8話 魔法の始まり(エラ視点)
パァン!!
よろけそうになるほど強く、お義母様はわたしの頬を叩いた。
「その程度のこともできないの、エラ?お前は本当に役立たずだね!」
「――すみません、お義母様」
パンッ!
今度は反対側の頬を叩かれる。
「奥様とお呼びなさい」
「――はい、奥様」
「いい気味ね!!」
今度はラビニアお義姉様に、バケツの水をかけられる。
「……」
押し黙るわたしに、
「あんたは今日からシンデレラ。灰かぶりのエラ、って意味よ。分かったらお返事なさい!」
「――はい、わかりました。お義姉様」
「さっさとそこを片付けるのよ!」
「はい、申し訳ありません――」
わたしは、お義母様――いえ、奥様とイライザお義姉様に罵声を投げつけられながら、一日の仕事を終えて屋根裏部屋に戻ってきた。
――これからずっと、こんな毎日が続くのね。
そう思ったとき、部屋の片隅の粗末なテーブルの上に、古びた本と小さな革袋が置いてあるのに気付いた。
それに添えられていた、懐かしい字のメモ。
「エラへ。これを貴女の役に立ててください。シンシア・ジョーンズ」
そのメモは、先生の字に交じって、見慣れた字が混ざっていた。
――きっと、これはジュリアお義姉様がなさったのね。
わたしは、お義姉様に感謝した。