表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

06

「あり得ないことなど信じられません」

「それは練習が足りないからだ」と王女は云った。

「私がお前くらいの歳の頃は毎日必ず三〇分ずつは練習したものだ。朝食までにあり得ないことを六つも信じるときもある」

──ルイス*キャロル『鏡の国アリス』より──。

国枝頼子は幾分か緊張していた。今日インタヴューするのはリヴァイアサンオンライン開発部っ主任兼ディレクターの神楽博士で在るからだ。

「今日、インタヴューさせて頂きます国枝頼子(くにえだよりこ)です。宜しくお願いします。

」「私も紹介が必要ですかな?」

「ま、まさか今世界で神楽(かぐら)博士のこと知らない人は居ないので必要ないかと」

国枝は慌てて云った。特に喧伝するでも無く急なリヴァイアサンオンラインの発表で世界初のvrmooVRMMOに世界は沸いた。次期に、数人の科学者関係者をアルファベータに招待した。く国枝もその関係者のひとりだ。博士はにっと笑った。神楽博士は偏屈で気難しい人柄だと聞いていたので内心ホッと撫で下ろした。国枝のしょたいめんの印象お茶目な好々爺と云う感じで収まった。

「博士は少し間を空けて云った。

「っで」

「どうでしたか?」

神楽博士はズレた眼鏡を直して聴尋ねた。

「ええそれは素晴らしい世界でした」國枝は思いだす。慥かにあれはもう一つの世界(異世界)だと思えた。視界は鮮明で現実と仮想世界の違いがわからないほどの現実感(リアリティー)。vrmooVRMMOを体験して國枝は思った。仮想現実の体験は時間を超越した感覚や、自分をより大きな物の一部であると云う気持を与えてくれる。自分が進化宇宙と云う永遠に展開するドラマの一部で在ると知れば自らの生命に限りがあると云う事実の恐ろしさも軽減出来る。コレに近い経験は──。国枝は一緒に仮想現実で知り合った化学者のひと言に烈しく同意する。

───まるで科学による一種の宗教的体験だ!

もう一つの異世界でしたか‥‥世界中を飛び回っている目の肥えた記者さんいそう云って貰えるのは有り難いことですじゃ、と博士は微笑んだ。

「我々の目的にもう一つの現実世界を創ると云う目的がある………」と博士は遠い目をして溜め息を吐いた。

「中々上手く行かんプロジェクトだった。どんなに精巧に世界を構築してもどこかで瑕疵(バグ)が出た。人や造形物に境界線が出始めた。我々の科学技術の限界かと思ったそれでも出来る限り解像度を上げてグラデーションを滑らかにした。が、失敗した境界線は無くなる何処(どこ)ろか酷くなった。「我々科学の限界化と諦めかけた。

「だが違った」

「逆だったのだ」

「解像度を下げたのですか?」

「その質問は当たってると言えるし間違っても言える」

「グラデーションを滑らかにするのを諦めたのだ」

「隣り合う色の指定が近すぎる(例: red 50%, blue 50%)と、そこが物理的な「境界」として認識され、くっきりとした線に見えることがあります」

「と考えれば当然のことじゃった。自然界にはコンピューターが創る均一に創られた色合などなど存在しない。存在しないものに脳は当惑したのだ。

「カラーバンディング: 似たような色への緩やかなグラデーション(例: 薄いグレーから白)の場合、ブラウザが表現できる色数(8bit)の限界で、色が連続せず「段階(バンド)()」になってしまい、線が入ったように見えます。

3. アンチエイリアスの問題: 描画エンジン(Skiaなど)がグラデーションの端をきれいに見せようとして計算した結果、意図しない線が生まれることがあります。1. 「狭義のマッハバンド」について説明します。これは本来のマッハバンドです。元祖です。グラデーション領域が平たんな領域と接したとき、その境界に見える明るい/または暗い帯です。実際には存在しない帯が見えるというヒトの知覚の効果であり、いわゆる錯視(optical illusion)と表現されます」

「実際には存在しない物を顕現化する為に脳は己れを騙すことを覚えた」

「どうして自分を騙さないといけないの?」

「そうしないといけないんだよ。自分の経験にサムプルが無い場合、」

「世界を構築出来ない」

「無意識にしろ脳は否定する、コレは怪しいぞ、と。

「信用出来ないとなったら世界が崩壊する、この信用は絶対に裏切れない。嘘でも意識を丸めこもうとするだろうね」

「それからもう一つ、脳が折角、苦心したものを意識が満足しなかった場合、意識は時に我が儘を云う」

「だから人は自分の見たい事しか観ないこともあるのかも知れないね───」

「脳へのアプローチは此処で逆転する」

「そう!だから、自然に近付けるために皮膚を滑らかにするよりも、毛孔(けあな)産毛(うぶげ)と云う不純物を付け足した」

「機械的なグラデーションより自然になった訳さ」

「脳は騙すことを辞めて境界線は無くなった。自然に見えるようになった」

「グラデーションを精密にするので無く、逆にするお話は大興味あるこお話有り難うございます、と国枝はお辞儀をして一日目のインタヴューは終了した。とくに最後の国枝は特に博士の最後の言葉が強烈に心に残った。


「だから人は自分の見たい事しか観ないこともあるのかも知れないね───」

「脳へのアプローチは此処で逆転する」

脳へのアプローチは逆転する

───『国枝頼子LO第一回レポート記録』───より。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ