第3話 吃驚仰天スターター
前回のあらすじ:頭の中にAIが!
今回もよろしくお願いします! では、どうぞ!
「……はぁ」
ついため息をついてしまった。何故ため息をつくのかというと――
『マスター LHRが終わりました。さぁ、神風博士の研究所に行きましょう』
「うるっさい! 今日一日ずっっと、頭の中で話しかけられるなんて誰が思うか!!」
そう、シルバライトのせいだ。授業中だろうが休み時間だろうが、頭の中に声が響く。しかも毒舌が混じってて集中出来ないったらない。
『いいではないですか、今日一日だけです』
「俺はまだお前が信用に足るAIか判別出来そうにない……」
『信頼の四文字で出来てる私を疑うんですかぁ?』
「どの口が言えるんだ……?!」
『私の口は物理的には存在していませんよ』
「屁理屈を……!」
「信護、お前今日おかしいぞ」
「凄いブツブツ言ってたよね」
硬侍と旋梨の2人に心配されるレベルでブツブツ言ってたらしい。
「何でもないよ? ただ考え事をしてただけでね」
「まさか、記憶があるになる前はクッソ痛いやつだったのかな(ヒソヒソ)」
「その可能性あるな。あっ痛たたた(ヒソヒソ)」
「何を勝手にヒソヒソポーズで言ってんだぁぁ! あと、もしそうだとしても受け入れてくれるって言ってただろ!」
「ジョウダンダヨジョウダン〜」
記憶が戻った事を言わない方が良かったか……?
『マスター。ご友人と話すのも良いですが、早く行きましょう』
シルバライトは無視しようそうしよう。
「ん? あれは……」
ふと見ると、扉の隙間を除く白輝が見えた。
「二人共、今日は白輝が待ってるようだしもう帰ろう」
「幼馴染みが待ってるもんな?」
硬侍が笑ってからかってくる。
ん? えらく上機嫌じゃないか。
「どうしたんだよ、そんな機嫌よさそうにさ」
「実はな? うちの婆さんの病気が良くなってな。嬉しくて堪らないんだ! もちろん、信護の記憶が戻ったのも嬉しいけどな」
「おお……。普通に良い話でびっくりした」
「良かったね! 硬侍!」
「おう! それじゃ、今度こそ帰るか!」
「うん」
そうして俺達は教室の前で待ってた白輝と合流して帰った。
◆
硬侍達と別れて、白輝と二人きりになる。いや、正確には俺の中にもう『1体』いるけど。
『あの、マスター』
「あのさ、急にこんなこと言うのもあれだけど、俺って鬼面ファイターが好き……だったんだよな」
「うん、当たり前じゃない。信護に影響されて私も好きになったんだし。小学生の頃から鬼面ファイターにはうるさかったよ」
「そっか……。俺のこの思い出した記憶が本当か心配になっちゃってね」
『マスター』
「もし、自分について思い出せないことや心配事があったら、私や私のお父さんを頼ってね」
「うん……ありがとう、白輝」
『マスター無視しないで下さい!』
ここで反応したら負けだ……!
そうこうしてる内に白輝の家に着いた。あれ? 研究所じゃなかったっけ?
「こっちに変更になったの」
「まぁ、なんでもいいや」
ちょっと嬉しそうな白輝の後に続いて家に入る。ここに入るのも久しぶりだな。
「お邪魔します」
「どうぞー♪」
神風博士の姿が見えないけど、まだ仕事かな?
「お父さーん」
「はいはーい。今行くよ」
部屋の奥の方から声が聞こえる。
「ようこそ、我が家へ。信護君は慣れてるだろうけどね」
「はい。凄い久しぶりですけど」
白輝と同じ、白い髪をした男性がやってくる。白輝のお父さんであり、新未来研究所所長の神風尽博士だ。優秀な科学者で、新エネルギーの超自然エネルギーを開発した方だ。クリーンで安全かつ効率の良い次世代のエネルギーとして日本中で使われている。
「さっそくだが、話をする為に見てもらいたいものがあるんだ。ついてきて」
そういうと、なにやら厳重そうな扉の方へ行く。
「お父さん、ここって……研究室だよね? 危ないから入っちゃいけないって言ってた」
「そうだよ」
「正直、気になってました(わくわく)」
「そんな期待されても困るよ……?」
神風博士が扉のロックを開けて中に入る。それに続いて俺と白輝も入る。
そこは、結構広くて機械類が転がっている。全部、神風博士が造ったものだろう。
「あっ、ちょっと待っててね」
何かを思い出したように部屋から出ていく博士。どうしたんだろうかと一瞬思ったが、すぐ目の前の光景に夢中になった。
「これだけあれば、変身アイテムの一つでも出てきそうだなぁ(わくわく)」
「あんまりいじらない方がいいよ……」
「なんだこれ」
壁にボタンを見つけた。押しちゃおうかな……。
『マスター、もう押してますよ!』
「うわっ! びっくりした。いきなり話しかけるなって……へ? 押した?」
大きい音がして、目の前の壁に入口のような穴が出現した。
「おお……凄い……」
「凄いじゃなくて、勝手にいじらないでって! まあ凄いし知らなかっけど……」
『そうですよマスター!』
「すいません……」
白輝にはまだしも、シルバライトには屈辱的だ。
「入ってみたい」
「駄目だよ。取り敢えずお父さんが来てから……って」
ちょっと覗いてみたけど、通路みたいなのは無さそうだな。
「ちょっ……とってうわっ!」
1歩足を踏み入れたら身体が軽くなる感覚がして――知らない場所にいた。
「どこだここ……? それに自動ドアがある……」
取り敢えず目の前の自動ドアを入ってみる。そこには大きなテーブルや巨大なモニターがある。
「おおー……んがっ!!」
「いたた……博士? ごめんなさ――いっ!? きゃぁっ!!」
「うわぁ俺の腕ぇぇぇぇぇ!?」
桃色に光る少女が鳩尾に突っ込んで来たと思ったら、腕がメカっぽくなってた。何を言ってるか分からないと思うが、俺も何をされたのかさっぱり分からなかった……。
『この感じ……マスター、その子はSECTです』
あっそうなの? じゃなくてね!
「腕がどうなってんだこりゃ……」
「あの……誰ですか? ボクはあなたを知らない……」
目の前には、俺と結構歳が離れた少女がいた。僕と言っているが、どう見ても男には見えない。
「えっと、俺は賭頼信護。神風博士に呼ばれて来たんだよ。間違えても不審者じゃない」
まあここには勝手に来ちゃったんだけど……ね。
「……ボクはメルカ・ニーカ。メカニックだよ」
「メカニック? ということは、この腕も君が?」
それしか考えられないけど。
「うん。それは……ボクのエレメントのせい……」
本当にSECTだったなんて……。
「SECTってこと、俺に言って大丈夫だったの? SECTに対して良く思わない人もいるのに」
「本当に神風博士が呼んだ人なら良いと思った……でも違ったら……」
警戒心を孕んだ目で俺を見る。
「絶対に違わないから大丈夫だよ。後々証明出来るから」
「じゃあ、神風博士とちゃんと会うまでその腕を治さない」
「いいよ。会ったら治してね。しっかし驚いたよ! 腕がメカっぽくなるなんて。この状態で虹害獣と戦ったら有利になりそうだ! それに、俺もメカとかロボットは好きだしね!」
そんなことを言ってたら、メルカと名乗った少女の顔がみるみる明るくなっていった。
『マスター、まさかこれを狙って?』
そんな訳無いだろ。普通に話しただけだよ。
鬼面ファイターの次にロボットは好きかな。
「ふぅん……ちなみに、どんなのが好きなの?」
「えーっと……人が乗る巨大ロボットも好きだし、人が装着するタイプのも好きだよ」
「やっ……へぇぇボクもそういうロボットが好きだよ。特に着るタイプは造りたいくらいにね」
造りたいくらい? とても喜んでいるようだけど、まだ警戒はしているようで遠くにいる。
「あと、鬼面ファイターとかも好きなんだけど……知ってる?」
「知ってる。カッコいいと思うよ」
なんて英才教育を受けているんだ……この子は将来有望だな――そう考えていると、俺が来た方向から誰かが来た。
「人の家を何勝手に動き回ってるのかなぁ〜?」
神風博士だ。勝手に入ったこと怒ってるかな……?
「す、すいません! ボタン押したら入口が出てくるなんて、入ってくれと言ってるように思えてつい……」
「人が目を離した隙にまったく……紹介しようとは思ってたけど、勝手に入られちゃ気分は良くないぞ」
「うう、申し訳ないです」
「ここが……家の地下? ずっと知らなかった……」
その横には白輝もついてきている。
「白輝は知らなかったんだ」
「知らないよ、まさかこれが理由で研究室を見せてくれなかったの? お父さん」
「それもあるけど、本当に危ないのも理由の一つだ」
自分の娘にも教えていなかったなんて、ここは一体……。
「博士! この人、本当に博士が呼んでたんだね!」
それと、この子も。
「ああ、そうだよ。この2人は僕が呼んだんだ。賭頼信護君と僕の娘の白輝だ」
「あっじゃあ、すぐその腕治します」
「うん。あと、なんで敬語になったの?」
ついさっきまでは気軽に話してたのに。
「その、怪しい人じゃないと分かったら、さっきまでの話し方じゃ悪いかなって思って……」
この子は礼儀正しいし、知らない人には警戒するしでよくできた子だなぁ。
「別にいいよ、そのくらい。その方が話しやすいでしょ」
「……うん!」
俺の腕が治っていく。凄いな、これは。
「あー……そろそろ話を始めていいかい?」
そうだった、そもそもの目的を忘れてた。
『私ももうそろそろ我慢が辛くなってきました』
シルバライトは静かにしてて。
「はい、俺は大丈夫です。」
「よし、始めようか」
と、博士が言ったところで博士の電話が鳴った。
「何だ? 大事な話をしようという時に。もしもし……何!? 分かった!」
なにやら険しい表情で話している。ただ事ではないようだ。
「信護君! まだちょっと待っててくれ! 僕はやるべき事がある。あと、動けるようにもしていてくれ」
「は……はい。動けるようにして待ってます」
一体なんだというんだ?
『もしかしたら、虹害獣が出現したのかもしれません』
まさか……でも何で博士に?
『マスターにも、知らせるように伝えていたでしょう。それと同じなのでは』
……そういうことかもしれないな。
『本当に忘れっぽいですね』
一言多いからな。
「よっと!」
「うぉわっ!」
突然目の前に年上であろう男性が現れた。
「何も無い空間から出てきた?!」
「あん? 誰だテメェ?」
「博士の知り合いの……賭頼信護です」
「はん、知らねぇな。それより俺は急いでんだ!」
いかにもガラ悪そうな感じだな。見た目で判断してはいけないって鬼面ファイターで学んだけど。
「転夜! 僕がすぐ届けるといつも言ってるだろう!」
「俺がこうして急いで戻った方が早い時もあるだろうが!」
「まあいい、頼む!」
「ああ!」
博士が転夜と呼んだ人物に大きなケースを手渡す。その中には、機械類が……まるで強化スーツのような物が入っていた。
『あれは恐らく、マスターの考えている通りの代物だと思われます。あまり性能は良くなさそうですが。』
何だって? 博士は、こんなものを造っていたっていうのか?
「見世物じゃねぇぞ!」
そう言いながら、転夜という男は強化スーツを装着している。
「信護君、頼む。君も彼と共に行ってはくれないか。転夜1人ではもう辛いと思うんだ」
「……虹害獣を倒しに行くんですね」
「……ああ。全ては終わった後に必ず話す」
「分かりました」
「おい! 準備できたぞ!」
転夜という男が準備完了の合図を告げる。
「待て、この信護君を共に行かせて欲しい」
「そいつは戦力になるのか? 博士。足でまといは要らないぞ」
俺が全くの戦力外だと思っているのか、自分に自信があるのかは知らないけど、そんな風に言われると良い気分はしないな。
「大丈夫だ。その証拠に、昨日は信護君1人で虹害獣を倒した」
「へぇ。おい、信護とかいう奴。さっさと掴まれ。急ぐぞ」
「? はい」
何故掴まるのかは知らないが、取り敢えず掴まった。
「信護……気を付けて……!」
白輝の声が聴こえた次の瞬間、そこから俺の体は消えていた。
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