召喚の儀 1
今日はエイプリルフールだってさ!
なんか嘘を考える!
嘘です!
ではお付き合いくださいませ、おね!
事の発端はウルフウッドの心境の変化からだと勘ぐれる。
ヨツバが指に怪我をして帰ってきてからというものの、ウルフウッドの並々ならぬ過保護精神が現れたのだ。それに付随して俺へのよくわからない地味な嫌がらせもパタリと消えた。
それからというものヨルダに対する態度もめっきりと変わったようで、今までは何かに取り憑かれるように接客していたが今では何をするにも楽しそうに仕事をするようになった。
呼び名もダイキチさんからダイキチにもどった。その他の口調は変わったままだったが、接客するにはこちらのほうがいいからと思うことにしている。
ダイキチ達四人はダイキチの手懐けている青龍タグチさんに乗ってエレナス西海岸の向こうにある小さな無人も孤島に来ていた。
店を休業にしてここに来たのは朝早くのことであったが、ウルフウッドが開けた平原部に火炎魔法で大きな魔方陣を描き始め、太陽はすでに昼時の高さを運行していた。
今日は召喚の儀式を試しに行きます! そのため営業は休みにします!
まだ夜明け前にワクワクが止まらない表情で宣言したウルフウッドの言葉だ。
その時はまだまどろみの中だったためその宣言に対し何を答えたかは覚えていないが、まだ呼んでもいないタグチが青い翼を縮こまらせて城壁の外の森に待機させられていたのが鮮明に頭に残っている。
よって、まどろみの中で何を言おうと「イエス!」の言葉以外は発することはできなかっただろう。
しかしまあヨルダはピクニック気分なのか楽しそうにヨツバとキャッチボールをしている。ヨツバの方はあいも変わらず作業をこなすように無表情でボールを投げ返している。
ま、久々のオフだしなーまだまだくつろごーっと。
大きくあくびをする。
カトー家の仕事は主に二つの仕事で成り立っている。それは西区に構えた喫茶店とダイキチの営む依頼請負仕事だ。
北区に店を構えていた時はウルフウッドとヨツバの二人で営業していたらしいが、ヨルダが来た現在はウルフウッドとヨルダの二人で営業しており、忙しくなるような日にヘルプでヨツバが加わる。喫茶店は店の外観と新しい看板娘の出現もありなかなかに右肩上がりの業績を示す。しかしそこで問題点となるのがダイキチの依頼請負業通称なんでも屋に対する影響だ。
もともとダイキチは三人で帝国領土に暮らしていた頃は胸をも貼れるいっぱしのニートであった。そこでもウルフウッドとヨツバは喫茶店を営んでおり、それに寄生するように夕方起きて店の残り物を漁り何をするわけでもなく呆けて時間を費やし朝方には眠るという。旧に昼過ぎに起きてきたかと思えば街を行く宛もなく散策したり飼い慣らした竜たちと街の外でじゃれるのみであった。
それから騒動が一件あり、帝国から世界樹探索を命じられ縛られ魔都に放り込まれ帰って来たらまたもトラブルが起こっており、終いにはウルフウッドとヨルダと三人で暗い日々を暮らすことになった。
その後このままじゃ夢の惰性生活が送れなくなると危機感をあらわにしたダイキチは一人で街の雑務をこなすようになる。それがいつの間にか定着してしまい、街の掃除や貴族の嫌う面倒事などを依頼されて請け負うなんでも屋になってしまったのである。
はじめはダイキチの下へ直接依頼が来たが普段依頼で動かなければならなくなってしまったため、依頼は次第にウルフウッドの下へ伝言形式という形に変化し、今にいたっては喫茶店はなんでも屋の依頼受付口にもなっていた。
そのため喫茶店が繁盛するごとに依頼が増える。そしてその依頼を請け負うかどうかがウルフウッドの手の中に。これが意味するのはダイキチの夢の暮らしの崩壊だった。
だいたい依頼仕事がほとんど掃除とか城壁の修理とかそんなんばっかなのも問題だと思うんだよなぁー。
日の傾きにより小さくなった木陰から逃げ、次の木陰に腰掛ける。
それに最近は貴族なんかから仕事請け負ってくるしなー
「さ、準備が出来ました。みんなこっちに集まってください」
ウルフウッドの声だ。
ダイキチは腰を上げウルフウッドの方へ歩く。
「あぁー……頑張ったなウルフウッド」
「いえいえこれくらいはこれくらいは最低条件ですよ兄さん」
上流貴族が豪邸を立てる面積ぐらいの大きさだぞ? お前は一体何をよびさまそうとしているんだ……
「うわ、でかっ」
「すごいです! こんな大きい魔方陣をお一人で描かれるなんて!」
二人が食い入るように魔方陣に見渡す。
複雑でどこかまとまりのある模様の魔方陣は平原の草を焼いた線で作られている。
ウルフウッドが魔方陣について説明し始める。
「大雑把に言いますと、これは精霊界をつなぐ魔方陣や神界をつなぐ魔方陣など沢山の召喚儀式用魔方陣を合成した新しい方式の魔方陣です。それに加え安全性を保つために囲い用の陣、緊急時の防御魔法や定置魔法などを施してあります。後々のことを考えたりしていたらどんどん陣を増やしてしまいこのような大規模な魔方陣になってしまいました」
後々のことというのが気にかかったが、ダイキチはたぶん気にしたら負けだろうと何も聞かないことにした。
そっとしゃがみ魔方陣に触れる。
なんとなしにだが脈のようなものが感じられる。
あぁー……嫌な予感しかしねぇー
一人で苦笑いをする。
「では兄さん、お願いします」
唐突に振られた言葉。なんのことだかさっぱり理解出来ない。
きょとんとした顔をするダイキチにウルフウッドは「あれ? 朝言いましたよね?」とあたかもそれが約束されていたかのように言う。
「えっと、なんだっけ? 俺朝ぼーっとしてたからあんまし覚えてないわ」
はははと笑ってみせる。
「確かに今朝の兄さんはいつも異常に可愛らしいお顔をしてましたね」
クスリと思い出したように笑顔がこぼれる。
「前回兄さんは世界樹を探しに魔都を一年ばかりさまよいました。そしてそこで起きた様々な出来事も前に聞かせてもらいました。兄さんは魔都で様々な魔物やその類と接触しましたでしょう?」
「ん、確かに変なのいっぱいいたな、だいたい逃げまくったけど」
「それなんです。その未知への接触が大事なんです」
ウルフウッドが嬉々揚々と語る。
「召喚魔法というのは基本的に術者の力量ではなく経験のみにより召喚対象が変わるんです。例えば幼い子が召喚するとピクシーのような小さな小悪魔が召喚されますが、年老いた魔導師などが召喚すると古文書に描かれた危険な魔物が召喚されます。しかしながらどんなに魔法力が高い先ほどの魔術師と同じ年齢の魔術師が召喚しようとも、魔力も殆ど無いような青年の召喚したものよりみずぼらしいものが召喚されることがあります」
「それ、私聞いたことがあります。たしか歩く魔導師と止まった魔導師の逸話です」
ヨルダがどこからか拾ってきた小枝で魔方陣の端をつつきながら答えた。
「そう、それです。お話では最後に止まった魔導師、言い換えれば家の中でひたすら本を読んでいた魔術師が大魔法を発明して王国に仕えるようになり出世、歩く魔導師、冒険をしながら魔法を学んだ魔導師は無学故に冒険の途中で召喚した精霊ともども息絶えるという結末になっています。一見すると止まった魔導師が優秀なように見えますね」
「ふぁあー」
どうやらヨツバにはとてつもなく退屈な話しらしい。
ヨツバは本とか嫌いだもんなぁー
「しかし実のところは歩く魔導師が召喚した精霊は止まった魔導師が生み出した魔法より優秀だったのです。なぜならば――」
ウルフウッド様の授業は長い。
しかしヨルダは熱心に聞いている。
そういや腹減ったな。
お腹をさする。小さく腹が鳴る。
それに気づいたヨツバはダイキチに「あっちにヨルダさんが作ってきたサンドイッチあるよ」とささやいた。
ヨツバに「サンキュー」と言うとダイキチはその場を離れ腹を満たしにタグチの下へと向かった。
いやーウルフウッドさんの授業長くなりそうなんでダイキチ逃げ出しました。
書いててなんか校長先生のご挨拶思い出しましたよ。あと古典の授業とか
しかしまだ文字数といいますか物語の進行速度の調整が難しいです。
こればっかりは本をもっと読みまくって学習して適切な文字数を把握するしか無いのかなー
友人に本を借りに行ったりですかね
今度小説執筆用のスキル本でも呼んでみようかな。
てなわけで一区切りです
お読みいただきありがとうございます!




