堕落ちゃんの決意
──────レスタード村の小さな一軒家にて。
(……ピンクの下着が可愛いのぉ……)
「……ちょっと……見ないでよ……」
木の聖霊であるトレントは、小動物に姿を変えて僕に着いて来たのだ。
「このエロスケベ精霊。どっか行ってよッ!!」
(あひぃー!)
僕はトレントを草むらへと投げ捨て、ベッドに寝転がる。
「……誰かさんのせいで疲れちゃったな───────」
──────次の日の朝。僕はいつも通りコロン雑貨店へと向かう。
「ティータちゃぁぁん、君に凄いお客さんが来てるよー!!」
「店主さん、おはよー。……それで、そこのあなたはどちら様?」
白玉石を加工した『純白の鎧』、あれは、『霊獅子団』に与えられた正装だ。
刻まれた獅子の紋章が刻まれた盾を背負う騎士風の男性は、謙虚な面持ちで僕の目線へと顔を持ってくる。
「私の名は『エスカルーダ・デンスレード』。先日こちらで、聖剣を引き抜いた少女がいると聞いて伺わせてもらいました」
「……あっそ。そんな少女はいませーん、さようならぁ───────」
───────ガシッ
騎士は僕の細い腕を掴み、綺麗な金色の髪をなびかせて僕に近寄る。
「お願いです。あの聖剣の力を、私に見せてくれませんか?」
───────………………
(……油断するでないぞ。奴は君を虜にしようと迫ってくる……!)
僕はトレントの言う事を無視し、昨日投げ捨てた聖剣を持ちあげた。
……紅く染まった刀身は、僕の契印に反応して更なる輝きを増していく。
「……これが『聖剣の救光』……。まさしくあなたは、聖剣に選ばれし者だ!」
「選んだ相手間違えちゃったねー」
───────ガゴンッ!!
僕はそれを焼却炉へと勢いよく投げ捨て、唖然とする騎士様を通り過ぎていつも通りバイトをサボる事に専念する。
(……ひどいよティータちゃん……!!)
──────………………
……今日は3人もの相手に体を触られた。殴りたくなる。
バイトを終えた僕は、いつも通りトレントの木を蹴りつけて帰路に着く。
──────………
……ベッドに勢いよく倒れ込む僕は、明日の事を考えていた。
「明日はお休みだ。どこかに遊びに行こうかなぁ」
そう口ずさむ僕だけど、相変わらず平穏な時間を許してくれない奴がいる。
(……ねぇー暇なら聖剣拾ってよーひろってひろってぇ……)
駄々をこねる淫獣は、寝転がっている僕の上でジタバタと暴れ出した。
……うるさいなぁ……。
(あひぃー!)
淫獣をそっとゴミ箱に捨てた僕は、そのまま就寝した。
──────………………
翌日。
僕は焼却炉にある聖剣を手に取った。
(……やっと聖剣を使ってくれる気になったんじゃな……)
「もちろんだよ。ただし……」
虚空を切り刻む聖剣による一撃。それは、僕の決意を揺るぎないものとした。
「このダンジョンを破壊する為に酷使するよ!」
(……………えぇ……………)