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安楽死屋さん  作者: 桜美優和


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1/1

少年.1

いっその事死んで楽になってしまいたい。そう一度は思ったことがあるかもしれませんね。

ですが、人は大抵思いとどまります。怖いからです。苦しまずに死ぬ方法を考えている間に、生きる方法を考える時間が生まれてしまうからです。

死は救済なのでしょうか。

『安楽死いかがでしょうか』



…こんな紙貼ってあったっけ?

下校中、電柱に無造作に貼られているチラシが目に留まった。


やけに印象的なタイトルだ。思わず近付いてよく見てみると、下部に電話番号とメールアドレスが記載されている。


最近よくある闇バイトの広告なのだろうか?それともただのイタズラなのだろうか?


安楽死…か。

ちょうど生きるのにも疲れていたし、死ぬなら苦しまずに死にたいと思っていた。こんな意味の分からないものにも縋りたくなるくらいに。

電話するのは怖いので、とりあえずメールして見ることにした。




次の日、僕は心療内科へ向かった。もちろん安楽死しようと思っての行動だ。メールにここの住所が載っていて、いつでも来てください。との事だった。


何故心療内科で安楽死の話が出るのだろうか?安楽死という心の弱った人に付け入るようなタイトルで病人を釣り、心のケアをしようという魂胆なのだろうか?


僕はあまり乗り気ではなくなっていたが、連絡してしまった手前引けなくなっていた。話だけでも聞こうと思い、心療内科のドアを開けた。


「すみません、昨日連絡した清水なんですけど。」

「お待ちしておりました。こちらを記入して、少々お待ちください。」


受付を済ませ、名前を呼ばれるのを待つ。なんだか普通の病院に来たみたいだ。

病院に行く時は風邪や怪我を治すために行くだろう。僕は死にたがってるのにこんなところに来て…なんだか複雑で笑ってしまいそうになった。


呼ばれて奥の部屋へ行くと、そこで綺麗な女性が迎えてくれた。

「清水春瑠さんですね。お待ちしておりました。こちらへおかけください。」

僕は指されたソファへ座る。診察室を思い浮かべていたが、普通の部屋のようだ。


「安楽死を希望ということでよろしかったでしょうか?」

「…えっ?あぁはい」

突然切り出された話題に少しびっくりしてしまった。本当なんだ。生半可な返事を返してしまったな。


「1ヶ月後に施術いたします。こちらは契約書ですね。そして同意書です。契約書は今記入していただきます。同意書は施術する直前に私の目の前で記入していただきます。」


トントン拍子に話が進んでいく、思っていたよりも事務的な対応で混乱する。


「ちょっと待ってください。これは本当に安楽死が行われるっていうことですよね?いいんですか?ほんとに?」

「えぇ。ただこちらにも準備がありますし、1ヶ月は待っていただきます。それに患者様にも身辺整理や心の準備も必要だと思いますので。」


今から1ヶ月後に僕は死ぬということなんだろう。こんなにも実感がわかないものなのか。


「それはやめようと思ったらすぐにやめれるんですか?」

「はい。1週間毎に定期検診を行っておりまして、そこでいつでも辞退することが可能です。今日から1ヶ月間いつでも辞退できますよ。」


なるほど、あのチラシに書いてあったことは本当らしい。今から1ヶ月間、この人生に耐えたら僕は死ねるんだ。


僕は契約書にサインして足早に家に帰った。

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