一寸ババア3
黒髪の長い女性に車まで案内され、そこからは目隠し。
「・・・機密っていうことですか」
「そういうこと。少し我慢してね」
そう言われ、何時間たっただろうか。
今は下へと下がっていく感覚がある。
(・・・さすがに地下ぐらいはわかるな)
かなり下っていく。そこに振動。
(止まった?)
「さぁ、降りて」
促されるままに車を手探りで降りる。
そしてやっと目隠しが外された。
「ここは」
「ようこそ。MII対策部隊、【幻想屋】へ」
MII?幻想屋?
「訳がわからない。一体ここはなんなんだ?」
見渡すとまるで防空壕。
昔、修学旅行で見たことがある。そこによく似ていた。
大雑把に掘った穴。
ただ、広さは異常。
軽く大型バスが何十台も入る広さ。
ざっとここにいる人の数は三十人ぐらい。
だが、あまりにも基地と言うには雑だった。
機材やモニターは見たこともないものが多く並べられている。ここは司令室のようだ。
画面には日本の地図。そこにいろんなマークが付いている。自分がさっきまでいた県(多分ここは県外だと思う)にもなにやら赤いマークが付いている。
まるで空港の管制塔のようだ。
それぞれの仕事が忙しいのか、働くもの皆、こちらに見向きもしない。
素直に基地荒れようの感想を言うと、
「それはそうよ。スポンサーなんて付いてないしね」
女性は軽く大きな銃を振り回す。
形はスナイパーライフルに近い。だが、スナイプするにはあまりにも無骨で大型だ。
少し歩き、唯一扉が付いた(トイレを除いて)部屋に案内される。
そこには白衣を来た男性が、長い机のえらい人が座る位置にある椅子に座っている。
歳は、大体三十代だろうか。白衣を来ている人は不潔なイメージがあったのだが、この人はヒゲは無く、顔も美形。髪型は・・・止めよう、泣きたくなってきた。
そういえば、案内してくれた女性の年齢は、僕と似ていると思うほど、幼く感じる。
僕は、対面の椅子に座り、周りを見る。
黒服の男二人が白衣の男の後ろに銃を持って立っている。
壁にはびっしりと名前らしきものが彫られていた。
「さて、ここまで同行してもらってわるかったね。私がここの頭で、死骸 骸だ。よろしく」
結構イケボイス。さすが美形。
しかしなんて名前だ。親の顔が見てみたい。
さてさて、向こうが名前を言ってきたのだから、こちらも名乗らないとな。
「僕は藤見 達也です。助けていただいてありがとうございました」
深々とおじぎをする。
「!!!」
ガタッと骸さんが立ち上がった。
何かに驚いているらしい。
「ええっと・・・どうしました?」
よく見ると、黒服の人たちも呆然としている。
後ろの女性も口が空いている。これこれ、女の子がそんなに口を開けるものではありませんよ。
「もしや・・・君の父親の名は・・・」
「ああ、藤見 自切です」
「やはりな・・・。これは運命だな」
骸さんは座り、手を机の上で組んで、質問を投げかける。
「単刀直入に聞こう。自切博士はどこにいるんだ」
「いえ・・・知りません。よく、家を開ける人でして。何ヶ月も帰ってこないのはザラなんです」
「なら母親は?」
「そっちも同じです」
この人達、両親を探しているのか。なぜ?
「疑問に思うのも無理はない。君たちのことは大体知っている。君が【死なない体】ということもね」
「うっ」
「そして、君がM01と始めて遭遇した人物であることも知っている」
「?」
なんだそれ。
「隠さなくていい。知っていることを話してくれ」
話せと言われても・・・
「確かに、足をひねった時、あなた達が僕の側にいることがわかったから、助けてもらおうと思ってわざと動けない振りをしたし、MIIについても知らない振りをしたのも認める」
だが、
「そこから先は、俺は知らない。M01ってなんだ。ここはなんなんだ?」
骸は顔をしかめる。
「・・・まさか、覚えていないのか?あの事件を」
「事件?」
「始めてMIIが具現化された事件。俗に【下男事件】。世間では最初は人間が犯人だと思っていた。しかし、ある組織により、MIIの存在が公になり、そしてまたあのバケモノが出現しだした。ここまでは知っているな?」
「知ってる」
「その【下男事件】に出現したモノを、我々はM01と呼んでいる」
MはMIIのMだな。わかりやすい。
「そしてそれに最初に会い、倒した男が、君だ」
「・・・・へ?」
なん・・・だそれ。
「その事件以来、MIIの増殖は加速度的に上がり、バケモノの出現も多くなった。それに対応するため、私たちはこの組織【幻想屋】をつくった」
「ちょ・・・ちょっと待ってくれ」
静止をかける。
「俺があのバケモノを倒したって!?そんなことしてないぞ!」
「全て事実だ。そして達也。君にもこの組織に入ってもらいたい」
ようし、調子にノッテきやがったなこのやろう。
「待て待て!話を勝手に進めるな!俺は体が人と違うだけの一般人だ!あんた達のようなことは出来ない!」
「大丈夫。記憶ならこちらに蘇らせる心当たりがある。まずはそこにいこうじゃないか」
「おおおい!話聞けってぇの!」
無理矢理(骸に担がれて)変に明るい部屋に来た。
部屋の中は丸い空洞だが、そこには蚊ほどの四角いキューブが無数に漂っている。それは、虹色に変化しながらやがて形を変え、今度は丸くなった。
「・・・なんだよこれ」
達也は薄気味悪く感じ、尋ねる。
骸は達也を降ろしながら答える。
「これがMIIだ。ここには自切博士が開発したMII捕獲機が作用している。そのため、MIIが消えたり、漏れたりせず、ここに留まっているんだ」
オヤジめ・・・ここと繋がっているのか?
「そしてこのMIIは、君が倒れていた場所にあったものだ」
「何?」
「ここに入れば、何か思い出すと思うのだが・・・どうだ?」
・・・聞かれても、拒否はできないんだろうな。まぁ、ここで何も起きなければさっさと解放してくれるだろう。
「わかった。入るよ入りますよ」
達也は恐る恐る部屋に入る。
さして何も感じないが、なぜか・・・懐かしいくて、悲しくなる。
(なんなんだ、この気持ちは)
心が温まるような、凍りつくような。
不思議な気持ちになり、ついには、
「うっ」
倒れ込む。
「いい夢を。不死身君」
骸の声が微かに聞こえたかと思えば、意識はどこかに落ちていった。
そして、その女性と会うまで、そう時間はかからなかった。