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心臓の逃げ道  作者: 壬哉
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エピローグ 心臓の心

返して……俺のからだ……俺の……


貴様……どうやってあそこから這い登ったんだ!!


邪魔しないで……俺の人生


邪魔をしているのはお前だ!!これは俺の体なんだ……


違う


ちがくない!!……この身体はもう俺の体なんだ……返せ?これは元々俺の体なんだ


それは……その身体は俺のものだ!俺と悠汰のものなんだ!!


違う……それは違う……悠汰なんてものはいないんだ


居るんだ!!俺のちかくで一緒に戦ってくれてたんだ!!お前なんかいなくなっちまえ……!!





 それっきり。何も返ってこなくなってしまった。

 真っ暗で。それで尚且つ何かを感じていられた。なにか。懐かしいぬくもりが気持ちよかった。ソッと頭を撫でて、優しく和ますような暖かくて大きな手。

 きっと今、目を覚ましても真っ白で何も見えない気がする。けれど、今すぐにその人たちを、助け出したかった。

 そんな心配をさておいて、ソッと目を開けても、ヤッパリ何も見えなかった。今まで疲れていたものが、ドンと目の前に押し寄せられているかのように、真っ白で、何も考えなくていいよといってくれるような、囁きこそが、耳に綺麗に入ってきていた。

 たったそれだけ。

 たったそれだけの囁きでも、凄く心が休めていた。今ここに居る事が、心の気休めで、すべての救いの手を差し伸べてくれている場所。

 なんとなくそう思えるのは、少しでも俺が前向きになってきた証拠なのかもしれない。

 できるだけ多くのものを受け入れることの出来る人になり、心身ともに少しずつ大人に近づいていってくれているような成長。

 自分ではわからなくとも、解ろうとすれば、わかりたいという一心でわかっているような気持ち。

 なんとなく。なんとなくどうしてここに俺が生まれてきたのかは、全く持ってわからなかった。人間は、何か意味を持って生まれてくる。そんな言葉は大半嘘だろう。だって。『心臓』なんてものを目当てにされるだけのために、俺は実際生まれてきてしまったんだ。

 世界の邪魔者として扱われても仕方が無いくらいのものだ。どうすれば良いのだろう。なんとなく、心のどこかでは「心臓」は守れだの、殺せだの。わけのわからない言葉が回ってくるのに。心の奥底では、わからないと言う声も多少聞こえてくる。

 暖かく、ぬくもりのある手が、優しく頭をまだ包み込んでくれている。

 きっと助けてくれているのだろう。

 精神的に。何かを支えてくれるぐらい、大きな手が今、頭の上の乗っかっていてくれている。少しばかりそれが心の支えとなっている。

 確認したい。

 目を開けてありがとうといいたい。言いたいのに、口が上手く動かない。いや。それ以前に、瞼が全く開いてくれる様子を見せてはくれない。何かを邪魔するかのように、もっと休んでいろと、優しい声もする。

 再び夢の中に入ってしまいそうなくらい、ウトウトとしてしまう。

 

 いまは充分に休んでおいて


 再び優しい声が、ソッと包み込んでくれている感じがする。暖かくて、なんだかホッと安心して。そう考えると、俺の周りには温かい人ばかりが居るのかもしれない。

 微妙につかれきっている何かを休ませるように、すべてのものを一時休戦とさせてみた。それで良いのだ。

 今はそれでも構わないのだ。

 そう心に決め付けた。

 真っ黒ではなく、真っ白な世界への階段を、無意識に歩いていた。



 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

 階段を上り始めて、漸く扉が見えてきた。

 おしゃれにステンドガラスのように、扉に微かに残っているガラス。赤く染めるガラス。綺麗に整っていて、なぜか凄い白のように感じられた。

 その扉を開けるとともに、スッと今までの疲れが消え去り、ソッと包み込んでしまうように何かに覆いかぶさるような暖かいものに入っていた。

 腕を瀬いっぱい伸ばして、何かにぶつかってそれを抱え込むように抱きしめた。


「うわっ!!」


――うわ?


 抱きかかえていたものを見るように、力いっぱいの腕をゆるゆると弱らせて、パチッときちんと目を見開くと、そこにはかなり焦っている祐司がいた。

 どうして目の前に祐司がいるのかもわからずに、渋い顔で見つめてみた。すると、祐司の後ろの方から勝治が顔をヒュッとだしてきて、いきなりパァッと明るくなった顔つきになった。

 滅多に見ない勝治の光り輝く笑顔が、急に近づいてきてガバッと祐司ごと抱きしめてきた。反射的に肩をビクつかせて、声にならない何かを叫んでいた。


「漸く目が覚めましたか」


 『悠樹!!』


 勝治の向こう側からは、目が赤くなってしまっている悠汰がいて、悠汰までも、俺を抱きしめてきた。

 余り体重は感じなかったが、勝治と祐司の重みで、少しばかり唸る羽目になってしまった。すると、確か悠汰の前に声が聞こえてきたと、。少しばかり周りを見回してみると、ハァと大きなため息をついている真治が立ち上がっていた。


「悠樹でいいんですよね?」


「ん?えっどういうこと?っていうか俺?あれ?」


「いまいち状況を読み取れて居ない状態ですね」


 呆れたようなため息をつきながら、真治は勝治の座っていた椅子に腰をドンと下ろした。メガネをカチャッと上げ、腕を組みながらじっと見つめてくる。


「君は乗っ取られていたんですよ?その後急にぶっ倒れたかと思えば丸々一ヶ月ほどお眠り状態でしたからね」


「お眠り状態?……確かになんか疲れは取れてるけど」


「悠汰くんでしたっけ?助けてくれた一声は悠汰くんでしたよ。悠樹が違う悠樹だという事を祐司に伝えて必死に祐司が怒鳴り散らしていましたからね」


 薄く微笑んだ真治の微笑み。その微笑みは、ここに着てからきっとはじめてみた微笑だと思う。ずっと何か精神的に追われていて、それに気付かなかっただけかもしれないけど、なんだかスッキリしたようなしていないようなだ。

 けれど、ヤッパリ嬉しかった。

 人の笑顔は結構好きかも知れない。

 奥にまだ人がいたのか、だんだん人が集まってきて、よかったなーとか、よかったよかったと、いろいろと歓声を上げていた。

 知らないうちに心臓がどうのこうのというやつに乗っ取られてしまい、たぶん悠汰の小枝と思われるその声に気付いて、何か会話をして。それで、その心臓だとか言うそいつに消えれみたいなことを言って。

 とりあえずいろいろと皆が見ていないところで、決闘をしていたような気がする。

 すべての話を聞いたとき、凄く嬉しかった。助けてくれたという事がすごく嬉しかった。


「ゴメンネ……祐司さん……ごめんね?」


「何でお前が謝る?俺たちも少し無理をさせていたかもしれないな」


「違う……本当は祐司さんたちのこと信じてなかったんだ……信じてくれなんていわれてないから信じていいのか信じちゃだめなのかわからなくて……」


 なんだかどこかスッキリしていくかのように、だんだん涙が頬から零れ落ちていく。それを拭うように、一生懸命腕で拭っていくが、止まるという事を知らないように、ボロボロと流れに投げれていく。

 優しくいろいろな暖かい手が頭を撫でてくれる。ソッと抱きしめてくれて、何か自分は幸せなんだと思えた。

 なんとなく。もうあいつはでないような気がする。

 まっすぐに見つめていたはずのそれが消えて言ったかのように、心にはすっぽり穴が開いてしまった。が、それを埋めるように祐司達が優しくしてくれる。

 悠汰の優しい顔や、祐司達のぬくもりが一気に入ってきて、抜けた場所は小さかったかのように、あふれ出てきてしまう。

 一番に俺の手に触れたのは、俺から手を出した悠汰のぬくもりだった。


 『悠樹……もう俺の役割は終わったよ』

 

 悲しい顔。だけど、何かすべてをやり終えたように清清しいような、優しい瞳。そんな瞳が、光って見える。悠汰の頬から流れ落ちる涙が、綺麗な聖水みたいにキラキラと輝いている。

 そんな口から出てきた言葉に、俺はいまいち反応できずに居る。


「悠……汰?」


 『もう終わりだよ……悠樹。もう悠樹は俺が居なくても充分なんだ。もう心臓だって悠樹物さ』


「ちょっ待ってよ悠汰……おれらまだ一緒に入れるんだろ?」

 

 さっきとは違う涙が、俺の頬にも流れ落ちてきた。

 あったのだって、まだ昨日のように思い出せるのに、こんな短期間で消えていってしまうなんて、全く考えて居なかったし、居なくなってしまうなんて思いもしなかった。

 一緒に居てくれるとも言っていたから、素直に喜んでいたのに。


 『これからは祐司達がいるじゃない?ね?大丈夫。俺はちゃんと悠樹を見つめているから……』


「悠汰!!!」

 

 そう叫んだとともに、悠汰の方から光が勢い欲放たれ、破裂したかのように消え去っていってしまった。そんな急な事。言われてすぐに理解できるかよ。

 悠汰のいた場所に最後に見たのは、悠汰が流した涙の、最後の1滴だった…………。




















「悠樹ー!!行くぞ」

 

「ちょっとまってぇ〜!こっちの靴とこっちの靴どっちがいい?」


「ばぁかそんなんどっちでもいいよ」


 奥のほうから少し怒り気味の勝治と、少し呆れかけている祐司の声が聞こえてきていた。それに答えるように、にかの部屋からは、外靴生活の中でもまだ迷うというものを知っているかのように、大量の靴の中から選んでいた。

 元々こんなにも靴を用意しなくても良かったのでは無いだろうかというほど、かなりの量が最初から準備されていた。そんな日を、悠汰が居なくなってから三年がたつのに、昨日のように思い出せる。

 思い出す度に、涙がホロリホロリと流れてしまうが、悪い記憶ではなかった。凄く気持ちがよくて、天国に言ったような気持ちのいい気分になれた。

 けれど、それでもヤッパリ自分の片割れが居なくなったように寂しくて、そこらへんにまだ歩いてるんじゃないかな??というくらい、すごく消えていった事を受け入れられなかった。

 でも、そんな事を考えていたら、悠汰に変に心配をかけてしまいそうだった。だからこそ、できるだけ前向きに、ずっと見守ってくれていると思ってまっすぐ前を見据えて生きることにした。

 外に出かけれるようにもなったし、土村家は挫折してきたし。土下座までしてきた事に、少しばかり馬鹿だなと思いため息をついた。

 なんだか子供の茶番だったような毎日を、クスッと皆で笑ったこともあった。

 悠汰が居てくれたから、この世界は楽しく生きていけた。

 いや。

 この心臓があったから、心臓のおかげで自分の進む道を変える事が出来た。

 迷ったときには祐司がいて、勝治がいて。それで尚且つチョッと近寄りガタイ、最近主治医だった事に気づいた真治や、他の皆他に地もいろいろ助けてもらっていた。

 謎はまだまだ深まるのに、どうしてかその謎というものが楽しく感じられる。

 生きることが楽しくて楽しくて、まだまだやり足りないくらいなのに、高校にもちゃんと復帰していたから、今から大学にいくところだった。

 それで学んだことは、勝治の運転は怖かった。

 なんかふらついていて怖いとかじゃなくて、スリリングというのか、迫力があるとか……。凄く狭い道なのに、思いっきりスピードを上げる怖がる様子も無いところとか。

 「それで悠樹が怪我したらどうするんだ」という祐司の叫びによって、運転手は祐司と変わり、つまらないからといって勝治も同行していた。 

 平和になった今、自分は何をすれば良いのかっていろいろ悩んだ。

 悩んだ挙句。

 俺は

 悠汰の分まで長々とのんびりと生きることを選んだ。


 

 

 

 ありがとう皆


 

 

 

作者の壬哉です


長々と進展の早めなお話。読んでくださった方々ありがとうございます。

出来るだけわかりやすく、尚且つ早めに終わらせるつもりのこの作品が、こんなにも長ったらしくわけのわからないものになってしまったことを心からお詫びします。

良ければ感想や評価厳しくよろしくお願いします。

まだまだ誤字脱字はありますが、いろいろと直していますので、酷い誤字脱字などがありましたら、よければ報告よろしくお願いします。

文章力がかけている部分がありますが、その分にも指摘を下さると光栄です。

読んでくださった方ありがとうございました。

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