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3話「いっけね。名前聞き忘れたんだけど笑」

「…書きました」

「確認しますね」


受付に書類を提出したチセは、

もう見ていられないほど疲弊し切っていた。

着ているものも重かったのか、

背に背負う背嚢に笠と外套をしまってしまう。


右肩が出ている赤い着物姿が顕になり、

酒場の席の方から口笛が聞こえてくるが

もうチセは気にしないことにした。


「チセさん、確認が終わりました」

エリスと呼ばれていた事務員はそう言うと

滞在を証明する水晶のアクセサリーをくれる。


「では、今日のところは宿を探すことにします」


もう疲れすぎて敬語になっているチセ。


「はい、お気をつけていってらっしゃいませ」



⭐︎ ⭐︎ ⭐︎



建物を出ると、

人にぶつかりそうになる。


「…すまない、失礼し…」


顔を上げると、目鼻立ちが整った人形のような少女。

いや、整いすぎて不気味にも思える…

赤いベレー帽を目深に被り、同じく真紅の瞳を

こちらに向けて見上げる少女は、

無表情なのも相待って少し気味が悪かった。


「操縦中です。お気をつけて」

「操縦?」


本当に抑揚のない声でそう言われて周りを見渡すと、

金属の鎧が数体、動いていた。

よく見れば発光する糸のような物に繋がれていて、

それは赤い少女の手にも繋がれている。


パペッター。人形使いだ。


「壁を直しているのか」

「そうです」


巨刃を持った大男の人形はノコギリを使い、

鎧の人形はどこからともなく木材を運び、

魔導士の姿の人形が復元魔法をかける。

ピエロの少女のような人形はカラースプレーで

同じ色に塗装していく。


ものの数分で新品になった壁を見ながら、

チセは感心のあまり拍手を贈る。


「すごい数の人形を操れるのだな。天晴だ!」


「あっぱれ、あっぱれ、どうもありがとうー」


なんと言うか不思議な雰囲気の少女だ。

チセはうんうんと頷きながら

瞳と同じ色の赤い髪の髪型と、

着ている鎧のデザインを見て。


チセは気づいた。

気づいてしまった。


「色違いだ…」

「それではみなさん、ごきげんよーーぅ」


ポン。


「うっわ!?」

軽い音を立てて白い煙が巻き上がる。

手で軽く払い除けるともう既に

あの少女と人形達の姿は無かった。


「…いや、まさかな」


チセは駆け出した。

確認したい事があったからだ。

露店が立ち並ぶ大通りを抜けて、

先程酷くボロボロになっていた東城壁に向かう。

そして…

ぺたんと腰が抜けてしまった。


「…にゃ…にゃんでぇ…?」


ピッカピッカだった。

話に聞いていた陽の光を反射する城壁が

まさにそこにあった。

夕暮れの西日が城壁に当たりとっても眩しかった。


あの農夫の言っていたことは本当だ。

人を城壁越しにぶち抜くとか言う異常な力。

ものの数時間で破壊された施設や城壁を直す技術。

そんなものに護られたこの街は…


あぁ、確かに『世界一安全な場所』なのだろう。


でも…


「関わりたくねぇ〜…」


あの少女達は色々とダメだ。

なんだろう、少し話を聞いただけだが。

でも分かる。


あれは ダメだ。

きっと倫理観とか常識とか、

そう言うものを学び損ねたまま力を持ったのでは?



「しかし…まぁ」


世界一安全な街。

良いじゃないか。

ここを拠点に魔王領へ向かい、

剣の道を極めるのも良いだろう。

絶対に陥落しない街を拠点に出来るのだ、

安心安全な拠点は冒険者にとって

願ったり叶ったりである。


「明日から…頑張ろう」


今日はもう疲れた。

あの少女達にはまた会う事もあるだろうが、

絶対に関わらないようにしよう。

なんでって…

見てて疲れるからだ。

あんな…努力も何も無く力を得たような…

あんなのは…


いや、やめておこう。

あの可愛い銀髪の女の子はちゃんと

衛兵詰所に男をシュートして

超!エキサイティングしてました。

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