【5】
受信料を徴収しない民放テレビ局により制作された無料放送だからといって、この手法を好意的に受け止める人間はまずいないだろう。
よって不快に感じた視聴者が、この愚行に対する対抗処置としてチャンネルを変えることは理解出来る。
『少なくとも、私に影響はない。どんな番組であれ、人間が作るテレビ番組の楽しみ方は心得ているので、チャンネルを変えられることは大した問題ではない。唐突に電源を消されてしまったら…それは悲劇でしかないが…』
もっと言えば憤怒のあまり、自前のテレビならば破壊したところで、他人にとやかく言われる筋合いはない。
『いや…それは困る! 私は路頭に迷ってしまう』
視聴者によっては『これじゃまるで…大好物のドッグフードを前にして、飼い主に“待て”の指示を出され、ヨダレをだらだら垂らしながら待ち続ける飼い犬と一緒じゃないか~!』と憤りの台詞を喚きながら、破壊行為に及ぶかもしれない。
だとしても、だ。
新品購入のために自分の懐が痛むだけ、ただそれだけの話である。
お預けをくらう犬
CMを見させられる人
テレビを探して街中をさまよう私
しかし本当に知りたい有益な情報ならば、関心の薄い、取るに足らないCMだったとしても…『このやり口は視聴者を愚弄している』などと憤ることを抑え、リモコンに手を掛けることもなく、人間は正解を待ち続けることだろう。