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「ところでお前さん」
「は、はい!
ふたりきりになったところで、テッドさんから話しかけられる。
まずい、何か粗相でもしただろうかとドキドキしていると、テッドさんは顔を近づけて耳打ちしてきた。
「お前、うちの娘のことどう思う?」
こ れ は !
「ち、違うんです! 別に変な目で見ようとかそういうつもりはなくてただ隣に座れたのが嬉しくなってちょっとばかり挙動不審になったかもしれませんが、変なことは考えてませんーーー!」
「あ、いや……そういう意味じゃなかったんだが……まあ答えになってるから良いか。そうかそうか、気に入ってくれたか」
「き、気にいるだなんてそんな……!」
むしろ大好きですがぁ!
「あの子は男手一つで育てたせいか、男っぽいしがさつなところはあるしで、一つも女の子っぽくなくてな」
「か、可愛いと思ってます!」
テッドさんが話している途中に声を上げるのは失礼だとはわかっていたけれども、耐えきれなくなって声を上げる。
「オードさんのこと、すごくすごく可愛いと思ってます! 農場に来てくれた時に嬉しくて舞い上がっちゃったくらいには、かわいいって僕は思ってます!」
「ほう。んじゃ、ウチのを嫁にもらってくれるか?」
「よ、嫁だなんて恐れ多い……!」
「だがいまのはそういう話だよ。この町には若い男が少ないから、嫁の貰い手がない。それでそこまで言ってくれるとは、期待させてもらっていいってことか?」
「そ、それは……!」
僕ではなくて、オードさんの気持ちもあることで。
もちろん僕としては嫁に来て欲しい気持ちはめちゃくちゃあるんだけれども、じゃあくださいでうまくいくはずもなく。
「お、お互いの気持ちさえあれば、その……」
是非に、とまでは言えなくて。
とはいえ、嫌だなんて口が裂けても言えやしない。
「ふーむ……」
そんな僕の答えにテッドさんはじっと僕を見つめると、ニヤリと口角を上げる。
「ウチは女房から家を出ていかれてる。おかげさんでオードのやつは恋愛ってやつに退避感を持ってるみたいだ。それを変えられるかな、青年よ」
そういうとポンっと肩を叩いて、テッドさんも厨房の方へと消えていった。
……これは、合格?
なんだか外堀から埋めたような状態になったけれども、オードちゃんへの情熱は伝わったと思っても良いんだろうか?
「ああ、そうだ」
ひょこりと厨房から顔を出したテッドさん。
「しばらくはうちの看板娘を取らないでくれよ?」
「お父さん!?」
いたずらっぽさを滲ませたそんな笑みでそう言えば、厨房の中からオードちゃんの焦ったような声が聞こえてきた。