ハードル走
「はぁ、ハードルの高さが20cm」
「そう、20cmさ」
これは夢だろうか。運動とはあまり縁のない俺が、とても低いハードルでランニングしている生徒を見て、ありゃなんだと思い近寄り、今しがた、同じ年ほどだろう男子の陸上部員に話しかけ、これがなんなのか聞いていた。
「20cmって、マジか」
「公式でも20cmが普通だし、当たり前じゃないか」
俺はあきれ果てた。20cmって、子どもでも越えられる高さだろう。
「ずいぶん低いじゃないか。これなら普通に走っても超えられるぞ」
「なんだって。これでもかなり高い方で、6割の部員が倒すほどだぞ」
「そんなわけない。俺が証明するから、キミはスタートの合図を出してくれ」
そう言って、スタートラインへと小走りで向かう。着いて、ラインの手前に立つ。
「準備できたぞー」
向こうへ届くくらいの大声で叫び、ゴールラインの隣で「よーい」と声が届いてきて、直後にピピーッという合図だろう音が響いてきた。俺はその音で走り始める。
走って、走って、ハードルが目前になってきたところを、俺は足をちょっと高く上げるだけして越えた。
次々と来るハードルを同じようにひょいひょいと越え、ゴールする。
「すごい。新記録だ。ちょっと、名前を聞かせてくれるかな」
「ああ、俺は高橋だ。帰宅部で運動はあまりしないほうなんだ」
「ウソだろ。キミの才能がもったいない。どうかウチの陸上部に入ってくれ」
俺は鼻を高くして、「こんなのまだ序の口だけどね」と威張ってみせた。
「おーい、岡田ー」
と、声のする方向から、あまり冴えない表情のやせ型の男が近づいてくる。
「誰なんだ、そいつ」
「こちら、高橋さんっていうんだ。それで、紹介するよ。彼は山村。うちの部員で100m走のトップなんだ」
「で、どうしたんだよ。さっきから興奮してさ」
山村はきょとんとした顔で問いかける。
「ああ、ごめん。実は文化部の人がハードル走をやってさ、ひとつも倒さずにゴールしたんだ」
「へーぇ」
山村は驚きもせず、興味なさそうに相槌を打った。
「ちょっと、ハードル走をやってみてもいいか」
「「えっ」」
俺と岡田はびっくりした。岡田はどうかは分からないが、俺はいきなりそう言ったことと、恐れ知らずなことにが理由だ。
「よーし、待っててな」
山村はスタートラインへと走っていき、着いたとともに準備運動をはじめ、終わると走る構えをとった。
少しばかり岡田は戸惑った表情のまま「よーい」と声を張り上げ、手のグリップブザーを鳴らした。山村はそれと同時にいきおいよく走り始める。
足を高く上げてただ走っているだけの山村。ひとつ目のハードルを目前にして、どうするかと思ったら、ただそのまま走り続ける。ハードルは当たり前かの様に越え、もちろん、残りもひょひょいっと越えていく。
すべてのハードルを越え、ゴールラインを越えた瞬間、岡田はストップウォッチを止めた。
「すごすぎる、新記録だ。これはオリンピックにも出られるぞ」
岡田はおおげさすぎるほどに喜びの声を上げる。
「これはもうワールドレコード越えたも同然だよ。バンザイ、バンザーイ!」
この一連のできごとがあった後、100m走の選手はハードル走にも出場するようになった。それはここだけじゃない。世界がこの話を聞いて、短距離走の選手をハードル走に参加させるようにした。
俺はこの状況を見て、ひとりごとをぼやいた。
「ハードル走じゃないよな、これ」
・時間配分
プロット構築:ナシ
本作の制作 :60m
見直し :ナシ
・備考
字数1300。理論上は8時間で10000字書ける計算になるが、まだ足りない。次はプロットを書いてからやってみるとしよう。