表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/29

【18】


 会話とはいっても、私が一方的に話をしていたようなものだが、あっという間に時間は過ぎ去り、気づけば太陽は西の空に沈もうとしていた。

 太陽の代役を買って出ているパトカーの赤色灯が、地上を赤く照らしている。

 そして樋口の“現在地”をしっかり把握するため、太陽光の代わりとして、地上から屋上に向けサーチライトが当てられている。

 不自然に浮かび上がる樋口の全身を眺め、私は足元で目を留める。

 手入れが行き届いているとは言い難いが、スーツ姿に違和感のない革靴を樋口は着用していた。

 

 そこで、私は人間界のルール、取り決めについて考えを及ばせる。

 『確か、この国の人間が高所から地上にダイブするときは、履き物を脱ぎ、綺麗に揃えてから飛び降りるのが通例だと記憶しているが…』

 私は外斜視の瞳を樋口の顔面に向ける。

 「お前…最初から飛び降りるつもりないだろ?」

 断定的な物言いは、真実を炙り出す効果があることを私は知っている。

 「飛び降りたとしても、死ぬ気は更々ない。違うか?」

 押し黙ることが樋口にとっての回答、即ちイエスなのか?

 口を噤んだままの樋口は、地上から光を当てられ続けている。こめかみから頬にかけて伝う汗が、はっきり見て取れる。


 クイズ番組の司会者に、解答を促されているのに、正解が思い浮かばず、無言でスポットライトを浴びるパネラーさながらに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ