中篇
翌日。昨日告白を絶対事項に決めた。
なんとしてもやり遂げてみせる!!
(がんばれ俺!!)
― ― ― ― ― ―
教室のドアを開け、教室へ入る。クラスメイトに朝の挨拶をし、自分の席へ着く。
「おはよう。蜜芽君。」
声を掛けられ、隣を見る。
黒く綺麗な瞳と目が合う。俺の想い人。
「お、おはよう。加賀谷さん。」
やっぱり可愛いな~、加賀谷さん。今日告白すると決めて、いつもよりドキドキする。
声が上ずってしまった。変に思われてないよな?
「蜜芽君、昨日も告白されてたね。モテモテだな~。」
「えぇっ!!な、なんでそれ...」
「昨日帰るときに屋上を見上げたら蜜芽君と女の子がいるのが見えて。」
うあぁぁぁぁぁぁ!!!
見られてた~!!今日告白するのに、昨日の今日で他の子に告白するとか無理~!!
絶対好感度下がりまくり~!!
...い、いやここで引いたらまたいつもの繰り返しだ!!昨日決めたろ!!
絶対事項だ!!行け俺、がんばれ俺!!
「あ、あの、加賀谷さん!!」
「ん?何、蜜芽君。」
「き、今日...」
キーンコーンカーンコーン.,,
(チャイム~~~!!!空気読んでくれ~~!!)
始業のチャイムと共に教師が教室へ入ってくる。
仕方がない、昼休みにでも...
「ご、ごめん加賀谷さん、また後で...」
「蜜芽君」
話の続きを昼休みにでもと伝えようとしたら、加賀谷さんが小声で俺の言葉を遮る。
「えっ、な、何?」
「今日、あの...放課後ちょっといいかな?」
―――――え?どういうこと?俺が誘うはずが、俺が誘われてるの?加賀谷さんに?
「蜜芽君?」
―――――はっ!?いきなりの展開に考えが追いつかなかった!!と、とりあえず返事を...。
「う、うん!!全然いいよ!!放課後ね!!」
「うん!よかった~!じゃ、じゃあ放課後ね!」
これはまさかの...期待していいのか?いや待て冷静になれ!何か他の用事かもしれない。
けど何にせよこれはチャンスだ!!今日、放課後、加賀谷さんに想いを伝える!!
― ― ― ― ― ―
そして放課後の教室。生徒は一人も居らず、居るのは俺と、俺の目の前で俯いて何かを語れずにもじもじしている加賀谷さん。可愛い。
(...今日一日、放課後の事しか考えられなかった。)
まさに今その時なのだが、この状態が数分続いている。
いやもしかしたら数秒なのかもしれないが、体感的に長く感じる。
汗が背中を伝う。目線を何処に向ければいいのかわからない。心臓がバクバクしている。
「.,,あ、あの!!蜜芽君!!」
「!?」
意を決したのか、俯いていた加賀谷さんが顔をおもむろに上げたかと思うと、俺に叫ぶ。
「は、はいっ!!」
(ななな、なんだ!?そんな真剣な眼差しで、一直線に俺を見つめて!!いいの!?期待していいの!?期待するよ俺!?...いや待て待て待てっ!!よく考えてもみろ、俺は生まれてから今までオッドアイの子にしか告白されたことがない。加賀屋さんは...。)
色々な考えが頭を過ぎる。もしかしてだとか、そんな考えもあるかもしれない。
...けれどやっぱり、違う。
オッドアイの子以外にまったく好かれないわけじゃ無いかもしれない。
けれど、だからと言って都合よく解釈するのは違う。
たかだか隣の席同士だからって、急接近できた訳じゃない。
少し会話はあるかもしれないが、おしゃべりというほどでもない。
(あぁ、よくよく考えてみれば、少し所かかなり接点無いよな~)
では一体なんだろうか?悩み事か何かか?もしかすると何かの手伝いをしてほしいというお願いかもしれない。
(何かもう、告白する決心が崩壊しそうだ。自分で勝手に解釈してるわけだが...)
まぁその答えは、今から加賀谷さんの口から...
「...好きです。私と...付き合ってください。」
「...」
ん?んんんんんん???ん?
「今...何て...」
「蜜芽君が、好きです。」
えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!!!!
さっきまでの考えや沈んでいく気持ちがスッポリ抜け落ちた。
(えっ?じゃあ何、俺達両想い!?気持ち伝える所か、以心伝心してたの!?神なの!?
運命なの!?)
何ということでしょう。あれだけ引きずっていた想い、それがまさかこんな形で実るとは!!
「蜜芽君、いつも告白断ってるから、もしかしたら好きな子が居るんじゃないかって思って。だから今まで言い出せなかった。...けど他の子達は自分の気持ちを素直に伝えて、断られても何度もアタックし続けて。あぁ、私は何をそんなに迷ってたんだろうって、自分の気持ちも伝えられずに勝手に諦めようとして。馬鹿みたいだって思って。」
「加賀谷さん」
淡々と想いを語る彼女から、目が離せない。
両想いだということの嬉しさもあるが、彼女が俺と同じように悩んで、告白しようと決めて、それが今実現して。そういう繋がりがあったという事が知れた事が何より嬉しい。
「返事...聞かせてくれる?」
...そうだ、彼女はこんなにも勇気をだして俺に告白してくれたんだ。
俺も...俺もそれにしっかり答えなければいけない。
「...俺も...ずっと好きだった。加賀谷さんの事。」
「本...当に..?」
「うん」
信じられない。加賀谷さんの顔がそういう表情になる。
まぁ俺もさっきまでそうだったけど。
「じゃあ...私と..」
「うん。...俺からも言わせて?..加賀谷さんの事が好きです。俺と、付き合ってください。」
ずっと、今まで言えなかった言葉を、やっと彼女に伝える事ができた。
「はい!!喜んで!!」
そして、彼女はそれを受け入れてくれた。俺も、受け入れる。
「えへへ...嬉しい。やっと想いを伝えることができただけじゃなくて、蜜芽君と恋人になれるなんて///」
「う、うん///俺も、とっても嬉しい。」
頬を染め、微笑む加賀谷さん。
あぁ、今俺は、全世界の何者よりも幸せだ。
オッドアイの子に好かれやすいってのも、偶然に偶然が重なっただけかもしれない。
だって今こうして、彼女の黒い綺麗な瞳が俺を真っ直ぐに見つめているのだから。
FIN~HAPPY END~
「あ、あのね?蜜芽君...。」
「えっ?あ、あぁ何?加賀谷さん。」
勝手に脳内でFINした俺に声を掛ける加賀谷さん。
あぶなかった~。幸せすぎて、脳内完結する所だった。
「実はね、話しておかなきゃいけないとっても大事な話があるの。」
「大事な話?」
何だろうか?
「う、うん。...あのね..」
次の話は短いかもしれません。