地球最後の日、彼女は「自転車で2人乗りがしたい」と言い出した
なろうラジオ大賞7参加作品です。
「自転車で2人乗りがしたいの」
「地球最後の日に学校まで呼び出した理由がそれなの?」
「うん!」
藍は地球最後の日には似つかわしくない、満面の笑みで応えた。
明日、避けようのない巨大隕石が地球に衝突するらしい。
人類が一人でも生き残っている確率は0.00007%だそう。
「なんかこう……もっとやることあるでしょ? 一応最後の日なんだよ、今日」
「えー、じゃあ悠君が考えてよ」
「そう言われると……」
「じゃ! やろうよ、二人乗り! もちろん私が後ろで」
こんな風に言われると、僕も断れない。
「分かった。しよう」
「えへへ、やった」
藍は小さくガッツポーズを作った後、僕の自転車の後ろにちょこんと座った。
「二人乗りなんて初めてだから上手くできないかも」
「大丈夫。少し練習しよっか」
「危ないから、しっかり捕まってて」
「うん」
メダルを踏み込むと、少し進んだところでバランスを崩してしまう。
「おっと」
「うわ」
うーむ。意外と難しい。
「藍ちゃん、これできる気がしないんだけど」
「悠君なら、大丈夫! 時間はまだたっぷりあるから」
「今日1日を全部二人乗りの練習に費やすつもり?」
「それは悠くん次第だね」
にはは、と藍は笑顔を浮かべる。
当然、学校には誰もいない。
あちこちには『緊急避難案内』の文字が貼られているが、もはや誰も見る人はいない。
練習を始めてから1時間ほどで、ある程度漕げるようになった。
「で、どっか行きたいところあるの?」
「うん。とりあえずあっちの方に進もっか」
藍の指示通り自転車を走り出す。
「私たち、明日死んじゃうんだよね」
「そうだな」
街はとても静かだった。
藍が僕の背中に体をあずける。
「悠君、付き合ってくれてありがとね」
「いいよ、別に」
特別したいことなんてなかったし。
藍と過ごせれば、僕はそれでよかった。
「じゃあこのまま、あの坂道をブレーキ無しで思いっきり下ろう!」
「え、本気?」
僕の肩に添えられた手にぐっと力がこめられる。
今日で最後だ。僕は覚悟を決める。
「じゃあ、行くよ」
「うん!」
メダルを漕ぐ足にグッと力を込めた。
一気に速度が上昇する。
「ーー」
「え?」
風を切る音がうるさくて聞こえない。
「ずっと、ずーと大好きだよー」
「だから、聞こえないって」
そんな中、彼女はたっぷりと空気を吸ってから、街全体に響き渡るような大声で叫ぶのだった。
「I、LOVE、YOUーーー」
地球最後。
僕たちは、そんな日には似つかわしくない、幸せな顔で笑っていた。
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