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種馬スキルの悪役貴族に転生した俺、断罪を回避し娘たちと自由に生きることにした。  作者: みなもと十華@書籍&コミック発売中


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第23話 雇ってくださいませ

「レインお坊ちゃま、私をメイドとして雇ってくださいませ」


 リズさんは、俺に頭を下げてそう懇願した。


「あの、俺はもう貴族じゃないですよ。メイドを雇えるような身分じゃないので」

「給金は安くても構いません! 何なら出世払いでも!」

「えええ……」


 困ったな。何か事情があるのかもしれないけど。

 てか、お坊ちゃまは恥ずかしいからやめてくれ。もう子供じゃないんだから。


「リズさん、結婚したんですよね? どうして」

「それなら離婚しました」

「はあ?」

「あの男……他に愛人をつくってたんです」


 リズさん……原作ゲームでも不幸ヒロインだったけど、この世界でも不幸体質なのか?


「ああ、こんなバツイチ36歳女なんて、誰も貰ってくれないのよ」

「そんな、リズさんは若くて素敵ですよ。自信を持ってください」

「でしたら、誰かにメイドとして貰って欲しいです。チラッ、チラッ」


 上目遣いになったリズさんが、俺をチラチラ見ている。物欲しそうな顔で。


「そんな顔してもダメですよ」

「ああ、お坊ちゃまに打たれたお尻を思い出すと……」

「ちょっと、何を言い出してるんですか!」

「このメス豚ぁって罵られて♡ 私は辱めを♡」

「それは子供の頃の話ですよね! 子供の悪戯ですよね!」


 待て待て待て! 娘の前で変な話をするんじゃねえ! それは前世の記憶が戻る前の話だ! 悪役貴族のクソガキだった頃のな!

 誤解されちゃうだろ!


「ジィイイイイイイ――」


 案の定、リゼットがジト目で俺を睨んでいる。


「リゼット、これは違うんだぞ」

「お父様、他の女なんて許しませんわ」


 リゼットの目は殺気に満ちている。ヤンデレさんかな?


「違うんだぞ。子供の頃の話なんだ」

「お父様、浮気は極刑かしら? 事と次第によっては容赦しませんわよ」

「ひいぃいい!」


 リゼットがヤンデレ目で俺に迫る。まだ小さいのに凄い迫力だ。


「待て待て!」


 俺は他の娘に助けを求める。


「エステル、お前なら分かってくれるよな?」

「お父さんのエッチ。ぷいっ」


 ガァアアアアーン!

 エステルが怒ってるだと!


「シャルもお尻ペンペンするの! わふっ」


 シャルはよく分かってないみたいだ。ちょっと安心した。


「と、とにかく。リズさん、俺は娘が一番大切なんです。ご主人様なら他をあたってください」


 そう言って、俺は娘たちを抱き寄せる。


「お父様♡」

「お父さん♡」

「パパぁ♡」


 娘たちの機嫌も直ったのか、俺に抱きついて甘え始めた。これで解決かな。

 しかしリズさんは、娘たちを真顔で眺めてから、ポンと手を叩いた。


「あっ、お坊ちゃまの娘さんでしたか? 可愛らしいですね」

「そりゃどうも。未婚の父なんですけどね」

「そうでしたの! でしたら、やっぱりメイドが必要ですわよね」

「そうなの?」

「そうですよ! 女性には女性にしか分からないこともあるのですよ」


 そうだったのか! 詳しく知らないけど、確かに女子には女子の事情があるよな。

 娘と暮らすのを簡単に考えてたけど、やっぱりメイドがいた方が良いのか?


「お嬢様方、私はお坊ちゃま……レイン様の専属メイドのリズと申します。以後お見知りおきを」


 ちょっと目を離した隙に、リズが娘たちに挨拶をしていた。膝を曲げ、両手でスカートを広げ、正式な挨拶カーテシーだ。


 これにリゼットが噛み付いた。まるで彼氏の女友達を疑うように。


「お父様とは何も無いのですわよね?」

「何もありません。主と情を通じるなどメイド失格です」

「なら良いのですが……。何かあったら許しませんわよ」


 リゼットが浮気を疑う妻みたくなってる。彼女じゃなく妻だった。

 これじゃ本当に俺の嫁みたいだぞ。


「お坊ちゃま! ほら、お嬢様方も許してくれるようですよ。メイドにしてくださいませ」

「ダメ」

「そんなぁああああぁ!」


 号泣したリスさんが俺に縋り付いてきた。


「うわぁああああぁん! 聞いてください! 結婚してからも夫は外泊が多く、ろくに家に帰らなかったんですよ! その頃から私は家で一人寂しく自分を慰めるばかり」

「娘の前でそういう話はちょっと……」

「きっとあの頃から浮気してたんだわ! 私の結婚生活は偽りだったのよ! きぃいいっ!」

「お、落ち着きましょう」

「あれから十数年、離婚を突き付けた私は、家を飛び出しました! 行く当てもないまま」


 唐突な自分語りはやめてくれ!

 どうしよう。周囲の視線が。まるで俺が泣かしてるみたいじゃないか。


「女一人で野宿するのは危険なんですよぉ! 昨夜だって、野盗に襲われそうになり、必死に逃げて事なきを得たんですぅ! 部屋を探そうにも、仕事が見つからなくて先立つものがぁああ! およよぉ!」


 大泣きしたリズさんが俺の脚に縋り付いて離さない。私を捨てないでと嘆くみたいに。


「あああ! 分かりました! 分かりましたから!」

「それでは?」

「はい、メイドにします。だから泣かないでください」


 俺は受け入れてしまった。

 これ以上リズさんに往来で泣かれたら、また俺がNTR男だとデマが広がってしまう。


「でも俺って、教会や聖騎士に睨まれてるから危険かもしれませんよ。あと、お坊ちゃまは止めてください」

「構いませんよ。お坊ちゃま……レイン様は昔から敵が多いじゃありませんか」


 おい、俺ってそんななのか?


「はぁ、助かりました。今夜はベッドで眠れますね」

「うちベッド無いんで床で寝てください」

「ちょっと、あんまりですよぉ!」


 ベッドが足りないから不動産屋に来たのだが。更に人が増えてどうすんだ。


「家が手狭なので引っ越そうとしてたんですよ」

「それなら私に任せてください。家の管理なら得意分野です」

「お、おう」



 こうして、リズさんの手助けもあり、新居選びは順調に進んでいった。

 不動産屋との交渉もバッチリだ。


「店主、この仲介手数料二か月分というのは法外ではありませんか? あと、この清掃消毒安心サポート10ゴールドってのも不要ですわよね」

「こりゃまいったな。奥さん、中々やるね」


 リズさんの交渉テクに、不動産屋のオヤジもお手上げだ。最初は俺を素人だと思ってボッタくろうとしていたようだが、リズさんが全て見破ってしまった。

 伊達にあの没落下級貴族の家を仕切っていただけはある。クソ両親が散財した時点で、他のメイドは逃げ出しちゃったけど、リズさんだけ残っていたからな。


 でも『奥さん』じゃねえから!

 勝手に俺の嫁にするんじゃねえ! リゼットがジト目で睨んでいるのだが!


「ジィイイイイッ!」

「リゼット、ちょっと落ち着こうな」

「正妻はわたくしですわ♡」

「お前は娘だぞ」


 そんなこんなで、予定より早く引っ越しが決まった。



 ◆ ◇ ◆



 ガラガラガラガラ――


 俺たちは皆で家財道具を荷車に乗せ、新居へと引っ越し作業をしていた。

 力持ちのシャルが頑張ってくれたので、スムーズに進んだのだ。


「ありがとうな、シャル」

「わふぅ、シャル力持ちだから任せて」


 一緒に荷車を引いているシャルを褒めると、彼女はくすぐったそうな顔で微笑んだ。

 出会った頃は棒きれのように細かった手足も、今はムチムチと肉付きが良い。もう立派な女戦士みたいだ。


 このまま娘たちが健やかに育ってくれれば良いのだがな。


 ザザッ!


 その時、物陰から数人の男が飛び出してきた。

 白い神官ローブ姿をしている。アモリス聖教会の者か。


「レイン・スタッド! 貴様ら、何処へ行くつもりだ!?」

「まさか、逃げるつもりじゃないだろうな?」


 その男たちは、俺の前に立ち塞がった。


 おいおい、俺の家を監視していたのかよ。ご苦労なこったな。

 男たちの姿を見たリゼットが俺の後ろに隠れた。


「お父様」

「大丈夫だ。俺に任せろ」


 リゼットの肩を抱いて落ち着かせると、俺は一歩前に出た。


「何しに来やがった! 大司教ギムネムの差し金か? それともジャスティンの刺客か?」

「「ひいぃいいいいっ!」」


 俺が睨みを聞かせたら、男たちは面白いように震え始めた。

 あの聖騎士団長ジャスティンをボコったのを見せられたらそうなるか。


「俺に用があるなら相手するぜ!」

「い、良い気になるなよ、レイン・スタッド!」

「アモリス聖教会に逆らって、ただで済むと思うなよ!」


 負け惜しみを言いながら、奴らは逃げていった。

 面倒くせえな。


 ゾクッ!


 ん? 何だ? 凄い殺気のようなものを感じたけど!? 今、別の奴から見られていたような?

 どことなく七魔大公ラプラスと似ていた気がする。膨大な魔力を持つ強者のような存在感だ。


「どうかしましたか、お父さん」


 逃げていく男たちとは別の方を見ていた俺に、エステルが心配そうな顔を向けた。


「大丈夫だ。何でもない」


 俺はエステルの綺麗な金色の髪を撫でる。安心させるように。

 そうだ。俺は娘を守らねば。例え、どんな敵が現れようとも。



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姉喰い勇者と貞操逆転帝国のお姉ちゃん!

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ブレイブ文庫 第1巻
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