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世界を終わらす物語~ゴーレムの眼~  作者: 球磨吾朗
プロローグ・黒騎士物語【涙涙】
1/26

健やかなる帰還

えー何分初めてなもので右も左もわからずてんてこマイマイでございます。ところでエスカルゴっておいしいの?

あ、ごめんなさい。

つたない文章ですがどうぞお付き合いくださいませ。

四月五日修正

   プロローグ・黒騎士の帰還



 生きている心地がしない。


 ここ二ヶ月のことを表すにはそれだけで充分だった。考えるわけでもなく、動きまわるわけでもなく。もうすぐ二十七を迎えるダイキチはいつオープンするかもわからない喫茶店の椅子を後ろに傾け、天井を見上げていた。

 いーち、にーい、さーん……

 ここはもともと上流階層の貴族が趣味で始めた店である。そのため、ここ中流階層のエレナス西区の中では高貴ながらも親しみやすい独特な雰囲気を放っていた。


「今日は天井の年輪を数えながらのフィボナッチ数列読み上げをしてみるか、いやそれともウルフウッドの昼のメニューを予想するか、いやいやいやむしろ般若心経を――ッガッ!」


 不意にやって来た浮遊感、それに追随するように何かが倒れた時の大きく目をつむりたい音がした。そして背中へのほのかな衝撃と後頭部への鈍い痛み。


「ぬおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお……」


 頭を抱え右に左に床を転げまわるダイキチ。

 ありえん! ありえん! シーソ大戦で地元天下無敗を喫した俺が、よもや椅子を倒すとは……!!

 転がり痛みに耐えながらそんな間の抜けたことを考え、寝癖で荒れきった黒髪をぐしゃぐしゃにかき乱す。他人が見たらすぐさま店を出て医者を呼びに行くだろうというくらいに、のたうちまわっていた。だが彼を転がすものはバランスを失って倒してしまったことによる、自負の悶絶がほぼ全てであった。

 しかしその悶絶も二ヶ月間続くよくわからないどんよりとした黒い霧の前では長くは続かない。

 そこへ竪琴から奏でられるような凛と濡れ澄みきった声が、空から降りてくる。


「服は伸びきって汗臭い、髪はボサボサで油が乗っておる、せっかくの色男も台無しじゃな」


 硬いものでこづかれた気がしたが、ダイキチは頭を抱え横になったまま「うっせ」というだけだ。

 床の香りがする、古い木の心地よい香りだ。店の床はさすがヨルダが掃除しているだけあり埃ひとつない。ダイキチはその床の香りを堪能することにした。

 カウンターからこちらへ近づく、響きのいい陶器の交わす音色が聞こえる。


「床に寝転がると汚れますよ兄さん」


 銀のトレンチに可愛らしい草花の模様をあしらったティーセットを持ってテーブルにやってきたのは、この家の次男坊兼喫茶店のマスター、ウルフウッドだった。


「大丈夫だ、俺のヨルダには抜かりがない、疑うなら床を舐めまわってもいいぞ」

「そういうことではなくてですね……」


 ウルフウッドは少し困ったような笑顔をした。そこへ可憐ながらもニヤニヤと厭らしい笑顔を浮かべるヨルダ。


「ぬふふふ、やはりウルフは美男子よのぉ。その笑顔で何人のおなごが虜になるやら……北区で商いをしていた時にはおなご達の太陽だったそうではないか、ぬふふふふふ」

「いえいえそんなことは」

「その謙遜の笑顔もええのぉええのぉダイキチと違ってその爽やかさと可愛らしさとうふふふふふふふ」


 あははははとウルフウッドの乾いた湿り気のある爽やかな笑いが空気を和らげる。

 なにをやっても濁らないっていいなー。

 そんなことを思いながら目を閉じた。

 入り口から金属のカラクリが動く音がした。

 木と閂で作られたドアが主流の中流階層では聞きなれない、貴族のドアが開けられる音だった。

 ピリっと張り詰めた空気が、この小さな喫茶店を支配する。

 ウルフウッドは紅茶の入ったティーカップを置き、ヨルダはドアの方へ目線を向け、ダイキチは勢いよく身体を起こした。

 しかしダイキチだけヨルダのメイド服のスカートに頭を突っ込んでしまい、前が見えない。


「よぉウルフウッド」


 そこに現れたのは亜種族にも対応された大きめのドアでも窮屈そうにしている、筋骨隆々ツルピカの大男、ドラン・ディメナントであった。


「こんにちわドランさん」

「あらいらっしゃい一昨日ぶりじゃったかの?」

「紫」


 鈍い静かな打撃音が二発聞こえた。


「ヨルダ……ニーはだめだ、ニーは。ぐふぅ……」


 ヨルダのスカートの中から鼻を押さえたダイキチが姿を表す。


「あぁらぁ~そんなところにいたんじゃのおぉダイキチ、わっちは気づきもせんかったぞぇ?」

「っべ、おい鼻血出たぞ鼻血! これ鼻曲がったぞ絶対! はナマがぐふっ」

「誰のどこにおって鼻がどうしたと言うんじゃこのむこさまよぉ?」

「ふぁ、ふぃあふぉおいうふぃみふぁガっ(い、いやそういう意味じゃなっ)」

「兄さんはまた……」


 大男が笑った。豪快に笑ったにもかかわらず、誰が聞いても心に安心感を残す声が特徴的である。やはり教会の孤児院を経営しているだけのことはある。


「なんでぇ、カトー一家全員おそろいか、しかしまぁいい男といい女ばっかで華があるなぁこの店はよぉ。うちにも花はあるんだが口が悪いからなぁ」


 その単語を聞いた途端に三人の顔は陰った。


「ありがとうございます、少々痴話喧嘩が激しいのが店の悩みの種ですが」


 ウルフウッドは流れるような笑顔で答えたが、くぐもった気配はは隠しきれていなかった。


「うはっ、なにすんだヨルダ!」


 笑顔の隣では未だに繰り広げられる緩やかな格闘、どうやらヨルダがカップの中の紅茶をダイキチの頭にかけたらしい。


「ふむ、なんじゃ冷めてしまってたかいの?」

「おまっ」

「申し訳ありません、ヨルダさんはぬるめの紅茶がお好きだと存じておりましたので」

「おぉさすがウルフ、わかっておるのぉ。これはポットの方にしなかったわっちのミスじゃ、気にするでない」

「ふふっそうですね、確かにティーポットでしたら兄さんの面白い顔が」

「悪かった、悪かったからやめてくれ!」


 降参といったふうに、ダイキチは両手を上げる。


「お前ら一家は西区に来ても変わらねぇなぁ」


 またくぐもる。

 その雰囲気にはドランも無い後ろ髪を掻くばかりだ。しかしなぜかドランの表情には、なにやら含みが見える。


「まぁそのなんだ、あの坊主だ、いつのまにやらひょっこり菓子でも食いながら戻ってくるって、な?」


 三人は俯き、か細く「はい……」と答えた。

 静寂が流れ、窓から差し込むあたたかい光も、ドアから漏れ出す街の活気も、カウンターから聞こえる紙の擦れる音も、空気をいたずらにかき乱すだけだった。

 わかってるんだけどな、わかってるんだけど

 そんな言葉をダイキチは反芻した。

 ダイキチたちが顔を上げると、ものすごい形相でドランがニヤニヤしている、今にも吹き出しそうだ。




 虚空を背負った風がドランの立つ入り口から店内を駆け巡った。





 そう、ダイキチは何もわかっちゃいなかった。





 ――砂糖がちょっと足りない





 カウンターでレモンタルトを頬張る、静かに澄んだ子供の声だった。


 



 


とりあえずプロローグできました!

とりあえず空気感を出してみようと思いました、思っただけだけですけどね!

プロローグだからちょっと雰囲気を重視しましたが本編に入るとテンポも変わってくるのであれ?となるかもしれませんのでご注意


どのくらいの文字数がいいかわかりません(・_・;)

すみませんが書きたいように書かせてもらいますので文字数にはご勘弁を。


次から本編ですね、二日後にはできるかなーと思います、何も無ければ!←


このような不詳者の粗末な文を呼んでいただきありがとうございました!

次回に期待してね☆

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