堕落ちゃんの戦い
───────………………
狭い通路を通り、光差す水中の都へとやってきた。
(……ちょ、二度目の死を迎えそう……もう本当に死ぬっ……!)
……死なれちゃうのは嫌だなー……。
僕はトレントに空気袋を被せ、そのまま奥深くへと潜り進んで行く。
(……そこの『霊団の神殿』なら空気があるはずじゃ。頑張れっ……!)
──────モガモガモガモモガモガモガモガアァァァァァッッッ!!
空気袋を失った僕は窒息寸前のところで、神殿の封印扉を解放して転がり込んだ。
「……危うく僕も精霊の仲間入りをするところだったよ……」
(……ティータちゃん、こっちじゃ……)
トレントは僕を『零限の間』と書かれた祭壇へと導き、声を静める。
(……あそこを見るのじゃ……)
「……!!」
そこにいたのは、『大魔将軍』のひとりである『魔人ゼルブレード』本人であった。
(……ここが現れたのは、奴が地上侵略の準備整ったからなのじゃ……)
「じゃあ、アイツを倒せばここは再び封印されるのね……?」
トレントは激しい頷きを繰り返し、ゆっくりと私に振り返る。
(……しかし、今の主では勝てん。あれは強力な魔将のひとりじゃぞ……)
「トレント。ひとつだけ約束して欲しいんだ」
僕はクリクリとした彼の小さな目を見つめ、再び話しかける。
「僕があれを倒したら、この契印を消してくれるよね?」
(……約束しよう。主に平穏な生活をもたらす祝福も兼てな……)
僕は聖剣を床に置き、ゆっくりと移動する。
(……ティータちゃん、何をするのじゃ……殺されてしまうぞ!?)
「大丈夫だよ、トレント」
──────「僕を信じて」
──────………………
僕は武器を持たない無防備な姿のまま、魔人へと近づいて来る。
「ニンゲン。ニンゲンの女。殺されにキタカ?」
「違うよ。あなたにお願いしに来たの」
僕は彼の隣に座ると、彼の深淵なる闇の瞳を見つめて囁く。
「僕、欲求不満なの。強い人の隣で世界が壊されるのを見ていたい……」
「………………」
魔人は僕の身体全身を強引に掴み上げると、その鋭い口で僕の首筋を舐めまわす。
「……んっ……」
…………怖いよ…………殺されちゃうよ…………。
「……不思議ダ。貴様ノ体から溢れるフェロモンが、俺ヲ興奮サセル……」
魔人は鎧を脱ぎ、無防備な姿のまま僕の前へと再び姿を現した。
「俺ノ『魔妻』トナレ。ダガハンコウスレバコロス。ドンナトキモダ」
「い、いいよー。じゃあ『婚礼の儀』をやるからそこで待っててネ……」
僕はゆっくりと濡れた服を脱ぎ、下着姿のまま彼の前に立った。