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 ここで少し、ゲームのことを思い出そう。


 あのゲームには好感度メーターがあって、それを上げるたびにイベントが起きていた気がする。

 僕がキョウちゃんとのイベントを起こしたとしたら三回。

 出会いと、海と、エスコートだ。

 この三回くらいでは残念ながら気になる人、位の認識のはずで、好きまでには至ってないって僕は記憶している。


 グロウがこれからはぐいぐいくるぞと宣言したとおり、メインヒロインであるキョウちゃんとのイベントはこれからたくさんあるのだと思う。

 でも、それを回避するのではなくてきちんとこなしていかなければオードちゃんからの好感度も下がる。つまり、それを回避するって方法はないってことだ。


「ああもう、どうしたらいいんだよぉ……」

「おいおい、そんな暗い顔すんなって。せっかくボロ屋がピカピカの家になるんだぜ?」

「それもそれで不安なんだよぉ……」

「おまっ! 俺に出来ないって言いたいのかよ!」

 グロウを適当にいなしながら、悩みつつも農作業に没頭する。

 すると、コモシの葉が大丈夫というようにわさわさと僕の頬を撫でてくれた。

「はは、大丈夫だよ。ごめんね、考え事をしながらコモシも面倒見られたくないよね」

「……こいつ、毎回思うが本気で野菜と離してて気持ち悪いよな」

 わう? とグロウの横にいるチーかまが首を傾げて、グロウに返事をしている。

 農作業が終わったら、今度はチーかまの訓練だ。

 牛や羊を追えるように、勉強させてやらなきゃいけないんだ。


「ああ、そうそう。お悩みのノルズくんよ。少しばかり僕の助言を聞き給え」

「はいはい。なんですかー?」

「いや、結構マジな話なんだけどよ。お混え、この世界をゲームと同じと考えちゃいないか?」

「え?」

 今まさにそうだと思ってましたけれども。

「今まさにそう思ってましたって顔してるな。いいか? ゲームと同じなら俺っていうイレギュラーな存在はいないし、この農場だって農場のままで牧場になろうとなんてしなかったはずだ。それなのにそれが起きてる。つまり、とらわれるな」

「とらわれるなったって……」

「いいか? キョウの好感度をあげなきゃオードとも離れてしまうとか、バカなこと考えるなよ。むしろキョウとのことは忘れろ。恋愛とはそういうものだ」

「グロウが恋愛を語ると胡散臭いよね」

「恋人がいる俺を胡散臭いとか言うかー!? いいか、でもこれはマジだ。二人の気持ちを考えても見ろ? キョウが好きだと思わせておいて、実はオードが好きでしたって……最低じゃないか?」

「……二股っていいたいの?」

「そういうことだ。だからお前はひたむきにオードのことを考えろ。キョウのことは考えてもいいけど、本気で好きになってから向き合ってやれ」

「……うん」

「うむ、わかればよろしい」

 そう言ってグロウはボロ屋の方へと歩いていく。

 あ、コケた。キメたつもりがキマらないやつである。


 でも、そうか。

 じゃあ今朝の行動は卑怯でも何でもなく、僕は正解だったのだろうか?

 僕はオードちゃんが好きだよって言ったようなもんなんだけど、多分伝わってないけれど。


「まあ今日からお前もオードと共同生活が始まるからなー! 少しは進展してみせろよ、進展!」


 すっかり忘れていたことをグロウが思い出させてくれる。

 そうだった! 今日から僕、宿や住まいになるんだった!

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