表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/29

【13】


 ニュービルディング芝の周囲は騒然としていた。


 ビルを取り囲むように停車した警察車両は赤色灯を光らせ、救急隊員の姿も確認することが出来る。

 放送局が近隣にある港区の土地柄か、マスコミ関係者とおぼしき者も目につく。

 そして学生やサラリーマンなど、年齢がまちまちの野次馬は皆、同じ動作を続けている。

 まるでアイドルユニットの振りつけのように皆一様に…自分のスマートフォンを取り出し、屋上にいる人間にレンズを向けている。


 「ね、ねぇ…ちょ、ちょっと…ヤ、ヤ、ヤバいんだけど?」

 学生服を着た女子高生は、興奮のためか、目の前の状況を上手く言葉で表せない。

 単語を繋いで文章を構築することが出来ず、隣にいる友人の肩を叩きまくっている。

 「痛い痛い! 痛いって~! えっ…あれって何かの撮影じゃないの? 映画とかドラマの…」

 「はっ? ち、違うよ~事件事件…ドキュメンタリーだよ。屋上に人がいるんですけど~」

 「え~っ…ドラマじゃなくてニュース? ねぇねぇうちらテレビに映るかな~?」

 アドレナリンが分泌されているのだろうか…どことなく二人は嬉しそうだ。

 「そうかも~…おかんにラインしよ。録画録画! テレビ録画!」

 「ねぇあの人、ホントに飛び降りるつもりなのかな~? ここから落ちたら痛くない? 私…無~理~」

 状況判断力が乏しく、限りなくゼロに近い女子高生二人組。

 彼女たちは、大掛かりなイベントに偶然遭遇したミーハー女のように、妙なテンションの上がり方をしている。

 感情表現が不具合を起こし、なぜか二人はその場でピョンピョン跳び跳ねている。

 『けっ・・・はぁ・・・』

 私はかぶりを振り、溜息は自然と漏れた。

 『はぁ・・・どうかしている・・・この国の民は』


 地上では、揃いの作業服を着た人間が集合し、万が一に備え、巨大なエアークッションが相応しい位置に設置されようとしていた。


 『そろそろ…』

 私は屋上にいる対象者の元に行くことにする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ