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心臓の逃げ道  作者: 壬哉
10/17

居るはずの者

 

 真っ暗な世界。

 

 俺はその中にチョコンと独り立っていた。

 

 特に叫ぶ言葉が無いし、助けを呼べるほどの人が居なかったから、ただボーッと周りを見回していた。なんだかここに来た事があるような世界。

 こんなところに来た事なんてまず無いのに、何の恐れもないし逃げたいという気持ちにもならない。助けを呼べるほどの人が居ないのではなく、助けを呼ぶ必要がないからなのかもしれない。 

 何でかは解らないけどホッと安心するような何かがあるし、周りを見回しても何も無いってことが、逆に嬉しかった。

 

 なんでわかる

 

 そうきかれたときに、困った自分の焦った心。凄く新鮮で、何かずっとそのままの気持ちでいたいとも思った。なんでかはわからないが、基本的に何の自覚もしないほうなのかもしれない。

 確かに一度襲われかけている。だけど、あの時助けてくれたという安心感があったのかもしれない。もう一度襲われたらなんとなく学習かもしれないけど、一度の経験だけじゃ解らない。

 寧ろ一度目が怖いものなのかもしれないけど、怖すぎて何が起きているのかが解らないのかもしれない。

 今まで誘拐なんてなかったし、そんな雰囲気だって無い。

 特に親から離れたいと思ったこともないし、だからといって親に何も言わないで夜遅くに帰ったことは無い。

 ここに来た事だって親は知っているのだろうか?別に知っていても知らなくてもいい。そんな気持ちがあるから。あんまり心配性でもないのかもしれない。

 逆に。

 新鮮だから。

 それだけなのかもしれない。

 

 だからいま、ここに一人残されていても、何も危害を喰らっているわけでは無いから安心していられる。

 真っ暗でも襲われなければ何も怖くない。 

 襲われるかもなんて考えなければ、なんも怖くない。寧ろ落ち着く。

 後ろ向きな考えばかりするから怖いことがおきるだけで、なんとなくそんな事もあるだろうな程度に考えておけば、何かあったと気に適当に反応したり、それなりに対処できたりする。

 怖がってばかりいたら、いざとそうなってしまった時に逆に対処できない。

 だからといって全くもって怖がらないのはダメかもしれない。逆にいざという事がおきないのと、次このようなことが起きたら、次が怖くなるから。

 出来るだけプラス思考で行く。それが俺だったのかもしれない。

 昔の俺は、もう少し後ろ向きだったような気もしないことは無いのだが。

 

 

 

 真っ暗な世界が、いきなり真っ白になった。

 そんな事全くもって考えて居なかったから、かなり焦って周りを見回そうと目をきちんと見開いたとき。

 ハッと現実に戻った。

 目の前にはカーテンがある。あの少し太くて重そうなカーテンがこのベッドを囲っている。別に使っているわけでは無いから、上のほうを膨らませながら真ん中より少し下のほうで、太い布で一つに括られていた。

 周りは明るくて、窓の奥から入ってくる光が凄く新鮮で、はじめてみたといっていいほどの光に感じてくる。

 

 「覚めたか?」

 

 「えっ」

 

 声をしたほうはクローゼットの方だった。

 そこには勝治がいた。

 椅子を用意してきたのか、椅子に座って足を組み腕をも組んでいる様子を、かなり驚いた瞳で見ていると、大きなため息を吐かれる。

 

 「いつから……?」

 

 「お前が部屋に戻ってきてから。ずっと後ろついてたし」

  

 「なん……で?」

 

 「一応ここは広いからないざという時にお前を探すので精一杯になりそうだからな」

 

 何で怒っているのだろうか。そんなにも何か怒らせるようなことをした覚えは、今のところなくもない。けれど、あるだろうといわれてしまえば、確かにあるかもとおもう。

 基本的にキレキャラに見えるせいで、それが普通に見えてしまうのはいけないことにも感じるのだが、そう見せている勝治が悪い。かも。

 祐司さんがよかったな。けど、そんな事を言ってわがままに付き合わせることダメだって事はわかっているのだが、ヤッパリいろいろと怒られるくらいだったらやさしい人がいい。

 

 ――ゆーた?

 

 そういえば先ほどから悠汰の姿を見かけない。逆にそっちに胸騒ぎを覚えてしまう。ベッドから足をたらし、靴を履いてゆっくりと床を踏む。

 ふわふわとした絨毯を踏むのは、まだ少しばかり抵抗がある。

 しゃがみこんで、ベッドの下もちゃんと探してみる。勝治がいると「悠汰ー」と小さい声でも出せないのが、結構悲しいものがある。

 

 「何か探しているのか?」

 

 ゆっくりと立ち上がり、俺の隣にソッとしゃがみこんだ。

 

 「ちょっとね」

 

 「それよりもこれをきちんともっていろ」

 

 そう言って頭に硬いもので叩きつけてくる。

 

 「いたっ……」

 

 スイッチは一応硬いから頭をバンバン叩かれるのはさすがに痛い。叩かれるそこを擦りながらプゥッと頬を膨らませた。

 ベッドの下には居ない。

 ネコじゃないんだからいるはずがないような気もしないのだが、なんだかまた一人にされたようで凄く心細かった。

 スイッチを受け取り、適当にクローゼットを開けてみたりなんかはするものの、いる様子は無かった。いる気配も全くしない。

 挙動不審だったのか、勝治はベッドに腰をかけて、じっとこっちを見据えていた。そんなに見られたらやりたいことも出来ないし、着替える事もできない。別にどこか出かけるわけではなさそうだからこのままの服でも良いのだが。適当にいじると、ゆっくりとそのクローゼットを閉める。

 他にはどこにも入り込めそうなものはなかった。あるとしたら。

 

 まど。

 

 身体を細めて、慎重に行けば出れそうな細さだ。身長的には丁度良い。いや。余裕があるくらいだ。普通に勝治や祐司も通れそうだが、横幅が無理だろう。

 少し細い。風を通すくらいだから。運よく頑張れば出れそうな予感がする。

 窓に手を触れてその窓を開けて、ジッと外を見た。

 外は木に囲まれていて、これだったら木を上って移動すれば、門番が居たとしても簡単に出入りできそうな気がする。ここは二階だが、まだ上に階があるらしく、なんだか侵入も楽のように見える。

 ゆっくりと外に手を出そうとしたとき

 

 「おい」

 

 ビクッと肩が上がる。

 後ろから思いっきり怒鳴りつけるように勝治の声がしたのだ。ゆっくりと首を後ろに向かせると、「怒鳴りつけるように」ではなく、怒鳴りつけたのだろう。再び眉間にシワが寄せてあった。

 身体ごと勝治の方に向かせ、一歩退く。

 

 「なっ……なに?」

 

 「外には出るなよ?」

 

 「出れるわけ無いだろこんな細いの!」 

 

 いや。見られていないところでは頑張りたいなとは思っていたが、悠汰が居ない時にへんなことをして戻れなくなったら面倒な事だ。簡単に言えばベランダに出たのはいいけど、仲に入れなくなったりとか。

 いやな方向を考えるとしたら、ベランダに出た時にへんなやつに捕まって、身動きが出来ないまま再び変なところに連れて行かれるのだけは、避けたいかもしれない。悠汰が居れば、それなりにフォローしてくれるような感じもあるのだが。

 一応という事でスイッチは受け取ったからどうにかなるような気もするのだが、こんなにも広いんだったら携帯電話の一つも持たせてくれればいいものを。

 今は悠汰を先に探すべきなのだろうか。窓を開けっ放しにしたまま勝治の隣を走って通り抜け、ドアをさっさと開けて廊下に出た。

 なんだかもう壁を沿って行かなくてもいいような気がして、廊下のど真ん中を堂々と歩く。

 朝だからか、何時かはわからないが、少しばかり廊下も窓から入っている日光によって照らされている。といっても、窓は本当に奥のほうにあって、少ししか入っていないのは悲しいもの。

 何かを探すように廊下を走りとおし、階段をさっさと降りていく。

 

 ――悠汰!!

 

 とりあえず反応して欲しくて、俺はキョロキョロ見回しながら走っていると、向こう側から祐司が歩いてきていた。

  

 「どうした?そんなに焦って」

 

 「えっ……あっ……いやなんでもないよ。ここ広いからのんびり歩いてたら全部まわれないような気がして」 


 アハハハハァ〜と頭を掻きながらそういうと、凄く不思議そうな顔をされる。何かへんなことを言ってしまっただろうかと少し不安になる。

 頭に乗せていた手をゆっくりと戻し、俺も不思議な顔をしてやった。

 

 「勝治は?」

 

 「えっ?あっ。おいてきたっていうのかな?こういう場合……」

 

 「全く。余り独りで歩き回らないでくれ。で?どっちに向かうつもりだ?」

 

 「祐司さんが来るの?」

 

 「だめか?」

 

 「いいよべつに」 

 

 探検混じりに悠汰を探す事にすればいい。

 小走りに走るのは少し疲れたからと、いつものペースであのリビングみたいな場所に向かった。

 ゆっくりと戸を開けると、まだ皆して眠りの中に居た。

 

 「暫くそっとしておいてやれ」

 

 と祐司に言われてうんとゆっくり頷いたはいいけど、この中に悠汰が居ないことは無いのだ。いるといってもいいくらいだ。

 けれど、見回す限りは居ない。適当に呼びかけはしてみたが、何も反応が無かった。

 祐司がいるからそう不安にならなくても良いのだろうが、なんだか悠汰が居ないと俺が俺でなくなりそうだった。

 踵を返して廊下に戻った。そして、最初の部屋に行こうと昨日。いや時間帯的に今日かもしれないが、自分で言っていたのを思い出してゆっくりとそっちに足を運んだ。

 一歩半くらい。ほぼ隣を祐司が歩いている。

 コツコツっとした響が、凄く緊張の糸をくすぐってくる。いや。くすぐるというか増長させているようなきがする。

 ここで女の人の話をするべきか、違う話をするべきか。靴の音だけを聞いているのは凄く冷や汗を増幅させる。

 本当に何かを探検しているように。

 覚えている道のりを着たのは良いが、どの扉だったのかをすっかり忘れてしまった。

 

 「ここは?なに?」

 

 一番に目のついた、扉に所々血痕なのか、サビなのか。どちらかというと血痕の方が色的に近い。ドアノブや、ドアの上のほうにある曇りガラスにも所々ついている。

 内側から。というより、外側から何かを触った時に出来たかのような後。

 

 「ここは……なんだっけ?」

 

 「ヤッパリこんなにいっぱいあると覚えてないものなの?」

 

 「まぁな。いっぱい部屋ありすぎて使ってない部屋の方が多い」

  

 祐司はため息混じりにそういいながら、ゆっくりと俺の前に立ち、ドアノブを先頭きって開けた。すると、中は最初連れて行かれたあの硬いベッドがある部屋と、少し形が変わったかな??位で、そう大きく変わっているものはなかった。

 あのベッドといい、小さいな棚といい。特にこれといった変わったものがあるわけでもないとおもい、ゆっくりと中に入っていった。

 ドアのところに立っていた祐司も、少し気になったのか、ゆっくりと中に入っていく。

 

 バタン!!

 

 勢いよく後ろから音がした。ドアが力強く閉まるような音。急いで後ろを振り向くと、驚いている祐司と、その向こうには意味も無く閉められたような扉。

 

 「閉めた……?」

 

 恐る恐る祐司に聞いてみると、ゆっくりと首を横に振っていた。それとともに思考は固まった。何で勝手に扉が閉まるのだろうか。

 あの時悠汰にやってもらったときとは訳が違う。あの時は命令だったにしても、今はその当の悠汰が居ない。扉との間に祐司がいて、不意に俺がやることは出来ないし、祐司もかなりびっくりしている様子。ということは、何者かがいきなり閉めたのだろうか。

 けど、足音もしなかったし、特に奥のほうから人が来ていることもなかった。後ろから人が来ていたら?とおもうと、確かにそれはありえないかもしれないが、その際足音はどうなるのだろうか。

 祐司も結構神経質かのように、後ろを向いたりいろいろ警戒はしていたから、そう簡単には近づけないはずだ。

 ソッと祐司の裾をつかんで背中に隠れるように、キョロキョロ見回しながら近づいた。

 けれど、中に人が居る様子はなく、中に監視カメラがあるような予感はしない。どうしてこういうところに監視カメラが無いんだ。と、結構疑問にはなる。

 

 「何でここには監視カメラが無いの?」

 

 「使う時に設置するから使わないときは設置していないんだ」

 

 「……こんなところ入るんじゃなかった……早く出よ」

 

 祐司の背中を押して扉に近づかせる。自分であのドアノブを回す勇気が無い。何事も無かったら回していたかもしれないけど、ここまで不可思議なことが起きてしまったらどうにも出来ない。

 いざとなったらあのスイッチがポケットに入っている。

 確認のために、入れたはずのポケットに手を突っ込むが、確かに硬いものが入っている。けれど、何かの衝動で閉まってしまったのならば、開くはずだ。多分。

 祐司の手がドアノブに触れ、時計回しに回したとき、途中でガチャっという音がする。この音はどこかで聞いたことがある。確か、カギが閉まっている時に、ドアを開けようとしたら、こうなってしまう。ということは理解していた。が、今それが起きてしまうことは全くもって考慮していなかった。

 何度がバンバンとドアノブを回したまま、叩くようにしてみたが、全く開く様子は無い。

 

 ――悠汰!!助けて悠汰!!

 

 祐司から一・二歩下がり、周りを見回す。

 

 ――どうしてこういうときに限っていないんだ……

 

 『悠樹!!どうしたの?』 


 向こうも俺を探していたかのように、悠汰が、ベッドのある頭くらいのところの壁から、するりと心配そうに焦った感じに出てきた。 

 素直にそれに安堵あんどし、ゆっくりとひざを曲げ、ヘタリと座り込んでしまった。

  

 「悠樹?どうした?具合が悪いか?」

 

 「あっ……いやなんでも……ない」

 

 祐司が俺の腕をつかみ、ゆっくりと立ち上がらせようとしているが、安心しすぎて全く足に力が入らなかった。

 祐司の腕を借りて、立ち上がろうとするが足に上手く力が入らなかった。けど、少しふらつくが立てないことも無い。

 

 ――悠汰。なんかドアがいきなり閉まってかぎかけられたみたいなんだ……外に誰か居る?

 

 『ちょっと待ってて』

 

 ドアをするりと抜けたとき、俺は変わりに扉に近づいて軽くドアノブを回してみた。なんとなく、さっきの恐れは無い。

 ハァと大きくため息を吐いて、何かに気合をこめるように手に集中した。

 

 『いないとおもう。鍵開けるよ?』 

 

 ――うん頼む

 

 軽く頷いたと同時に、カチャッとカギが開く音がする。

 ホッと息をはき、ゆっくりと扉を開けた。

 

 「開いた……」


 「……何をしたんだ?」

 

 後ろでは驚いているような祐司。確かに今まで何をどうしても開かなかった扉が、何もしないでチャッカリ鍵まで開いたのだ。驚かないわけでもない。

 薄くフッと微笑んで目線を外して廊下に出た。

 精神的には、これは心霊現象としか考えられなさ過ぎて、怖かった。足が軽く震えて、これ以上先に進めないような気がして。

 

 ――悠汰。どこにいってたの?探してたんだよ

 

 『あの監視室中央部でボケーッとしてた。あそこ結構落ち着くんだよ?』

  

 ――……まぁいいけどさ

  

 「悠樹。どういうことだ?」

 

 「わかんないよ。俺が聞きたいくらいだよ」

 

 てきとうにそうやって言い訳したものの、閉まったわけまではわからない。閉まったものがわかれば適当に何かいえるのに。

 

 「けどどうしてしまったのかが不安なんだけど」

 

 キッと睨みつけるように祐司を見ると、何か一歩退いたような気がするが、特に気にしないで部屋に戻る道を戻った。

 俺にだってわかんないんだ。閉まった理由も。俺がこんなことを出来る理由も。それか一つでも解決できればいいんだ。できれば。出来ればどうして心臓なんかを取りたいのか。

 心臓がほしいんだったら他のやつのでもいいはずなんだ。特に能力も無いこんな血の循環しか出来ない心臓なんて、ただのマイナスになるかもしれないし、他人にとってはただ邪魔なだけだ。けど自分にとってはとても大切で、これが無いと生きていけないものの一つだし。

 なのにどうしてそんなにも他人のものがほしがるのか。本当に欲しいものなのか。そんなのもほしがっているのかどうかが解らない。

 

 「部屋に戻るね」

 

 そう言って駆け出そうとしたとき、前のほうから人影が見え、一歩踏み出した足がピタリと固まった。前に出していた方に体重を乗せていたが、反射的に後ろに体重をかけた。

 

 「祐司。客だ……悠樹。お前はこいつらと部屋に入ってろ」

 

 真剣な顔でいってきたのは勝治だった。後ろには5人ほど真治とともに、いろんな顔した男の人が居た。急に俺を取り巻くかのように周りにつき、真治に手を退かれてさっさと階段の方に連れて行かれた。

 客だといっているが、どうして客が着たからと急にこんなにもガードが固くなる必要は無いような気がする。それとも客が客なのだろうか。

 皆して昨日の楽しそうな顔が無い。真剣な瞳で、さっさと俺を部屋に連れて行こうとする。

 

 「あっちょっなんでそんなに急いでるの?」

 

 「いいから。もしあれだったら姫様抱っこでもしてややろうか?」

 

 意外にも、にやりと微笑んでいるのに、鋭い目つきをしてくる。

 

 「いやだ……」

 

 ――客って誰だろう

 

 『……土村家』

 

 ――敵がこっちにくるのか?!

 

 『多分………隙を狙って悠樹をだとおもう』

 

 ――だからこんなにも厳重なの?

 

 引っ張られながらも、こけるいきおいで階段を上りおえると、歩くスピードが上がっていく。

 部屋の前に着くと、勢いよくあけて一番に入れて、他の人たちのも中に入ってくる。チャッカリ真治は鍵を閉め、中に入ってくる。

 

 「誰が来てるの?」

 

 「……土村家だ」

 

 「心臓を狙っているって言う?」

  

 「そうだ。だから暫くはこの部屋に居てくれ」

  

 「危ないの?」

 

 「あたりまえだ」

 

 肩を押して回れ右を無理矢理してベッドに押し倒された。

 

 「ギャッなにすんだよ」

 

 「大人しくしなさそうだから」

 

 なんていいながらベッドに腰を下ろす。他の人たちは適当にそのベッドの周りを囲むように足っていたり座っていたりしている。

 大人しくしなさそうだからじゃなくて、ただここが一番守りやすい位置だっただけではないのだろうか。素直じゃないんだか回りくどいのか、これが素なのか良くわからない真治。

 パソコンと向っていそうな顔だったから、ずっと監査室にいるのかと思ったが、これで何かあっても腕力とかは、信用出来そうも無い。

 急に俺が黙ると、しんみりとした空気が広がりだす。

 隣には悠汰が大きなあくびをしながら座っていた。

 

 ――眠いなら寝てていいよ?

 

 『んっ……何かあったら起こして』

 

 ヤッパリ人間なのだ。

 悠汰が眠くなる事は普通に考えていなかった。別に今は何をすることも無いから別にいいのだが、話す相手もやることも何もない。

 静かな時間が長ったらしく続いていく。 

 

 

 


 

 

 

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