表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/80

6

「ところでお前さん」

「は、はい!


 ふたりきりになったところで、テッドさんから話しかけられる。

 まずい、何か粗相でもしただろうかとドキドキしていると、テッドさんは顔を近づけて耳打ちしてきた。

「お前、うちの娘のことどう思う?」

 こ れ は !

「ち、違うんです! 別に変な目で見ようとかそういうつもりはなくてただ隣に座れたのが嬉しくなってちょっとばかり挙動不審になったかもしれませんが、変なことは考えてませんーーー!」

「あ、いや……そういう意味じゃなかったんだが……まあ答えになってるから良いか。そうかそうか、気に入ってくれたか」

「き、気にいるだなんてそんな……!」

 むしろ大好きですがぁ!

「あの子は男手一つで育てたせいか、男っぽいしがさつなところはあるしで、一つも女の子っぽくなくてな」

「か、可愛いと思ってます!」

 テッドさんが話している途中に声を上げるのは失礼だとはわかっていたけれども、耐えきれなくなって声を上げる。

「オードさんのこと、すごくすごく可愛いと思ってます! 農場に来てくれた時に嬉しくて舞い上がっちゃったくらいには、かわいいって僕は思ってます!」

「ほう。んじゃ、ウチのを嫁にもらってくれるか?」

「よ、嫁だなんて恐れ多い……!」

「だがいまのはそういう話だよ。この町には若い男が少ないから、嫁の貰い手がない。それでそこまで言ってくれるとは、期待させてもらっていいってことか?」

「そ、それは……!」

 僕ではなくて、オードさんの気持ちもあることで。

 もちろん僕としては嫁に来て欲しい気持ちはめちゃくちゃあるんだけれども、じゃあくださいでうまくいくはずもなく。

「お、お互いの気持ちさえあれば、その……」

 是非に、とまでは言えなくて。

 とはいえ、嫌だなんて口が裂けても言えやしない。

「ふーむ……」

 そんな僕の答えにテッドさんはじっと僕を見つめると、ニヤリと口角を上げる。

「ウチは女房から家を出ていかれてる。おかげさんでオードのやつは恋愛ってやつに退避感を持ってるみたいだ。それを変えられるかな、青年よ」

 そういうとポンっと肩を叩いて、テッドさんも厨房の方へと消えていった。


 ……これは、合格?

 なんだか外堀から埋めたような状態になったけれども、オードちゃんへの情熱は伝わったと思っても良いんだろうか?


「ああ、そうだ」

 ひょこりと厨房から顔を出したテッドさん。

「しばらくはうちの看板娘を取らないでくれよ?」

「お父さん!?」

いたずらっぽさを滲ませたそんな笑みでそう言えば、厨房の中からオードちゃんの焦ったような声が聞こえてきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ