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種馬スキルの悪役貴族に転生した俺、断罪を回避し娘たちと自由に生きることにした。  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売


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第36話 もう一人いる

 怪しい家。高性能なゴーレム。消えた料理。謎だらけだ。


「お父様、これは事件ですわよ!」


 リゼットが名探偵みたいなポーズをしている。それやりたいだけだろ。


「ふむ、事件といったら温泉じゃな」


 腕を組んだメテオラが、一人で頷いている。サスペンスドラマでも観たように。『混浴露天風呂殺人事件、若女将は見た』みたいな感じだ。


「お腹空いたの。いただきまーす」


 シャルは気にしていない。というか、もう食べている。


「お父さん、この家にもう一人いますよ」


 青い顔をしたエステルがつぶやいた。こちらはホラー映画を観たようなリアクションだ。


「うーん、やっぱりエステルが言ったように、もう一人いる可能性があるな」


 俺はアハツェーンに視線を送る。


「アハツェーン、この家には他に誰か住んでるのか?」

「禁則事項です」


 マスターにとって都合の悪いことは答えないらしい。


 ざっと家を確認したが、間取りは8LDKといったところだ。このリビングとダイニング・キッチンに、俺の部屋、子供部屋が五つ、客間が一つ、使用人室が一つ、風呂とトイレが一つずつ。

 その内、子供部屋の一つが鍵がかかり使用不可となっていた。


「怪しい。開かずの部屋が怪しい」

「禁則事項です」


 相変わらずアハツェーンは表情が読めない。

 だが、王都を追放された俺たちに家を用意してくれたり、護衛用ゴーレムを貸し与えてくれているのだ。味方には違いないだろう。


 俺は、何となく心当たりのある件を聞いてみることにした。


「アハツェーン、そのマスターは俺たちの味方なんだな」

「はい、レイン様の味方であり、その関係者に敵対することはございません」

「マスターはドワーフなのか?」

「はい、偉大なるマスターモグミ様は、ドワーフでもあり人族の血もひいております」

「もしかして、そのモグミは天帝の種共有協定で生まれた子なのか?」

「禁則事項です」


 やはりそうか。マスターについては話すのに、生まれや所在は答えない。

 天帝の種共有協定は五種族によって取り決められた。人族、エルフ族、獣人族、魔族、そしてドワーフ族。もし、俺の種によって五種族の子供が生まれたのなら、ドワーフ族にも子供がいるはずだ。

 これは俺の子と見てもよいだろう。

 ただ、訳があって俺の前には出られないということか。


 その子が俺たちに味方するのなら、放っておいても構わないはずだ。


「よし、この件は一旦終了だ。食事にしよう」

「お父様、名探偵の推理はよろしいのですか?」

「温泉じゃぞ」

「名探偵ごっこは今度にしよう」


 リゼットとメテオラは大人っぽく見えるのに、意外と子供っぽくて可愛いところがあるな。こういうところは年相応というべきか。


「ただいまー! レイン、魔石を換金してきたわよ!」


 ちょうどヴィクトリアが戻ってきた。その手には、大量の金貨を抱えている。


「凄い量だな」

「一回のクエストでこんなに稼げるなんて凄いわ。さすが旦那様ね♡」


 科を作りながらウインクをするヴィクトリア。それ、何のアピールだよ。

 そもそも俺は何もしていないのだが。これはヴィクトリアの幸運スキルと、娘たちのモンスター大量討伐の成果だ。


 ヴィクトリアに分け前を渡し、残りをアイテムボックスに収納した。この分だと大富豪も夢じゃない。


「うふふ♡ 今日の夕食も美味しそうね♡ あら、私のは?」


 ヴィクトリアがダイニングテーブルを眺めながらウロウロしている。


「すまん、ヴィクトリア。お前の夕食が無い」

「そんなぁああ! 私、頑張ったのにぃ! ご褒美が食事抜きだなんてあんまりよぉおお!」


 ヴィクトリアは綺麗な銀髪を振り乱す。

 わざとじゃないんだ。一人分消えてしまったから。


「えぐっ、えぐっ……レインのバカ、私を追い出そうとしているのね」

「そんな酷いことはしねえって」

「はっ、もしかして、調教? きっとこうね、『お前の夕食は残飯で十分だ』とか『お前のエサはこれだ』とか言って、床にゴミをぶちまけて」

「だからそんな酷いことはしねえって」


 何だよそのドM仕草は。


「ヴィクトリア様、今ご用意しますから」


 慌ててリズさんが食器を運んできて事なきを得た。

 これ以上娘の前で変態プレイを見せられると教育に悪いからな。



 ◆ ◇ ◆



 食事を終えると、シャルがモーニングスターを見せにやって来た。


「パパ、これ曲がっちゃったの」


 シャルのモーニングスターは、柄の部分が曲がっていた。頑丈な作りのはずだが、シャルのパワーに耐えられなかったのだろうか。


「どれどれ、って重っ!」


 シャルから受け取ったものの、あまりの重さで落としそうになった。

 この特注性モーニングスターは、大人の体重より重い代物だったな。レベルが上がった俺でも持て余しそうな代物だ。


「うーん、付け根が曲がってるな。金属疲労だろうか? このままだと破断しそうだぞ」


 シャルの超重力打撃グラビティインパクトに耐えられる武器となると、通常の物では無理だろうな。特別な素材で鍛えたレア装備でないと。


「ん? レア装備……」


 俺は、あることを思い出しアハツェーンを見つめる。


「何でございましょう、レイン様」

「アハツェーン、モグミは錬金術師だよな?」

「はい、偉大なるマスターは天才錬金術師でございます」

「なら、この武器を鍛え直すのは可能か?」


 俺がモーニングスターを指差すと、アハツェーンは『待ってました』といった感じの顔をした。無表情なので気がしただけだが。


「お任せください。マスターモグミ様にかかれば、通常装備をレジェンド装備にすることも可能でございます」

「それは有難い」


 ドサドサドサ!


 俺はアイテムボックスからドラゴンの鱗と、先日ゲットしたサラマンダーのツノを取り出した。


「このレア素材も使えたら使ってくれ」

「はい、承知いたしました。でしたら、皆様の武器も強化いたしましょうか?」


 アハツェーンの言葉で思い出した。そろそろ装備を買い替えようと思っていたことに。

 エステルの杖も、最初に持っていた簡単な物だし、俺の剣も市販品だ。


「そうだな、全員分鍛えてもらえるか?」

「承知いたしました」


 こうして、俺たちは武器をリビングに置き、床に就くことになった。



 ◆ ◇ ◆



 翌朝、目を覚ました俺がリビングに入ると、ピカピカに輝くレジェンダリー武器が並んでいた。


「なっ! なんだこりゃああ!」


 驚く俺に、リビングに控えていたアハツェーンが、無表情のまま平然と答える。


「レイン様、武器の錬金が完了いたしました。ご覧ください」


 そのままアハツェーンが説明に入る。


【レイン専用武器・天啓の剣ソードレボリューション

【エステル専用武器・天地を統べる者(アースルーラー)

【シャル専用武器・流星式超硬竜槌鉾メテオドラゴンスター

【リゼット専用武器・地母神(ジェネシス )の創生杖( オブ リーファ)

【メテオラ専用武器・致死浸食剣デスブリンガー

【ヴィクトリア専用武器・新妻の剣(サンダーレイピア)


「以上になります」

「待て待て待て待て! 以上じゃねーよ! 大事件だよ!」


 一夜にして武器が伝説級になってしまった。

 あと、何だよ新妻の剣って! 稲妻の剣の間違いじゃないのか!?


「こんなレジェンダリー装備、ダンジョン最下層の宝箱からしかゲットできないレベルだろ。いや、それ以上か」


 もし購入するとしたら、一つで金貨10万枚はするはずだ。


「あっ、私の剣も強化してくれたのね♡ ありがとう旦那様ぁ♡」


 さっそくヴィクトリアが剣を眺めている。

 強化したのは俺じゃないけどな。


 俺はさり気なくステータスオープンしてみた。


 ――――――――――――――――

 ヴィクトリア Lv54

 種族:人族

 職業:レインの愛人

 スキル

 剣の加護

 腕力強化

 剣筋加速

 幸運Ⅰ

 ドMプレイ

 新妻プレイ

 ――――――――――――――――


 どこからツッコんでいいのやら。何で職業が俺の愛人だよ! 新妻プレイとかいう変なスキルも増えてるし!

 実はヴィクトリアって、とんでもないヒロインなのでは?


 その流れで視線を娘たちに移し、同じくステータスオープンした。

 そして俺は驚愕の事実を知ることになる。



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