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【絶対爽快】因果応報・ざまぁ短編集 ~見下された者たちの逆転劇~

『(長男)が専業主夫になりました。~「稼ぎも家事も妻以下」とウチの最強実母に論破された男の末路~』

作者: 品川太朗
掲載日:2025/11/17

はじめまして。本作をお読みいただき、ありがとうございます。


これは、時代錯誤な「長男教」の夫と、古い価値観の義母に追い詰められた妻が、最強の実母(元バリキャリ)を召喚し、理不尽をロジックで粉砕する物語です。


【!】序盤は、読者様のストレスが溜まる「理不尽(胸糞)展開」が続きます。【!】


ですが、最強の実母が登場してからは、一気に「スカッと」「論破」「ざまぁ」展開へと突き進みます。 溜めた分、カタルシスは大きくなるよう構成しました。


しばしの「溜め」にお付き合いいただき、最後は一緒にスカッとしていただければ幸いです。


それでは、本編をお楽しみください。

第1話『「長男だから」は魔法の言葉』


「ただいま」

リビングのドアが開き、夫の健一けんいちがいつもより少しだけ強張った顔で入ってくる。私はリモートワークを終え、慣れない手つきで作った夕食(といっても、ほとんどミールキットだ)をテーブルに並べているところだった。

「おかえりなさい。お疲れさま。ご飯、もうできるよ」

「あぁ。……友香ゆか、ちょっと大事な話がある」

健一の改まった口調に、私は「え?」と手を止める。まさか、仕事のトラブルだろうか。

「あのさ、来週の日曜。お袋がこっちに引っ越してくるから」

「……え?」

意味が分からなかった。こっちに?

「こっちって……どこに?」

「決まってるだろ。ウチだよ。このマンション」

健一は「何を当たり前のことを」とでも言いたげに、ネクタイを緩めながら言った。

「えっ、同居!? 待ってよ、私、何も聞いてない!」

「言う必要ないだろ。俺は長男なんだから。親の面倒見るのは当然だ」

「当然って……でも、いきなりすぎるよ! 二人で話し合うとか……!」

思わず声が大きくなる私に対し、健一はカバンをソファに乱暴に放り投げた。

その瞬間、彼の顔からいつもの穏やかさが消え、私が苦手な「見下す」ような目が光る。

「だから! これは『家』の問題なんだよ。俺が決めることだ」

「でも、私だっているのよ! この家は二人で……!」

「うるさいな! お前は仕事ばっかりで、ロクに家事もできてないだろ!」

図星だった。

ぐっ、と喉が詰まる。

私は確かに、ITエンジニアとして健一より稼いでいる。けれど、いわゆる「完璧な主婦業」からは程遠い。料理は苦手だし、掃除も週末にまとめてやる程度だ。

その「負い目」を、健一は正確に突いてくる。

「お袋が来れば、お前の負担も減るだろ? 家事だってちゃんと教えてもらえる。良かったじゃないか」

「そ、それは……」

違う。そういう問題じゃない。

そう言いたいのに、声が出ない。

私の稼ぎが健一より多いこと。彼がそのコンプレックスから、家庭内で「長男」という権威を振りかざしたがること。

それに気づいていたからこそ、私は彼のプライドを傷つけないよう、家事が苦手なことを「弱み」として受け入れてしまっていた。

「……もう、決まったことだから」

健一はそれだけ言うと、返事も聞かずに風呂場へ向かった。

リビングに残された私と、急速に冷めていく夕食。

(決まったことって……)

理不尽な決定が、「長男だから」というたった一言でまかり通る。

私の反論も、戸惑いも、一切を無視して。

そして、悪夢の「来週の日曜日」は、無情にもやってきた。

「友香! 荷物、玄関まで運んでくれ! お袋、疲れてるんだから!」

「……うん」

健一は、甲斐甲斐しく義母の荷物をリビングに運び入れている。義母――昭子あきこさんは、私を一瞥いちべつすると、品定めするような目でリビングを見回した。

「ふぅん。まぁ、狭いけど二人ならこんなものかしらね」

「はは、まぁね。でも、これからは三人だから、友香にもっと節約してもらわないとな!」

健一が私を見て笑う。

(私が稼いだお金も、この家のローンに入っているのに)

そんな言葉は、喉の奥に張り付いて出てこない。

義母・昭子さんは、私に向き直ると、ニコリともせずに言い放った。

「友香さん。あなたは仕事で忙しいそうだけど、健一は『うちの嫁は家事が苦手で』と随分心配していたわ。これからは私がしっかり『指導』してさしあげますから。覚悟なさってね」

それは、宣戦布告だった。

こうして、私の意志など存在しないかのように、義母との地獄のような同居生活が幕を開けた。


第2話『不良債権の上司(義母)は「経験則」がお好き』


義母との同居が始まって、数日。

ただでさえ家事が苦手な私は、リビングのソファに陣取る「監視者(義母)」の視線で、精神をすり減らしていた。

(……ミールキットの野菜、これでいいんだよね? レシピ通り……)

今日は私が夕食当番の日だ。

仕事リモートワークを終え、慣れない包丁を握る背中に、義母の視線が突き刺さる。健一は「お袋がいるから」と、最近は残業もせずに定時で帰ってくるようになった。もちろん、家事など手伝わないが。

「ただいまー。お、今日は友香が飯当番か」

「おかえりなさい、健一さん。もうすぐ……」

「友香さん」

私が健一に返事をするのを遮って、義母の冷たい声が飛んだ。

ソファから立ち上がった義母は、私の手元(まな板の上)を覗き込む。

「まぁ……雑な切り方。大きさがバラバラじゃないの。これじゃ火の通りも均一にならないわ」

「えっ、で、でも、レシピには……」

「レシピ? そんなものに頼るからダメなのよ。料理は『勘』と『経験』よ」

義母はそう言うと、私が味付けのために用意していた調味料(ミールキット付属)をひったくった。

「こんな『素』みたいなもの使って。だからいつまで経っても上達しないのよ」

勝手に戸棚を開け、醤油とみりんを雑に振り入れる。

「あっ、お義母さん、それじゃ味が……!」

「うるさいわね。主婦の経験キャリアが違うのよ。……はい、できたわ。健一、食べましょう」

食卓に並んだのは、レシピを無視され、やたらと醤油辛くなった「何か」だった。

「うーん……ちょっと濃い、かな?」

健一が恐る恐る口にすると、義母が私を睨みつけた。

「友香さんの切り方が悪いから、味が染み込みすぎたのよ! まぁ、これじゃ健一が可哀想だわ」

(え、私なの? 味付けしたのは、お義母さんなのに……)

「そうだよな、友香」

健一が、待ってましたとばかりに私に同意を求めてくる。

「お袋の言う通りだ。友香は本当に家事が苦手なんだから、これを機にちゃんと習えよ。な? お袋の味ってやつをさ」

「……ごめんなさい」

私は、そう一言返すことしかできなかった。

仕事(IT)では、ロジックと実績が全てだ。理不尽な責任転嫁などあり得ない。

けれど、この「家」という空間では、「主婦の経験」という曖昧な権威と、「長男」という古い価値観がすべてを支配する。

(私の方が、健一より稼いでいるのに)

(私が苦手な家事を、義母が完璧にやってくれるわけでもないのに)

理不尽さに涙が出そうになるのを、私は冷めた醤油辛い野菜炒めと一緒に、ぐっと飲み込んだ。






第3話『「仕事」より「家のこと」が優先でしょう?』


家事でのストレスに加え、私にはもう一つ、深刻な問題が持ち上がっていた。

義母・昭子さんは、私の「リモートワーク」という働き方が、どうにも気に入らないらしかった。

「友香さん。まだパソコン(・・・・・)に向かってるの? お昼ご飯の支度は?」

「(キーボードを打つ手を止め)……すみません、お義母さん。今、大事な作業中で。お昼は、昨日買っておいたパンか何かで……」

「まぁ! 健一(夫)がいないからって、お昼を手抜きするつもり? 信じられない」

家にいるのだから、家事を完璧にこなすのが当然。

それが義母の理屈だった。仕事中だろうが関係ない。家にいる「嫁」なのだから。

そして、最悪の事態は、重要なクライアントとのオンライン会議中に起きた。

リビングの一角に設けたワークスペースで、私はノートPCのカメラに向かい、神妙な顔で頷いていた。

「――はい。ご提示いただいた仕様の件ですが、こちらのA案であれば、納期デッドラインは……」

その時だった。

ガチャッ。

何の断りもなく、リビングの物入れのドアが開いた。

「(ゴゴゴゴゴ……!)」

背後で、突然けたたましい音が鳴り響く。

PC画面の向こうで、クライアント(部長クラスだ)が怪訝な顔をした。

「……友香さん? 何か、そちらで……」

「あっ、いえ! し、失礼しました! あの、少々お待ちください!」

ミュートボタンを押し、慌てて振り返る。

そこには、ノイズキャンセリングも貫通しそうな轟音を立てて、義母が掃除機をかけていた。よりにもよって、今、ここで。

「お義母さん! お願い、やめて! 今、大事な会議中なの!」

私が血相を変えて駆け寄ると、義母はピタリと掃除機を止め、心底不愉快そうな顔で私を見た。

「何よ、大声出して。ホコリがすごいから掃除してあげてるんでしょう」

「でも、今! 本当に大事な……!」

「あら、お仕事?」

義母は、わざとらしくため息をついた。

「お仕事・・も結構だけど、それより『家のこと』が優先でしょう? 健一(夫)が帰ってくるまでに家をキレイにして、美味しいご飯を用意するのが『妻』の役目よ」

(違う……!)

(私の仕事は、健一さんより稼いで、この家のローンを支えてる……!)

そう叫びたかった。

だが、PCの向こうでは、重要なクライアントが待っている。

私は「後で必ずかけ直します!」と涙目でチャットを打ち込み、会議を強制終了するしかなかった。

「……お義母さん」

「何?」

「……もうすぐ、健一さん、帰ってくる時間ですね。夕飯の支度、します」

ぐっと奥歯を噛みしめる私を見て、義母は「最初からそうすればいいのよ」と満足げに鼻を鳴らした。

その夜。

さすがに、この一件は健一に抗議した。

「ねぇ、健一さん。お義母さん、私が仕事中なのに掃除機かけてきて……会議、台無しになっちゃったの」

すると、健一は「はぁ?」と面倒くさそうに眉をひそめた。

「お袋も、友香のために家をキレイにしてくれてるんだろ。そんな邪険にするなよ」

「でも、仕事の邪魔を……!」

「家にいて金稼げるなんて、お前は楽でいいよな。お袋の言う通り、家のこともちゃんとしろよ」

――楽で、いい?

私の仕事キャリアへの侮辱。

そして、義母と夫による、完璧な連携コンビネーション

私は、この家で「稼ぐ機械」でありながら、「完璧な家政婦」であることを同時に求められているのだ。

もう、何かが限界に近づいているのを、感じていた。



第4話『お里が知れる』


家事、仕事、そして「金銭感覚」。

義母・昭子さんの監視ジャッジは、私の生活のすべてに及んだ。

その日は、私がネットスーパーで注文していた「少し良いオーガニックの野菜セット」が届いた日だった。

家事が苦手な分、せめて食材くらいは良いものを、と思ってのささやかな贅沢だ。もちろん、私のお・・・・・から出している。

「……まぁ、こんな高い野菜を」

私が受け取った段ボールを覗き込み、義母が嫌味ったらしく呟いた。

「健一(夫)のお給料でやりくりするのが『妻』の役目でしょうに。嫁が稼いでるからって、金銭感覚が派手になるのは困るわね」

「で、でも、これは私のお給料から……」

「それがダメだと言ってるのよ!」

義母は声を荒らげた。

(息子より稼いでいる嫁)という存在が、彼女のプライドを根底から刺激しているのは明らかだった。

「いいこと、友香さん。女がいくら外で稼ごうと、『家』のお金は男(健一)が稼いだものが基本なの。それ以上を使うなんて、家の恥よ」

「そんな……!」

理不尽すぎる。

私の稼ぎが、この家のローン返済や生活費の大部分を支えているという事実を、この人たちは意図的に無視しているのだ。

「友香」

ちょうど帰宅した健一が、義母の剣幕を見て、またあの「面倒くさそうな顔」をした。

「お袋もああ言ってるんだし、少し控えろよ。だいたい、お前は家事もロクにできないんだから、金遣いまで派手になったら、示しがつかないだろ?」

――家事もロクにできないんだから。

その一言が、私のなけなしの反論を封じ込める。

私は、稼ぎで夫に勝っている「負い目」を、家事ができない「弱み」によって相殺され、結局はこの理不尽な搾取構造の最下層に甘んじるしかないのだ。

「……ごめんなさい」

私がそう謝ると、義母は「分かればいいのよ」と勝ち誇ったように笑った。

そして、その夜。

夕食の後片付けで、私が洗ったお皿の拭き方が甘かったのだろう。義母の甲高い声が飛んだ。

「まだ水滴が残ってるじゃない! 何度言ったら分かるの!」

「す、すみません、すぐに……」

「本当に、要領が悪いわね! これだから仕事ばかりの女は!」

義母は、私の手から布巾をひったくると、わざとらしく大きなため息をついた。

「はぁ……。本当に、友香さんはお母様・・・・・に何も教えてもらわなかったのね」

――え?

「だからこんなに要領が悪いの?

お里が知れるわ」

(……プツン)

私の中で、何かが切れる音がした。

家事が下手だと罵られるのはいい。

仕事の邪魔をされても、我慢した。

私のお金で買ったものに文句を言われても、耐えた。

でも。

(お母さんを……馬鹿にするな)

私のお母さん、聡子さとこさん。

仕事一筋で、家事はすべて「効率化」と「外注アウトソース」で完璧に回していた、元バリキャリのあの人を。

この、古い価値観だけで生きてきた義母なんかに、侮辱されてたまるか。

「……友香? 何よ、その目」

義母がいぶかしげに私を見る。

私は、布巾をシンクに叩きつけると、何も言わずにその場から駆け出した。

「こら! 友香! どこへ行くの!」

背後で義母が叫んでいる。

トイレに駆け込み、鍵を閉め、震える手でスマートフォンを取り出す。

指が滑って、うまくロックが解除できない。

涙で画面が滲む。

(お母さん)

登録名「母」をタップし、耳に当てる。

数回のコールの後、聞き慣れた、低く冷静な声が聞こえた。

『――もしもし、友香? どうしたの、そんな時間に』

「……っ、う……」

声を聞いた瞬間、ダムが決壊したように嗚咽が漏れた。

「お母さん……っ! 助けて……!」

『……!』

「もう、むり……っ! 私……私、お母さんのことまで……っ!」

『……落ち着きなさい、友香』

電話の向こうで、母(聡子)の声のトーンが、スッとビジネスモードに切り替わるのが分かった。

『状況は理解したわ。今すぐ行く』

「えっ、でも……」

『住所を、今すぐメッセージ(・・・)で送りなさい。いいわね?』

それは、私が知っている、プロジェクトの炎上トラブルを鎮圧する時の、母の有無を言わさぬ声だった。

「……わかった」

涙を拭い、震える指で住所を打ち込む。

――送信。

(来る。お母さんが、この地獄に、来てくれる)

恐怖と、そして、ほんの少しの(あの義母と夫がどうなるかという)期待が入り混じったまま、私はトイレのドアを背に、ズルズルと床に座り込んだ。






第5話『救世主アセスメントの降臨』


(……前略:友香が実母・聡子にSOSを送信した夜)

私がトイレに立てこもった後、健一が「おい、友香! いつまで入ってるんだ! お袋が寝れないだろ!」とドアを叩いてきたが、私は「気分が悪いから」とだけ返し、そのまま朝まで出てこなかった。

翌朝。

私はほとんど眠れないまま、目の下にクマを作り、リビングに出ていった。

すでに義母・昭子さんと健一は食卓についており、義母が淹れた(インスタントの)コーヒーをすすっている。

「……おはようございます」

「あら、友香さん。昨日はずいぶんトイレがお気に入りだったみたいね。主婦が朝寝坊なんて……」

義母がネチネチと嫌味を言い始めた、その時だった。

ピンポーン。

リビングに、軽やかなインターホンの音が響いた。

健一が「誰だ? こんな朝早くに」と面倒くさそうに立ち上がる。

「……! 私、出る!」

私は、何かを察し、転がるように玄関のモニターへ向かった。

そこに映っていたのは、予想通りの人物。

黒のシンプルなパンツスーツを完璧に着こなし、一分の隙もない笑顔を浮かべた、私の母――聡子さとこだった。

「……お母さん」

「はい、どうぞ!」

私が受話器を取るより早く応答したのは、リビングから出てきた健一だった。

ガチャリ、と玄関のドアが開く。

「……はじめまして、お義母かあさま。私、友香の母の、たちばな 聡子さとこと申します」

そこに立っていた母は、高級そうな和菓子の大きな包みを持ち、完璧な角度(ビジネスで培った謝罪の角度だ)でお辞儀をしていた。

「あ……どうも」

突然の訪問者、それも「嫁の親」がアポなしで来たことに、義母は明らかに怪訝な顔をしている。健一も「え? お義母さん……?」と動揺して私と母を交互に見ている。

「朝早くから申し訳ございません。……あら、健一さんもいらしたのね。ちょうどよかったわ」

母・聡子は、スッと顔を上げると、いつもの「笑顔(ただし目は笑っていない)」を義母に向けた。

「他でもございません。昨夜、娘の友香が『家事が全く追いつかず、お義母さまにまで多大なご迷惑をおかけしてしまっている』と、泣きついてきまして」

(……え? 私、そんな言い方してないけど)

母の言葉の真意が掴めず、私はただ戸惑う。

母は、私の憔悴しきった顔をチラリと一瞥いちべつすると、さらに深々と頭を下げた。

「すべて、私の育て方が悪かったと、深く反省しております。この子が、健一さんのお・・の『お荷物』になっていたようで、本当に申し訳ございません」

「お、お荷物だなんて、そんな……」

さすがに健一も慌てているが、義母は「ふん、分かってるじゃない」とでも言いたげに口元を歪めている。

(よし、食いついた)

母の目が、コンマ一秒だけ鋭く光ったのを、私は見逃さなかった。

母・聡子は、勝負をかけるように、最高の笑顔を作った。

「つきましては、お義母さまにご迷惑をおかけし続けないよう、そして、この子が一人前の『妻』になれるまで――」

「しばらくの間、この・・が、こちらで**『お手伝い』と『指導』のために、滞在させていただいてもよろしいでしょうか?」

「え……?」

「ええっ!?」

私と健一の声がハモった。

何を言ってるんだ、このお母さんは!?

だが、義母・昭子さんの反応は違った。

「……まぁ。友香さんのお母様が、直々に?」

義母の顔に、見る見るうちに「(計算高い)喜び」が浮かんでいく。

(嫁の親が、嫁を指導イびるのを手伝ってくれる? しかも、家事の『お手伝い』? タダ働き(リソース)が増えるじゃない)

そんな心の声が、ダダ漏れだった。

「ええ。もちろん、ご迷惑でなければ。まずは、この子がどれだけ『できていない』のか、私が客観的に**現状把握アセスメント**をさせていただきたく……」

「まぁ! よろしいですとも!」

義母は、私の制止も聞かず、母・聡子の手を(油断しきった顔で)握った。

「どうぞどうぞ! 聡子さんとおっしゃいました? ぜひ、上がってください! この子(友香)に、ビシバシと『常識』を教えてやってくださいまし!」

(……あ。終わった)

義母の満面の笑みと、リビングの隅でまだ状況が飲み込めずアタフタしている夫(健一)を見て、私は確信した。

最強の監査役アタッカーが、この理不尽なプロジェクトに、今、着任した。



第6話『そのオペレーションは非効率です』


「さぁ、聡子さん! ぜひ、この子(友香)に『本物の家事』というものを見せてやってくださいまし!」

義母・昭子さんは、私をイびる「共犯者」を得たと勘違いし、すっかり上機嫌だった。

「ええ。承知いたしました」

母・聡子は、あの完璧なビジネススマイルを浮かべたまま、腕まくり(の代わりに、持参した高級そうなエプロンを装着)した。

「まずは、お義母さまが『主戦場』と仰る、キッチンの現状把握アセスメントから始めさせていただきますわ」

「きっちん? ええ、どうぞどうぞ!」

母は、まず冷蔵庫の前に立った。

そして、ためらいなく、バタン!と観音開きのドアを全開にした。

「……」

母は、中を数秒間凝視すると、次に野菜室、冷凍庫と、くまなく視線を走らせる。

続いて、シンク下の戸棚、コンロ脇の調味料ラック、食器棚……。

まるで、監査法人がクライアントの資産状況をチェックするように、冷静かつ無慈悲に、義母の聖域テリトリーをスキャンしていく。

「……ひどいわね」

母が、ボソリと呟いた。

「は?」

それまで得意げに腕組みしていた義母の顔が、一瞬で強張った。

「……今、何と仰いました?」

「いえ。あまりにもオペレーションが非効率だと思いまして」

母は、笑顔を崩さないまま、義母に向き直った。

「お義母さま。失礼ですが、このキッチンの動線と在庫管理、著しく生産性が低いですわ」

「なっ……! せ、生産性!? 失礼な! 私はこのやり方で、何十年も主婦をやってきたんですよ!」

義母が、ついに怒りを露わにする。

だが、元バリキャリの母(聡子)にとって、その怒りは「根拠エビデンスのない反論」でしかなかった。

「(カチ、カチ、とコンロの火を点検しながら)お義母さまの『経験則』は素晴らしいものですわ。ですが、その『経験則』に『最適化』という概念が抜けていらっしゃいます」

母は、冷蔵庫の奥から、カピカピになった生姜のチューブを取り出して見せた。

「まず、在庫管理ストックマネジメントが杜撰です。同じ調味料が複数あり、賞味期限切れのものが奥に溜まっている。これは無駄なコスト(支出)が常時発生しているということです」

「そ、それは……! 買い置きは主婦の常識で……!」

「次に、動線設計ワークフロー。なぜ、コンロから一番遠い場所にが? なぜ、毎日使うお玉が、シンクのに? 料理というタスクの度に、無駄な移動(工数)が発生しています。これではリードタイム(調理時間)が長くなるばかりですわ」

(……! そうだった!)

私はハッとした。

(このキッチン、すごく使いにくいと思ってた! お玉を取るたびに屈まなきゃいけなかったし、調味料の場所もいつも探してた!)

私の「家事が苦手」は、もちろん私のスキル不足もあるだろう。

だが、それ以上に、この「非効率なシステム(義母のやり方)」のせいでもあったのだ。

「う……」

義母は「どうせん」「こーすう」という言葉の意味が分からず、ただ圧倒されている。

母・聡子は、義母にとどめを刺した。

「お義母さま。家事とは『愛情』や『経験』である前に、日々の生活を回すための重要な『プロジェクト』です。このキッチンには、明確な『KPI(重要業績評価指標)』も、『ロジック』も存在しません」

「けー、ぴー……?」

「友香」

母が、私を振り返った。

「あなたが『家事が苦手』になるのも仕方ないわね。こんな非効率な環境システムで、高いパフォーマンスを出せという方が無理な話です」

(お母さん……!)

それは、私がずっと欲しかった言葉だった。

母は、呆然と立ち尽くす義母に、にっこりと微笑んだ。

「というわけで、お義母さま。明日から、このキッチンのオペレーションを根本から見直し、再構築リストラクチャリングします。あなたの『経験則』は一度、すべて忘れて(アンインストールして)くださいね」

「な……な……!」

義母は、ワナワナと震えるだけで、何も言い返せなかった。

自分の唯一の権威(聖域)が、よく分からない横文字によって、「非効率なもの」と断罪されたのだから。

(さて、と)

母が、チラリとリビングの隅でオロオロしている夫(健一)に視線を移すのを、私は見逃さなかった。

第一キッチンは、陥落。……次は、第二(夫)ね)





第7話『不良債権のアセスメント』


(……前略:実母・聡子がキッチンのオペレーションを再構築し、義母・昭子はそのロジックの前に沈黙した)

母が滞在し始めて、数日が経った。

あれから、義母はすっかり牙を抜かれたようにおとなしくなった。母(聡子)が構築した「家事オペレーション・マニュアル」(A4・30枚)に従い、戸惑いながらも家事をこなしている。

私も、母の「効率的な指導」――「なぜそうするのか(Why)」を明確にしたタスク処理――によって、驚くほどスムーズに家事をこなせるようになっていた。

この家を支配していた「理不尽な空気」は一掃され、代わりに「ビジネスライクな効率性」が支配し始めていた。

その状況が、面白くない男が一人。

夫の健一だった。

自分の「盾」であり「権威の源」であった母親(義母)が、嫁の母親(実母)に完全に手なずけられている。

家事も苦手だったはずの妻(友香)が、自信を持ってタスクをこなしている。

家に帰ってきても、「お疲れ様でした」と義母と妻から報告書(夕食)を出されるような、針のむしろだった。

そして、その夜。ついに健一の不満が爆発した。

「……もう、やめてください!」

完璧に整えられた食卓(母の指導で、一汁三菜のPFCバランスまで計算されている)で、健一が箸を叩きつけるように置いた。

「なによ、健一、急に大声出して」

義母が、ビクッと肩を揺らす。

「お義母さん! あなたが来てから、この家はメチャクチャだ! 俺の知ってる家じゃない!」

健一は、怒りに顔を赤くして、母・聡子を睨みつけた。

「これは! 俺の(・・)家だぞ! 嫁が親を勝手に呼び寄せて、好き勝手しやがって!」

あ、言った。

私はゴクリと息を呑んだ。

そして、健一は、ついにあの「伝家の宝刀」を振りかざした。

「大体なんなんだ! 俺は『長男』なんだぞ! この家のあるじは俺だ! 俺のやり方に従え!」

(……出たわね)

私の向かいに座っていた母・聡子は、その言葉を待っていたかのように、ゆっくりと食事の手を止めた。

そして、ニコリ、と。

あの、プロジェクト炎上時に、無能な上司・・・・・を詰める時とまったく同じ、完璧な笑顔を健一に向けた。

「……健一さん。大変、興味深いお話ですわ」

「な、なんだよ!」

「あなたは今、ご自分を『家の主』『長男』と仰いましたね?

結構です。では、その『家長の資格』について、今から簡単なアセスメント(査定)を始めさせていただいても?」

「は? あせすめんと?」

健一が、知らない単語にひるむ。

「ええ。まず、『家の主』として、この家庭プロジェクトにおける『経済的貢献度』について伺いましょう」

母は、カバンから一枚の紙を取り出した。

――それは、私の昨年度の源泉徴収票のコピーだった。

「(私に向かって)友香、あなたの年収は承知しています。(健一に向き直り)さて、健一さん。あなたの昨年度の年収は、うちの娘(友香)より、税込で180万円も低い。違いますか?」

「なっ……!」

健一が絶句した。

義母も「えっ……健一が、嫁より……?」と息を呑む。

私が、夫のコンプレックスを刺激しないよう、ずっと隠してきた「不都合な真実」だった。

「そ、それは……! 稼ぎがすべてじゃないだろ!」

「ええ、仰る通りです」

母は、健一のヤケクソな反論を、あっさりと受け入れた。

「百歩譲って、経済面は友香(大黒柱)が担うとしましょう。

では、あなたは『主』として、もう一方の重要な責務――すなわち、『家事労働貢献度』を果たしていらっしゃいますか?」

「か、家事は! 女がやるもんだろ!」

ついに本性を現した健一に、母は氷のように冷たい視線を向けた。

「時代錯誤も甚だしい」

ピシャリ、と言い放つ。

「友香は、この数日で私の指導オペレーションを理解し、家事タスクを標準レベル(アベレージ)までこなせるようになりました。お義母さまも、ご自分の古いやりレガシーシステムを捨て、新しい効率性を学んでいらっしゃる」

母は、健一を指差した。

「一方、あなたは?

お茶一つご自分で淹れず、靴下も脱ぎっぱなし。タスク遂行能力は『ゼロ』。違いますか?」

「ぐ……っ!」

「まとめましょう」

母は、冷徹に「査定結果」を宣告した。

「経済的貢献度は、娘より著しく低い。

家事労働貢献度は、ゼロ。

意思決定は、お義母さまの『古い価値観』に依存。

……健一さん。失礼ですが、あなたは『家の主』どころか、この家庭プロジェクトにおいて、利益を生み出さないどころか、コスト(手間)ばかり発生させる『不良債権』であり、完全な『お荷物』です」

「……あ……」

「何か、反論はございますか?」

健一は、口をパクパクさせるだけで、何も言い返せない。

稼ぎも、家事も、ロジックも、すべてで完敗したのだ。

自分の唯一の拠り所だった「長男」という権威が、現代の「実力主義アセスメント」によって、木っ端微塵に粉砕された瞬間だった。





第8話『合理的ソリューション』


(……前略:実母・聡子に『不良債権』『お荷物』と断罪され、夫・健一は完全に沈黙した)

シン……と、リビングが静まり返った。

健一は、顔を真っ赤にしたかと思えば、次の瞬間には真っ青になり、うつむいたまま何も言えない。

義母・昭子さんに至っては、自分の息子が「不良債権」と呼ばれたショックと、そのロジックが完璧すぎて反論できない恐怖で、小刻みに震えている。

この重苦しい沈黙を破ったのは、やはり私の母・聡子だった。

彼女は、まるで重要なプレゼンテーションを締めくくるかのように、穏やかな(しかし有無を言わせぬ)口調で切り出した。

「……さて、健一さん。アセスメント(査定)は終わりました。ですが、落ち込むことはありませんわ」

「え……?」

健一が、すがるような目で母を見る。

「私はあなたの『現状』を分析しただけ。ここからは『建設的なソリューション(解決策)』のお話です」

「かいけつ、さく……」

「ええ。健一さん、あなたは先ほど、『長男として家を守りたい』と仰いましたね?」

「……あ……」

それは、彼が最後まで振りかざしていた、唯一のプライドだった。

「素晴らしい心がけです。私、感動いたしました」

母は、にっこりと微笑んだ。

「ぜひ、実行してください」

「……どういう、ことだ?」

「言葉の通りですわ。あなたが『長男』として、この『家』を全力で守るのです」

母は、私(友香)と健一を交互に見た。

「この家庭プロジェクトの『リソース(資源)』を再確認しましょう。

まず、うちの娘・友香には『高い稼得能力キャッシュフロー』があります。

そして、私(聡子)には『効率的な家事オペレーション・システム』があります」

母は、健一をまっすぐに見据えた。

「一方、あなたの『平均以下の稼得能力』と『長男という古い価値観』は、現状、このプロジェクトの足を引っ張る『リスク要因』でしかありません」

「……っ!」

「ですが、健一さん。あなたにも、この家庭に貢献できる、唯一にして最大の『バリュー(存在価値)』が残されています」

母は、まるで業務命令を下すように、はっきりと宣告した。

「明日付で、会社を辞めてください。

そして、専業主夫になりなさい」

「は…………!?」

健一の口から、空気が漏れるような音がした。

義母も「せ、せんぎょうしゅふ……?」と目を白黒させている。

私もだ。まさか、そんな結論が出てくるとは思わなかった。

だが、母は冷静に続けた。

「極めて合理的な判断です。

健一さんの『低い稼ぎ』は、友香が『大黒柱』としてさらに稼ぐことで、十分にカバー(補填)できます。

問題は、家事(労働力)です」

「今、この家は私(聡子)が一時的にサポートしていますが、私もいつまでもいるわけにはいきません。かといって、家事代行アウトソースを雇えば、それだけコスト(支出)がかかる」

「そこで、あなたです、健一さん」

母の目が、凍てつくように健一を射抜いた。

「あなたが、私の構築した『完璧な家事オペレーション・システム』を引き継ぎ、この家の家事・育児(将来的なものも含む)のすべてを担うのです」

「『長男』として!『家の主』として! 妻(友香)が安心して外で稼げるよう、完璧な『ホーム(家)』を守りなさい!」

「そ、そんな……! 男が、会社を辞めて……!」

健一が、絞り出すように反論する。

「なぜです? あなたの稼ぎより、友香の稼ぎの方が、この家の『利益』に貢献します。ならば、利益の低いあなたが家庭に入り、利益の高い方(友香)をサポートする。経営判断として、当たりロジカルでしょう?」

「……あ……あ……」

健一は、もう「男が」とか「長男が」という古い価値観が、このロジックの前では何の役にも立たないことを、悟ったようだった。

「健一さん」

母は、最後に優しく(しかし、逃げ道は一切なく)言った。

「あなたが『長男として家を守る』と決断コミットなさるなら、この私(聡子)が、あなたが『完璧な専業主夫』になれるよう、責任をもって『研修』いたします。……ご返事は?」

返事など、できるはずもなかった。

それは「提案」の形をした、絶対的な「決定事項」だったのだから。




最終話『非効率なリソースの削減』


(……前略:夫・健一は、実母・聡子から「専業主夫」になるよう宣告された)

あの「最終宣告」が下されてから、数日。

健一は、まるで魂が抜けたようになっていた。

母(聡子)のロジックに一切反論できず、かといって「長男」としてのプライドが邪魔をして、素直に「はい」とも言えない。

だが、母はそんな健一の葛藤タイムロスを許さなかった。

「健一さん。あなたが会社に辞意を伝えるまでの間も、家事オペレーションは待ってくれません。今日から『OJTオンザジョブトレーニング』を開始します」

翌朝から、健一は母(聡子)が作成したマニュアル(A4・30枚)を叩き込まれ、有無を言わさず「主夫研修」がスタートした。

「違います。掃除機タスクは『奥から手前』が基本工数です。やり直し」

「なぜ洗濯タスクと洗いタスクを同時に進めないのですか? リソース(あなた)が遊んでいます」

「『男だから』? その非論理的な言いバグは、あなたの価値バリューを下げるだけですわ」

母の容赦ない指導(ダメ出し)が、リビングに響き渡る。

それは、かつて義母が私にしていた「経験則」のイびりとは次元が違う、逃げ場のない「ロジック」による詰めだった。

その地獄の研修風景に、ついに耐えきれなくなった人物がいた。

義母・昭子さんだった。

「……もうっ! もう見ちゃいられないわ!」

ガタン!と椅子を立ち、義母が叫んだ。

「健一! あんた、いつまでそんな女(聡子)の言いなりになってるの!」

「か、母さん……」

(雑巾掛けの途中で)健一が情けない顔で母親を見る。

「私の可愛い健一になんてことを……! こんな家、出て行ってやるわ! 健一、お前も来なさい! 母さんと一緒に実家ウチに帰るのよ!」

義母が、健一の腕を掴んで立たせようとする。

そうだ、逃げられる。

健一の顔に、一瞬だけ希望の色が差した。

だが、その希望を、母(聡子)の冷徹な一言が打ち砕いた。

「……お待ちください、お義母さま」

「な、何よ!」

「お義母さまがこのプロジェクトから離脱ドロップアウトなさるのは、結構です。ですが、健一さんを連れて行って、どうなさるおつもりで?」

「どうって……決まってるじゃない! 私が面倒見るわよ!」

「ほう。経済的実力キャッシュフローもないあなたが、どうやって?」

「なっ……!」

義母は、年金暮らしだ。健一を養えるほどの経済力はない。

母は、立ち上がろうとする健一に、静かに問いかけた。

「健一さん。あなた、この家を出て、お義母さまに養ってもらうのですか? それとも、あの『低い稼ぎ(不良債権)』の会社に戻り、友香(妻)からの経済的支援(ローン支払い)を受けながら、実家で暮らすのですか?」

「そ、それは……」

「どちらにせよ、『生活破綻デフォルト』するだけですわ。あなたが『長男』としてプライドがあるなら、どちらが合理的か、お分かりになるはず」

健一の腕から、力が抜けた。

そうだ。もう、逃げ場はないのだ。

この家(妻の稼ぎ)から離れれば、自分は「長男」どころか、経済的にも社会的にも「無価値」になってしまう。

その現実を、叩きつけられた。

「……健一? 行くわよ?」

義母が、息子の腕を引く。

「……母さん。ごめん……俺は……」

健一は、母親の手を振り払った。

「な……っ! 健一!?」

「俺は……ここで、やるよ」

絶望したような、しかし、どこか覚悟を決めたような目で、健一は母(聡子)に向き直った。

「……お義母さん。研修、続けてください」

「……!」

義母・昭子さんは、息子に裏切られたという事実に、ワナワナと震えた。

「……もういい! 勝手にしなさい! 嫁の言いなりになって、主夫でも何でもすればいいわ! もう、あんたみたいな息子、知らない!」

義母は、それだけ叫ぶと、自分の荷物(たいして多くもない)をひっつかみ、嵐のように玄関から出て行ってしまった。

バターン!と、ドアが閉まる音が響く。

「……行っちゃった」

私が呆然と呟くと、母・聡子は、何事もなかったかのようにマニュアルをめくった。

「ええ。これで『非効率なリソース(義母)』が削減できました。非常に効率的ロジカルですわ」

母は、床に膝をついたままの健一を見下ろした。

「さて、健一さん。家事のコスト(義母の生活費)が減った分、あなたには『クオリティ』を上げてもらいます。まずは、トイレ掃除のオペレーションから再確認よ」

「……はい、お義母さま」

力なく返事をする夫(専業主夫・研修生)を見て、私は、窓から差し込む朝の光が、昨日よりずっと明るく感じられたことに、気づいた。

こうして、時代錯誤な「長男教」は崩壊し、我が家にはロジックと効率性に支配された、新しい生活(秩序)が始まったのだった。

(完)


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました! 『夫(長男)が専業主夫になりました。』、完結です。


理不尽な「長男教」という古い価値観が、現代の「実力主義ロジック」によって木っ端微塵にされるお話でした。 最強の実母・聡子さんの「アセスメント」はいかがでしたでしょうか?


義母は敗走しましたが、これから「専業主夫」として本格的な研修(OJT)が始まる健一さんと、大黒柱として彼を「評価」する立場になった友香の「新しい生活(秩序)」は、始まったばかりです。


健一くんが「完璧な専業主夫(KPI達成)」になれる日は、来るのでしょうか……(笑)


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