表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

堕落ちゃんの水没


──────………………


僕達はダンジョンの中へとやってきた。


薄暗く、ジメジメとした空気が僕のもちもち肌を撫でる。


(……ティータちゃん。油断するでないぞ……)


「わかってるよー」


松明の火に飛び入る虫達は、自身の身を焦がして光に這い寄る……。


その光景はまるで、このダンジョンに挑む冒険者達を暗示している様だった。


「……おや。この広間には何かありそうだねー」


ここは天井から流れ出る滝を光輝石が照らし出しており、広間全体を美しく彩っている神秘的な空間であった。


勿論ここだって、沢山の冒険者達が通ってきた道筋のひとつに過ぎない。


それでも何か隠されているんじゃないかって思うと、ちょっとわくわくする。


(……そこの深き水の中を覗いてみりゃれ……)


僕はトレントの言う事を聞き、ゆっくりと水面に顔を近づける。


──────………………光る小さな穴の先、そこにあった光景。


それは『太古の昔に沈んだ大遺跡』の姿そのものであり、顔を近づけなければわからない程の微弱な光が目印となった、不思議な『水中の都』とも呼べる場所であった。


「綺麗だねー。ここって、遺跡の上に造られたダンジョンだったんだ」


(……ワシはな、昔はあの姿無き都に住んどったんじゃよ……)


トレントはいつもと違って元気を無くしており、僕はちょっと心配だった。


「元気ないね。そろそろ寿命かなー?」


(……まだまだ現役じゃわい。でもな、ちょっと聞いておくれよ……)


僕は仕方なく彼の話に耳を傾けた。


彼は元々水中に沈んだ都市である、『霊都市レルデバルド』の住人であり、『高名(こうみょう)』な魔法使いって呼ばれてたんだってさ。


でも、ある日の事。


突如として現れた『魔人ゼルブレード』の手によって、都は滅ぼされて彼も戦死してしまったんだって。


彼の無念の思いは地上の木々達に届いて、めでたく木の精霊になりましたとさ。


「それってとってもハッピーなお話だねー!」


(……アンハッピーじゃろがい。一度主の頭の中を覗いてみたいわい……)


淫獣トレントは私の肩に乗り、寂しそうに水面を見つめる。


(……もう一度、あの都に行ってみたいのぉ。それがワシの唯一の夢じゃ……)


「じゃあ行ってみよっか。僕、『空気袋』持ってきたから長く潜れるんだー」


(……ワシはどうすればいいんじゃ……?)


僕は少し考えた末に、答えを出した。


「気合で頑張って。エッチでスケベなトレントならいけるよネ!」


(あひぃー!?)


僕はその掛け声と共に、深い穴の底へと潜り進んで行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ