一寸ババア5
頭の中をミキサーにかけられているような感じがする。
今までの記憶がスライドショーのように次々と流れる。
砂漠に水を一滴落としたときの吸収力を体で感じる。
染み込む水はやがて、砂に交わり消えていく。
体中に行き渡った時、達也は現実に戻ることができた。
「・・・」
気づけば地面に倒れている。
ゆっくりと起き上がり、周りを見渡す。
もう、MIIはなくなっている。
そして、体に残る虚無感。
それは、季利栖を失った悲しみ。
五年経っているとはいえ、達也にとっては、ついさっきの出来事に感じる。
助けられなかった。
救えなかった。
また会えたのに、言いたいことがあったのに。
その機会さえ、無下にした。
「・・・季利栖」
ふと、足音。
達也は入口を見る。
骸がタバコをくわえ、立っている。
「お目覚めか、達也」
「ああ。思い出したよ。自分の不甲斐なさをな」
「だが、力を身に付けただろう」
何もかもを知っているのかと感じる。
確かに、達也は自分の体に何かの力を感じる。
だが・・・
「扱い方がわからないだろ」
骸は笑う。
「誰でも最初はそうだ。その力に戸惑い、さらに絶望に落ちる」
達也を部屋から連れ出し、歩く。
「その力はMIIに対抗する唯一の力だ。だが、リスクもある。それはおいおい説明しよう。まずは、どんな力を身に付けたかを知らないとな」
連れてこられたのはだだっ広い円の形をした部屋。
広さは大体半径六十メートル。
何も置いていたな広さの部屋には明かりのため、多くのろうそくが壁で燃えている。
「こんなところで何を!?」
後ろの骸に振り向くと、
銀色の槍が顔目掛けて飛んできた。
体を動かす時間がない。
達也は、とっさに受け止めようと両手を突き出す。
金属と金属が擦れるような音が響く。
恐る恐る手をどけてみると、槍は消えていた。
「なるほど・・・」
攻撃した張本人であろう骸が頷いている。
「いきなりなにすんだ!!」
怒鳴る達也。骸は、両手で制し、
「すまんな。君の力を早くに見極めたかったんだ。そしてわかった」
骸は口の端を吊り上げて笑いながら
「達也。君の力は盾だ」