第2話 人工知能シルバライト
前回のあらすじ:学校の帰り道に変身した。
今回もよろしくお願いします! では、どうぞ!
その夜、俺は謎の世界に迷い込んだ。
真っ暗な世界。ただ、何処からか音がする。
昔、ゲームにこんな裏技があったなーと思いながら歩く。目指すは音の発生源だ。
「ん? これは……」
ふと周りを見ると、いつの間にかサイバーチックな空間が広がっていた。機械の壁に機械の床。更に、機械の隙間が青白く光っている。
目の前にはまたしてもいつの間にか現れた人物が1人。その人が歌を歌っていたようだ。俺が近づくと、気づいたようだった。
「やっと……話すことができますね」
声からして女性のようだ。後ろ姿だったのが、こちらへ振り向く。
驚くべきことに、その姿は白輝によく似ていた。髪は短く、爽やかな白寄りの青白い色をしていて、吸い込まれそうな純粋かつ無機物のような雰囲気さえ持つ青い瞳をしている。更に、少し微笑んでいて、照れてしまいそうだ。
「あなたは……?」
ともかく、俺はこの人を知らない。こんな、白輝によく似た少女なんて会ったことがない。なのに、知っている気がしてきてしまう。
「それはここで話さなくてもいずれ分かります……。それよりも言いたいことがあるのです」
「えっと、何でしょう」
「思ったより顔が良くなくて残念だった……とだけ言わせてもらいます」
なんだそりゃ。
「そ……そんなことが言いたかったんですか?」
「はい。私にだって、好みはあります」
さっきから優しく微笑まれてるはずなのに、全然嬉しくない。
「何だよこれは! 裏技世界に来たと思ったら機械の世界で顔が悪いってバカにされて! どんな悪夢だこれは!」
まるで、俺の頭の中で妄想と現実が喧嘩してるような。
「まあまあ、気を悪くしたなら謝……りまけんが、後で良いことがきっとありますよ!」
「謝んないんですね!?」
「謝ってばかりというのも良くありませんよ」
「まだ1回も謝ってもらってないですけどね」
というか、会ってまだ何分もしてないんだけど。
「ああそれと、やってみたいことがもう一つあるんです」
そう言うと、柔らかい感触が身体を包む。気づくと、俺は抱きしめられていた。
「これが、人を抱きしめるということなんですね……」
「いや本当にあなたは一体――」
「すぐ分かりますよ」
耳元で囁く。楽しそうな声色だった。
そして俺は意識を失った。
◆
「君の名は!」
あれ? ここは……ああ、そうだった。
「夢だったんだよなぁ……」
白輝似の少女が出てきた時は驚いたが、夢なんだから仕方ない。
『そうです、仕方ありません。自然と意識してしまっているのは仕方ないことです』
「そうだねー……んん?」
こいつ……頭に直接!
『驚かないのですね』
あれ、これもしかして幻聴とかじゃない?
『そうですよ』
「おおおおおおおっ!?」
「うるさいよ!! 大きな声出してないで早く支度しなさい!」
「あ、はーい! ごめんなさい!」
驚いて声が出てしまった。
「え、何? どういうこと?」
とにかく、訳が分からない。さっきの夢も、今頭の中に直接聞こえる謎の声も。
昨日は疲れて、家に帰ったらすぐ寝ちゃったし、その疲れがまだ残っていたのかとばかり思ったけど。
『ところがどっこいってやつです。だからさっきもすぐ分かるって言いました』
声の主は声のトーンが落ち着いている。
「にしても、さっきとちょっとキャラ違うと思うんだけど」
『そんなこと、皆最初に会う時は礼儀正しくもなります』
「俺が知ってる限りでは、あれを礼儀正しいとは言わない」
取り敢えず、コイツの正体を聞き出さないと……。
『コイツ呼ばわりは酷いです……』
「取り敢えず人の思考を読むのを止めてくれないかな」
『止められないことはないですが、つい覗きたくなってしまいまして』
すぐ止める様子はない。
俺、ひょっとして舐められてるのかな……? いやそうじゃなくて。
「さっき夢の中で、やっと話すことができたって言ったよね? それって……」
『私は、実は三年前からいたのです。驚きましたか? まあ、大体は寝てましたが』
「三年前から? そんな設定のイマジナリーフレンドを作っていたなんて……。いつからこうなってしまったのだろう」
『違います! 実在してます! AIとして!』
「AI? あっ、まさか!」
もしかして……!
『そうです。私は、あなたが……マスターが先日使った鎧装機甲のAI……人工知能なのです』
「おお……。人工知能とか、興味はあったけど……」
まさかこんな身近に……自分の身体の中にあるとは。
『どうですか? 嬉しいですか?』
「うん……まあ……うん」
『どうしたのですか、その反応は』
「実感が湧かないって言うのが本音かな」
あと、もう少し親しみやすい性格が良かった。
『仕方ないですね。では、慣れるように毎分毎秒話しかけましょうか?』
「それはやめてくれ」
何も集中できなくてたまらん。まあ声は可愛いと思うけど。
『ありがとうございます。マスターはあんまりかっこよくな……いえ、何でもありません』
「実体があったら叩けるのに……!」
何なんだ、このAIは。無駄に高性能で人間と話してるようにしか思えない。というか、人が話してるんじゃないのか?
『疑われるのは心外です。私は生まれてからずっとAIとして過ごして来たというのに』
……一応信じておくか。
「まあ取り敢えず、よろしく……でいいかな」
『はい、よろしくお願いします。マスター 』
あっそうだ、大事なことを聞いてなかった。
「そういえば、君の名前は?」
『……もしかしてマスターは人に名前を聞く時に、先に相手に名前を言わせる方ですか?』
うわっ、めんどくさっ!
「君はAIだろ」
『それもそうですね。マスターの名前も知
っていますし』
知ってるのかよ!
『私は、個体識別番号S-4771 シルバライトです』
「へぇー、個体識別番号とかあったんだね」
『当たり前です。我々AIは人工知能、つまり人間によって生み出された存在ですから。管理しやすい様に番号が割り振られます。今は私以外にいるのでしょうか……』
ん? 最後の方が聞こえなかったけど……まあいいか。
『ところで、時間は大丈夫ですか?』
「え?」
ふとスマホを見てみると……時間が大分経っている。あれ、これ間に合わないんじゃ。
「い……急げ急げ! ちょっと、AIならサポートとかしてくれよ」
『だからついさっき言ったではありませんか』
「もっと早くに頼むよ」
『では、良いことを教えましょう。』
おお? 少しでも期待してしちゃうな。
『鎧装機甲は、身体の姿形を変えなくても、少しなら使うことが出来るのです!』
「それは良い! で、どうするの?」
『それは、鎧装機甲オンと言って、鎧装機甲によって身体中の能力がアップするイメージをするんです。そうすれば、普通より速く走れたり、高く跳べたりします』
「よし、やってみるか!」
というか、やらないと間に合わない。
「鎧装機甲オン!」
身体中の能力がアップするようなイメージ……!
「あれ? 出来ない」
何でだ? あの時に変身は出来たのに。
『イメージや本気度が足りません。 もっとしっかりイメージして下さい』
「急に出来るかって!」
それから何回かやったけど出来なくて、結局遅刻してしまった。ああ、皆勤が……。
読んで頂きありがとうございました!
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次回「吃驚仰天スターター」
フィジカルチェンジ! セクトマン!