38
今日はノルズくんの家の新築祝い。
皆で楽しく飲み食いして、騒いで、楽しんで。
そんな中でふと、一枚の絵を見つけた。
コモシやメトに囲まれて、笑っているノルズくんの絵。
それは本当に楽しそうで、こちらにも感情が伝わってくるような絵だった。
こんな絵を描ける人を、私は一人しか知らない。
その一人も小学校の時に両親の絵を描いたっきりで、人物画を描いたのを見たことのない人の絵だった。
町が好きで、海が好きで、そればかりを描いている他人の絵だった。
「どう? 上手く描けたでしょう?」
「っ!」
いつの間にか後ろに来ていたらしいその作者は、そう私に声をかけてくる。
「これが、私の告白」
そう言ってノルズくんの顔を見る目には、まだ感情が残っていて。
「上手に、想いを込められたと思うんだ」
そういう声は、どこか寂しげだった。
私だったら、こんな風にして思いを伝えられただろうか?
いや、封じ込められただろうか?
それはきっと一生わからないこと。
だって私の想いは、封じられることなく伝わってしまったから。
「ちょ、なんで泣くのよ! ノルズが心配するでしょう!」
「だって……」
こんな風に鳴くのは卑怯なのかもしれない。
けれども、一人のこの人の親友として、伝わらなかった思いが切なくて、悲しくて。
「堂々としてなさい。そうしないと、奪っちゃうから」
そう言って笑うこの人の強さを、心の底から羨ましいと思う。
本当は自分が伝えたかったはずだ。
自分があの人を捕まえたかったはずだ。
それなのに、私の背を押して、自分はなにも言わぬままに立ち去った。
強くて、優しくて、温かいあなたにいう言葉は、
「……ありがとう」
ごめんなさいではなく、この言葉。
それに笑って答えてくれたこの人は、本当に強い人だと、そう思う。




