表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

■第9話「詰みの手前」

 勝負は、終わる直前が一番美しい。


 勝つか、負けるか。


 その境界が最も曖昧で、最も不確かな瞬間。


 だからこそ。


 その一手に、全てが乗る。



 レギオン本部。


 室内の空気は、明らかに変わっていた。


「……ここまで来た」


 如月玲が小さく言う。


 画面には、複数のルートが収束した結果が表示されている。


 分岐していたはずの情報。


 バラバラだった動き。


 それらが、一本の線に繋がっている。


「確定だね」


 キーボードを叩きながら続ける。


「この三人、完全に同一計画内」


 氷室が頷く。


「拡散、接触、心理誘導、全てが一致している」


「つまり」


 堂島が言う。


「最初から全部仕組まれてた」


「そういうこと」


 如月は視線を上げる。


「しかも」


 画面を切り替える。


「ここ」


 一つのログを指す。


「このタイミング」


 鷹宮が近づく。


「……なんだ」


「操作されてる」


 如月は言い切る。


「外部から、明確に」


 沈黙。


 そして。


「位置は?」


 鷹宮が問う。


「ほぼ特定できる」


 その言葉で、空気が張り詰める。


「行けるのか」


「行ける」


 如月は頷く。


「あと少しで、直接触れる」



 同時刻。


 雨宮澪は、モニターを見つめながら静かに笑っていた。


「来たね」


 レギオンの動き。


 解析の進行。


 到達点。


「ここまで来るとは思ってたけど」


 少しだけ目を細める。


「やっぱり優秀」


 素直な感想だった。


 だが。


「でも」


 キーボードを叩く。


 ログを切り替える。


 データを上書きする。


「そこは“ゴール”じゃない」


 わざと残したルート。


 わざと繋がるようにした情報。


「ちゃんと辿ってきてる」


 そして。


「ちゃんと間違えてる」



 如月玲の画面に、新たな接続が表示される。


「来た」


 小さく言う。


 ついに、外部との接点。


 リアルタイムで動いている。


「ここだ」


 アクセスを試みる。


 侵入。


 解析。


 接続。


 そして。


「……捕まえた」


 画面に、一つの端末が浮かび上がる。


 完全ではない。


 だが。


 確実に、相手の“手”に触れている。


「位置、割り出せる?」


 堂島が言う。


「今やってる」


 如月は集中する。


 数秒。


 数十秒。


 そして。


「……出た」


 座標が表示される。


「ここ」


 具体的な場所。


 都内の一角。


「行くぞ」


 堂島が立ち上がる。


 だが。


「待て」


 鷹宮が制止する。


「罠の可能性は」


 氷室が即座に答える。


「高い」


「でも」


 堂島が言う。


「ここで行かない理由あるか?」


 正しい。


 だからこそ。


 危険だ。


 鷹宮は一瞬だけ考える。


 そして。


「……行く」


 静かに決断する。


「だが、慎重にだ」



 黒鉄蓮は、その動きを把握していた。


「動いたな」


 小さく呟く。


 レギオンが、ついに踏み込んだ。


 位置も、ルートも。


 ほぼ掴まれている。


 だが。


「問題ない」


 視線を落とす。


 自分の端末。


 そこに表示されているのは、別のルート。


「そこは、入口だ」


 本体ではない。


 核心でもない。


 あくまで。


「見せてる場所」



 神代昴は、静かにその全てを見ていた。


「いい」


 小さく言う。


 ここまで来た。


 レギオンは、正解に辿り着いた。


 だが。


「まだ、浅い」


 画面を切り替える。


 複数の層。


 複数の構造。


「見えているのは一部」


 そして。


「その一部すら、設計済み」


 目を閉じる。


 数秒。


 そして開く。


「終わらせるか」



 時任紗那は、静かにログを確認していた。


「……来た」


 小さく呟く。


 レギオンの到達。


 予定通り。


 むしろ理想的なタイミング。


「ここから」


 次の分岐。


 最終段階。


「全部、繋がる」


 指が動く。


 最後の入力。



 現場。


 堂島と数名の捜査官が、指定された場所に到着する。


「ここか」


 静かな建物。


 外見に異常はない。


 だが。


「確かに、ここだ」


 端末の表示を確認する。


「入るぞ」


 ドアを開ける。


 中に踏み込む。


 空間は、無機質だった。


 机。

 機材。

 そして。


「……誰もいない?」


 堂島が眉をひそめる。


 その瞬間。


 如月の声が通信に入る。


「待って、それ」


「どうした」


「違う」


 声が少しだけ強くなる。


「そこ、“終点”じゃない」


「は?」


「そこ、ただの中継地点」


 その一言で、全てが変わる。



 同時に。


 如月の画面が、大きく変化する。


「……え」


 目を見開く。


 さっきまで繋がっていたルートが、全て。


 消える。


「嘘でしょ」


 ログが途切れる。


 接続が切断される。


 痕跡が消える。


「逃げた?」


 違う。


 違う。


 これは。


「最初から……」


 気づいた瞬間。


 言葉が止まる。



 神代昴は、静かに呟いた。


「詰みだ」



 レギオンは、確かに辿り着いた。


 正しいルートを。


 正しい結論に。


 だが。


 それは。


 最初から用意された“正解”だった。


 そして。


 本当の答えは。


 まだ、どこにも見えていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ