表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/29

【24】


 奥村 聡様


 ご無沙汰しております。

 お元気ですか? 真弓です。


 早速で恐縮ですが…

 航に関することで筆を執らせて頂きました。


 『大きくなったら何になりたい?』

 そう訊ねられたら少年時代のあなたは何と答えたでしょうか?

 年齢が低ければ低い程、職業からかけ離れた[憧れの対象]が幼き口から発せられますよね?


 男の子なら…やれウルトラマンだの、やれ戦隊ヒーローだのと。

 当然、勧善懲悪の世界で活躍する正義側のヒーローに、子供が憧れを抱くのは自然なことで…それは誰もが通る道で…言わば王道。

 真っ直ぐに育ってくれているな『順調! 順調!』と、子の親ならば安心することでしょう。

 しかしながら、息子の航が目を輝かせて眺めていたのは…ゴムなのです。無機質のゴム。

 それも衝撃を和らげる、決して主役に成り得ない、陰で支える脇役のゴムです。

 サポート役だとしても何かの役に立っているのであれば、悪者と呼ばれることはないでしょうが…航はゴムのような縁の下の力持ち的な役割に関心があるようで…。


 先日、駅のプラットフォームでのこと。

 電車を待っていたとき『電車はどうやって動いてるの?』と航に訊ねられました。

 定刻通りに到着した電車の屋根に、ちょこんと取りつけられた、ひし形のパンタグラフを指差し『あそこから電気が通って、電車は走ることが出来るのよ』と私は説明しました。

 それからというもの、ことあるごとに駅に行くことをせがまれました。

 ゴムに憧れの眼差しを向けていた息子が、他の男の子と同じように乗り物に興味を抱き…“普通”になってくれたと、親としては安堵したのですが、何てことはない、航の目的は車両本体ではなくパンタグラフだったのです。パンタグラフそのもの。

 ゴムからパンタグラフへ憧れの対象が変化しただけで…『あなたは…どれだけ縁の下の力持ち系男児なの?』と航の将来を憂慮しています。

 文字通り、社会の歯車になることに喜びを感じ、自ら進んでその役目を志願し、結果ズル賢い人間に利用され、不遇の人生を送ることになるのでは、と親である私は息子の行く末を心配してしまいます。


 親の取り越し苦労なら良いのですが…血は争えないと申しますし、参考までに小さい頃のあなたがどのような子供だったか、お聞かせ願えないでしょうか?

 何をそんな些細なことで、と思われるかも知れませんが、親としては気に掛かり、こうして筆を執らせて頂きました。


 返信お待ちしております。 真弓


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ