第37話 いつの間にか凄いことになってた
俺は何気なく娘たちのステータスをオープンした。我が子の成長を見守りたい親心だろうか。
いや、それだけじゃない。
気がかりなことがあったのだ。
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リゼット Lv81
種族:人族
職業:聖女
スキル
神の代行者
神聖魔法Ⅱ
対魔族特効
生命力回復
広範囲生命力回復
状態異常回復
解呪
神聖光
神聖光線
魑魅魍魎滅殺の歌声
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ん!?
リゼットが聖女に覚醒しているぞ!
この前、パーティー編成をした時に気になってたけど、あれは見間違いじゃなかったんだ。
続いて俺はメテオラに視線を移す。
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メテオラ Lv90
種族:ハーフ魔族
職業:魔王
スキル
魔王の根源(覚醒)
対神聖特効
氷の加護
魔の絶剣
氷槍
猛吹雪
千の氷槍
魔王権限
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や、やっぱり!
俺の娘が魔王になってしまった!
これヤバくないか? 王国にバレないようにしないと。
続いてエステルに。
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エステル Lv96
種族:ハーフエルフ
職業:大魔法使い
スキル
無詠唱魔法
二重魔法
魔法効果付与
電撃
雷槍
龍雷撃
神罰の雷
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エステルがめちゃくちゃ成長してる!
この強さ……七魔大公に引けを取らないような?
そしてシャルだ。
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シャル Lv89
種族:ハーフ獣人族
職業:超重戦士
スキル
戦槌の加護Ⅱ
肉体強化大
時間加速Ⅱ
超重力打撃
無敵の英雄
狂戦士
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とんでもなく強くなってる!
これって、もう獣王より強いのでは?
「どうかしましたか、お父さん?」
俺がボーっとしていたからなのか、エステルが心配そうな顔をしている。
「な、何でもないよ。娘たちの成長を見守っていただけだぞ」
「そうでしたか」
そう言ってエステルは良い笑顔になる。
出会ったばかりの頃は、人の顔色を窺ったり、自己肯定感が低くオドオドしていたけど、最近は笑顔も増えて元気になってきた。
端正な顔立ちと綺麗な金髪で元から可愛かったけど、最近は更に美しさに磨きがかかってきたような。
「エステルは可愛いな」
「ふえっ♡」
エステルの頭を撫でてやると、彼女はくすぐったそうな顔になった。
「お父さん、恥ずかしいですよ。えへへ♡」
「あー! シャルもシャルも!」
それを見たシャルも駆け寄ってきた。
同じくシャルの頭も撫でてやる。
「シャル、また身長が伸びたな」
「わふぅ♡ シャル大きくなるの」
と、こんな風に娘を可愛がっていると、他の娘が嫉妬するのもオヤクソクだ。
プク顔になったリゼットとメテオラが、俺に詰め寄る。
「ちょっとお父様! お二人だけズルいですわ!」
「こら、わらわも褒めぬか!」
「分かった分かった。順番だぞ」
次から次へと娘がじゃれてきて忙しい。こんな日常も良いものだと実感する。
強くなったとしても、俺の娘には変わりない。俺が愛情をもって育てないとな。
「よし、武器も強化されたことだし、今日もダンジョンに行くとするか」
俺は娘たちパーティーメンバーとダンジョンにもぐった。
◆ ◇ ◆
「今日も凄かったな」
娘たちが覚醒したからなのか、武器がレジェンダリー装備になったからなのか、俺たちパーティーの進撃は止まる所を知らない。
今日は地下10階まで楽勝で進んでしまった。
この分では最下層を目指すのも夢じゃないぞ。
「じゃあヴィクトリア、今日も魔石の換金を頼めるか?」
俺の後ろで熱い視線を送っているヴィクトリアに声を掛けた。
「任せて! もうっ、レインったら♡ 私のプロポーズは受け入れてくれないのに、人を道具のようにこき使うんだから♡」
「おい、人聞きの悪いことを言うなよ」
彼女には分け前の金貨も渡している。こき使ってはいないぞ。
「娘の前でイチャイチャとかできねえだろ」
「あら、夫婦が愛し合うのは、子供にも良い影響を与えるのよ♡」
「わたくしは許しませんことよ!」
リゼットが俺とヴィクトリアの間に入ってきた。
どうも最近はリゼットの愛情表現が冗談じゃない気がする。俺が他の女と話していると、尋常じゃないヤンデレオーラを放出しているのだが。
「リゼット、親子は結婚できないんだぞ」
「愛があれば乗り越えられますわ」
「乗り越えちゃダメ」
くっ、リゼットって見た目は清楚で優しそうなのに、その実どこか威圧感というか迫力が凄いんだよな。
これも聖女の威厳なのか?
ダンジョンからの帰り道、王都と湖畔への分岐に差し掛かったところだった。
何やら冒険者が湖畔方面に行き来しているのが見えた。
「何だあれは? 人が俺たちの家の方向に……」
急いで湖畔へと向かう。道が舗装整備され両脇には花壇が並べられていた。
いつ整備したんだろ?
林を抜けると、そこは小さな街ができていた。
「な、なんじゃこりゃあ!」
俺たちの家の手前には、武器屋とアイテム屋と食堂が立ち並んでいた。
店は繁盛しているのか、何人もの冒険者が出入りしている。
「一体全体どうなってやがる! たった半日で店が建っただと!?」
試しに武器屋を覗いてみると、質の高そうな剣や杖が並んでいた。
量産品のようだが、どれも機能性に優れた装備に見える。
「これは……」
「いらっしゃいませ。あ、レイン様。レイン様は無料で構いません」
店の中には、アハツェーンみたいに無表情の自動人形が店員をやっていた。
その額には『12』と数字が書かれている。
「申し遅れました。私は偉大なるマスターモグミ様の僕。名をツヴェルフと申します」
店員はモグミ式高知能自立防衛型自動人形No.12だった。
「えっと、ここで何をやっているんだ?」
「はい、モグミ様に命じられ、ここダンジョン近くの湖畔でお店をやっております」
もう何も驚かないと決めていたはずなのに、事態は俺の想像を超えてきたのだが。
「レイン様」
いつの間にか俺の横に立っていたアハツェーンが、それぞれの店を指差す。
「他にもございます。アイテム屋を任されているのがNo.13のドライツェーン。食堂はNo.14のフィアツェーンでございます」
「そ、そうなんだ……」
店員がモグミの作ったゴーレムなのも驚いたが、俺が聞きたいのは半日で街を作ったことなのだが。
どうなってやがる。
「レインさぁ~ん! レインさぁ~ん!」
何やら懐かしい声が聞こえてきて顔を上げると、ギルド受付嬢のサーシャさんが手を振っていた。
「えっ、何でサーシャさんが?」
「レインさん、酷いじゃないですかぁ! 手紙をくれるって言ったのに」
そういえばそんな話をしたような。
「すみません、サーシャさん。落ち着いてから書こうと思っていたのですが、色々あり過ぎて……」
「私ずっと待ってたんですよ。そしたら、王都の目の前に住んでいるだなんて」
それは俺もビックリだよ。
てっきり他の街に移住しようと思っていたのに、まさかダンジョンの近くに住むだなんて。
「それで、何でサーシャさんが?」
「私、ここにギルド出張所を出すことになりました」
「はああ!?」
ふと立ち並ぶ商店に目を向けると、その中にギルドの建物があった。ご丁寧に『王都西ギルド、ダンジョン前出張所』と看板まである。
「先日、額に『15』と書かれた自動人形がギルドを訪ねてきまして、資金を提供するからダンジョン前に出張所を作らないかって。開業資金は出してもらえるし、ダンジョン前なら利便性も高いということで決まったんです」
もう訳が分からない。
モグミはここに街を造るつもりなのか?
「レイン様、No.15は交渉担当フェンフツェーンでございます」
「へぇ……」
わざわざアハツェーンが説明してくれるが、もう俺の頭はオーバーフローだ。
「さすがレインさんですね!」
目を輝かせたサーシャさが、俺に熱い視線を送る。
「前から凄い人だと思ってましたが、まさか街まで造っちゃうだなんて。もう偉人レベルですよ! 尊敬します!」
「そ、そうなの? 俺はよく知らねえけど……」
造ったのは俺じゃないのに。どうしてこうなった。
こうして、俺たちの家の周りに街ができた。
俺の行く先々で、勝手に金や物が手に入るようになっているのだが。




