幻の神殿
「すぅー、はぁ、」
ずいぶん歩いてきた。
冒険者であふれるこの世界で重要なのは誰よりも速く宝を見つけ、功績を上げることだ。
かくいう俺も冒険者の端くれ
生きていくためには宝を見つけ、それを売らなければならない。
「ここもダメ、か」
だが俺が見つけれるモノなんて他の優秀な冒険者がとっくに見つけている
「もうやめようかなぁ」
そんな一言が漏れる
子供の頃は憧れて憧れて、ひたすら冒険者の背中を見て育ってきた
それが現実はこんなにも厳しいとは…
「はぁ…もう帰るか。暗くなると厄介だ」
重い体を無理やり動かしながら帰路へつく
昨日もダメだった
今日もダメだった
明日もきっとダメであろう
向いてない、そんな言葉が胸にのしかかる
そりゃそうだ。こんなことでくじけてるようじゃ優秀な冒険者にはなれない。
優秀な冒険者は諦めず努力して努力してひたすらその称号を追いかけた者のみ背負うことを許されるのだ。
そんなことを考えながらひたすら歩く
「あれ、ここ、どこだ?」
最悪だ。これだから俺はだめなんだ。
ギルドにすら帰れないなんて冒険者としてあるまじき行為だ。
「これじゃあ帰ってあいつらに笑われるな」
そう思い、とりあえず道を進んで行く
「なん、なんじゃこりゃ…神殿…?いやそれにしては寂れてるな…」
進んだ先には廃墟のような神殿があった。
そういえば昔こんな噂を聞いた
『なぁ知ってるか?この世にはな、忘れられた神殿ってものがあるらしいぞ!』
『はぁ?なにそれぇ』
『なんでも、昔は立派な神殿だったらしいんだが場所が辺鄙なとこでよ。そのうち誰からも忘れられたって話だぜ。話によるとそこにはものすごいお宝が眠ってるとか…?』
『そんな神殿あったら俺がすぐ見つけてやるぜ!』
『てかあーしらにまで噂が出回ってる時点で忘れられてはなくない?』
『そりゃそうだ!』
『そんなモノがあってもどうせ優秀な冒険者サマがすぐ見つけるでしょ〜』
まさかこれがその…
だがこの神殿はお宝なんて埋まってそうなモノではない
まるで、そう、なんというか
ものすごく神秘的で、立ち入ることが許されないような…
「俺ここにいていいのかな…」
まぁ帰り道もわからないので神殿の中を適当にさまよう
「お、女神像」
神様なんて信じてはいなので拝むこともなく腰に手をあて見つめる
「人間サマが勝手に作って勝手に忘れる、か」
女神像は俺を励ますように優しく見つめる
これでお宝があれば良いのだがどうやらここはそんなものはおいてないようだ。
だとしたらもうここに用はない
「えーっと帰り道を知りたいんだけど…って言ってもたかが像にわからんかぁ」
そんなことをぼやくと急に女神像がまばゆい光に包まれた
んなファンタジーな…
気がつくと俺はギルドの前にいた
夢だったのか?
「なんなんだいった、い?」
俺の手には金のコインが数枚
「はっ、土産ってか?」
とりあえずこれでしばらくは暮らせるだろう
そんな邪なことを考えながら俺はギルドの扉を開けた。
「お前ら!面白い話を聞きたくないか?」




