールをお持ちしましたー! って、みんな楽しそうでずるいなー。わたしはあくせく働いてるっていうのに」

 そうぶーぶーと言うと、オードちゃんは次の席へと急いで駆けていく。


 全部オードちゃんが発端なんだけどなぁと思いながらも、その日は遅くまでその四人で飲んだのであった。

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