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5話「やられたよ…すごいパンチだった!」


朝からとっても疲れた。

チセは半ば放心状態でギルドの宅配サービスを

申請し、途中の屋台で草団子を購入してから

噴水広場のベンチに腰掛ける。


「ふう…」


大通りは賑やかな喧騒に包まれていて、

子供連れの夫婦が談笑しながら屋台を回り、

犬の散歩をしている女性、

昼間から丸テーブルで酒を飲み交わす衛兵達。


(緩みまくってるなぁ…)


単なる変質者があのレベルの装備を持つ街だと言うのに。


「…かえろ」


もう何を見ても疲れてきて、

宿に戻って早めに休もうかと思った。

その時、


「やめて下さい!」


何か女性が困っているような声が響く。

顔を向けると、黒いタイツスーツの男3人に

買い物籠を持った女性が絡まれている。


「おいおい、変な声あげるなよおねぇさん」

「そうだぜぇ?俺らが悪者みたいじゃん?」

「だから〜?俺たちは金を返しさえすれば居なくなる。って簡単な事しか言ってないだろ?」


(借金の取り立てか)


にしても嫌だなあのスーツ。

何、普通に護身用として出回ってるのか?

ボディラインがツヤツヤと出てて普通にキモい。


「そもそも借金なんて私…!!」


「嘘つくんじゃねぇよ!」

男の一人が激怒する。


「そうだ、これ見ろよ!借用書はちゃんとあるぜ?ぺぺロニー男爵様の印だって押してある」

「金がねえなら大人しくついてきて貰おうか…!」


「いや!離して!」

女性の腕を一人が強引に掴み、

暗い路地へ引きずって行こうとする。


(むう、看過できんな)


「おい!そこの男達、白昼堂々女性達に手を上げるとは…男として恥ずかしいとは思わないのか」


チセはそう声を張り上げ、

3人の男達に近づいていく。


「なんだてめぇ!」

「俺たちはぺぺロニー男爵の名で動いてるんだぜ?」

「邪魔する気か?」


それにしても見事に息ぴったりだなコイツら。



「ペパロニだかペペロンだか知らんが、大の男3人組でか弱い女性に乱暴するのは正しい事だとは拙者には思えんな。日を改めて出直してくると良い」


「部外者が…調子に乗るなよ!女ぁ!」


男の一人が殴りかかってくる。

振り下ろされた拳を裏拳でいなし、

勢いそのままに後ろに放り投げる。


「ドゥワァァァァァ!?」


バシャーン!と見事な水飛沫をあげて

男は綺麗に噴水に頭から突っ込んだ。


(やはり、戦闘技能は素人同然か)


「テメェ!」

「やっちまえ!」


どこから出したのか二人がロングソードを抜くと、

チセはかかってこいとばかりに右手のひらを手前に引く

ポーズを見せる。


激昂してロングソードで突いてくる一人の攻撃を

紙一重で見切り、カウンターで相手の腹部に

強烈な掌を叩き込む。


ドゴム!


「いったぁ!?」

かってえ!バカかよ!


吹っ飛びはした。

でもチセの右手首もぶっ壊れた。折れたかも。


「喰らえ!」


目の前にあんまり手入れの行き届いていない刃が

迫ってくる。

…うーんこれ、綺麗に斬れないやつだ。


このタイミングでは避けられない。

せめて、せめて一矢は報いよう。

チセは懐から取り出したクナイを

相打ち覚悟で男に投擲した。

音もなく飛んでいくクナイ、

男は驚きの表情を浮かべ…



突如目の前に飛んできた白い影にサックリ刺さる。

…はい?


「モヴァ!?」


男は地面に埋もれていた。

その頭部を踏みつけて現れたのは、

あの白い少女、確か名をイリーゼット。


「白昼堂々可愛い女の子をいじめるなんて!全くなってないな最近の悪党は!」


「げえっ!イリーゼット!」

チセが飛ばした男が逃げようとする。


「じゃーまぁぁぁキーック!!」

「フライアェイ!?」


イリーゼットは男を踏み台にして

綺麗な飛び蹴りを決める。

蹴られた男は血反吐を吐きながら吹っ飛ばされた。

踏まれた男はもう頭頂部しか見えない。

…息してるかなこれ。


「あ!朝の可愛い子だ!」

イリーゼットはこちらを見ると笑顔で手を振る。


「…あっ、どうも」


「なんで襲われてたの?」

「いや、白昼堂々女性が借金取りっぽいこの人達に襲われてたのを見たんだけど…」


女性は逃げてしまっていた。

まぁ仕方ないだろう。

あれだけ派手に刃傷沙汰が起きれば…


「そっか!罠に掛かったんだね!」


わ、wanna?


「あの人達はね!そう言う雰囲気を出して釣れた女性冒険者をメタメタにしてから路地に連れ込む人達なの!」



「にゃ…




にゃんだってぇぇぇぇええええ!!??」




「あ、これ返すね!」


頭にサクッと刺さっていた刃物を引き抜き、

イリーゼットはチセにクナイを返す。


「いった…!」


受け取ろうとして、

手首が痛んでチセは腕を押さえる。


「あー、折れてるねぇ」


イリーゼットは屈んでチセの腕を取る。

そして何度かさすると…

「…え?」

チセの青く腫れた傷の跡が僅かに発光し、

光が消えると同時に、痛みも無くなっていた。


「か、回復魔法…?奇跡は聖職者じゃないと使えないんじゃ…?」


恐る恐るイリーゼットを見上げるチセ。


「…?」


「いや、何でも無いです。かたじけない」

「うん!」




やがて衛兵団がやってきて黒タイツ共を連れて行った。

それを二人で見送ると、イリーゼットが欠伸をする。


「普段からこんな事をしているのか?」


「んー?」イリーゼットは目を擦りながら言う「まぁ何かをボッコボコにするの、趣味だから〜」

「あー、そう…」


「でもね」


イリーゼットはこちらを見上げる。

初めて見る。

真剣な表情だった。


「何かあるよ。あの変なスーツの出所を見つけないと、私だけで対処が出来なくなる」


「あのスーツは一体何なんだ?」

ごくりと唾を飲み込み、チセは尋ねる。


イリーゼットは表情を変える事なく答えた。


「あらゆる衝撃を反射、吸収するアブソルーブのスーツ」


「アブソルーブって、【スライム界の死神】って呼ばれてる、あの魔王領にしか生息していない、あの!?」


「そう。あれが何故か大量に市井に出回っている…出所と製作施設を早く押さえないと」


そうか。

考え無しに悪党を吹き飛ばしているだけではない。

イリーゼットは、この街の為に考えて行動している。


「…感服した」

「ん?」イリーゼットが首を傾げる。


「イリーゼット、君はきちんと街の事を思って行動していたんだな…」


イリーゼットはそれを聴いて、

いたずらっぽく笑う。


「そりゃあ、砂場が無くなったらつまんないでしょ?」


ストックが切れました⭐︎

もう一作の方もよろしければご覧ください。

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