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天気晴朗ナレドモ水ノ月  作者: 伏見 七尾
参.死人に口無し
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二.

「主を失い、祖国を失い、さらに信頼していた仲間達までも失った。……恐らくスワロフの精神はぼろぼろだ。私を憎んで彼女の気が済むのなら、それでいい」

「だ、だけどいいのか? 下手すりゃ殺されかねないぞ」

「大丈夫だ」

 三笠はそう言って、敷島から離れた。

 そのときは、そのときだ。――聞こえないよう、小さく呟く。

 そしてなおももの言いたげな敷島を無視して、三笠はスワロフに声をかけた。

「スワロフ! とりあえず今夜はもういがみ合うのはやめよう」

「み、三笠……」

 スワロフはひどくうろたえた様子で三笠の名を呼ぶ。

 三笠はそんな彼女に対し、子供に言い聞かせるように静かにゆっくりと語りかけた。

「十分に戦える、とか言ったな。……嘘をつけ、さっきから若干右肩をかばっているだろう。実際はまだ完全に治っていないな?」

「いいえ、ワタシは――っ」

「完治したらいくらでも相手をしてやる。――だから、今は大人しくするんだ」

 スワロフはしばらく沈黙した。

 青い瞳が迷うように、三笠と敷島とを交互に見つめる。

 やがて小さくため息をつくと、スワロフはゆっくりとサーベルの切っ先を下げた。

「……仕方がないわね」

「助かる」

 スワロフがサーベルを鞘に納めるのを見て、三笠はほっと胸をなで下ろした。

 正直、もう少し食いついてくると思っていた。

 だがあんな話を聞かされた後では仕方がないだろう。先ほどの話をさらに詳しく聞くまでは、三笠と一緒に行動した方が良いと考えたのだろうか。

 しかし、何も語るつもりはない。三笠はそっと自分の唇に触れ、赤い瞳を細めた。

「お、おい三笠?」

「……ん、あぁ」

 戸惑ったように話しかけてくる敷島に、三笠は向き直った。

「……いろいろごたついていてすまなかった。とりあえず、朝日姉さんの家に行こう」

「お、おう……いやちょっと待て、あいつどうするんだ?」

 敷島が、スワロフの方を顎でしゃくる。

 そっぽを向いている彼女にやや苦笑しつつ、三笠は答えた。

「スワロフか? 連れていくよ」

「……マジか?」

「マジだ。彼女はいちおう怪我人だし、どこかで倒れられても困る。……それに、決裂したバルチックが奴にまた接触を図りに来るかもしれない」

 そうなれば、スワロフは一体どうなるか。

 神社での事を考えれば、バルチックが荒い手段をとってくる事は十分にありえる。

 だから、三笠はスワロフを呼んだ。

「スワロフ、とりあえず私達についてこい」

「あら……良いの?」

 スワロフが青い瞳を細め、腰に佩いたサーベルの柄にそっと手をかた。

「ワタシが約束を違えて、キサマの背中を襲うかもしれないわよ?」

「お前の好きにすればいいさ。ただ――バルチックというのは約束も守れないのか?」

「……フン」

 スワロフは眉間のしわを深めつつ、三笠達に近づいてきた。

 やはりかなり背が高い。近くで見ると、三人の中では一番の長身だ。

 敷島はやや顔をしかめ、スワロフを見上げた。

「……てめぇ、でけぇな」

「ワタシは平均よ。キサマらが小さいだけ」

「アリョール人みんなこんなにでけぇのか……ヤバイぜ。というか怖ぇぜ」

「それより、早く朝日姉さんの家に行こう。少し時間を喰ってしまった」

 三笠はラジオベルで時刻を確認する。


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