表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天気晴朗ナレドモ水ノ月  作者: 伏見 七尾
壱.銀髪の宿敵
7/114

五.

 肌を切り裂くような冷たい風が吹きすさび、三笠はとっさに顔をかばった。

 無数の氷片が闇に生み出され、きらきらと冷たく輝いた。

「喰らえぇえええッ!」

 怒鳴り声とともに女がサーベルを振るう。

 途端、氷の弾丸と化した氷片が機巧妖魔めがけて殺到した。

 機巧妖魔はとっさに装甲に覆われた両腕で胴体を守る。しかし露出した肩や首は氷弾にえぐられ、黒い液体を噴き出した。

「こんなところで遊んでいる暇はないの! とどめを……ぐっ」

 突然、女が体勢を崩した。煌々と輝いていた瞳の輝きが急激に弱まる。

 その隙を突き、機巧妖魔が地を蹴った。

 鋼鉄の鉤爪が地面を深々とえぐりつつ、すくい上げるようにして銀髪の女を狙う。

「くっ――!」

「そうはさせん!」

 ひるむ女の前に、腰だめに刀を構えつつ三笠は割り込んだ。

 閃光が走った。黒い液体をまき散らしながら、機巧妖魔の腕が宙を舞う。

 機巧妖魔が悲鳴を上げて、大きく後退した。ばっさりと切断された左の肩口からは黒いオイルと共に、血管めいた無数のケーブルが火花を散らしている。

「余計なことを……!」

 地面に膝をついた女が舌打ちした。

 三笠はやや呆れた気持ちで、彼女にちらりと視線を向けた。

「そう言っている場合じゃない。……もう動けないんだろう? スワロフ」

「黙りなさい! 私はそんな軟弱者では……うっ、く!」

 銀髪の女――クニャージ=スワロフは立ち上がろうとしたものの、うめき声と共に座り込む。

「いいから、大人しくしていろ。あとは私が片付ける」

 三笠はため息をつきながら、地を蹴った。

 機巧妖魔が金切り声を上げ、めちゃくちゃに右腕を振るう。

 三笠はたやすくその乱打をよけ、機巧妖魔の懐にするりと潜り込んだ。

 鋭い目で切間を見抜き、軽やかな足取りで距離をはかる。

「とどめだ、行くぞ」

 三笠の手中から閃光が迸った。

 その瞬間――機巧妖魔の体がガクンと大きく震え、停止した。輝く目がチカチカと瞬き、肩のパイプから不規則に黒煙が噴き上がった。

 三笠は軽くステップを踏み、機巧妖魔から距離をとった。

 直後、轟音を立てて機巧妖魔が倒れる。その胴体は斜めに真っ二つになっていた。

「今日はやたらと妖魔に出くわす日だな。……おい、スワロフ。君は一体――」

「魄炉解放ッ!」

 スワロフの叫びが三笠の言葉をかき消した。

 三笠はハッと振り返る。スワロフがサーベルをまっすぐに向けていた。

 青い瞳が燃えるように烈しく輝いている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ