6話 お義父様が亡くなったあと
お義父様が亡くなったのは、お母様との結婚から4年後のことだった。
寒い冬の日、たった一人で雪の中、立ち尽くすまだ14歳のエラ。
喪服姿の彼女は、アメジスト色の瞳から涙が溢れそうになるのを、必死でこらえていた。
対する私のお母様。
(いい気味ね)
そう言うように、口元に笑みを浮かべながら、エラを見ていた。
ああ、私の愛しい義妹エラ。
貴女をまもってあげられるのは、私ひとりだけ!
エラに駆け寄ろうとする私を、お母様が制止する。
「あの娘に同情をかける必要はないわ、ジュリア」
「―――お母様?」
「あの娘にはもはや身寄りも財産も無いのよ。――貴女は関わらないでおきなさい」
「――」
お母様の気迫に、私は押し黙るしかなかった。
お母様とラビニアお姉様は、その日からエラを冷たく扱い始めた。
ドレスや宝石を取り上げ。
エラに味方する使用人は、皆解雇し。
みすぼらしい古着を着せ、屋根裏部屋に追放し、使用人同然に扱い始めた。
――私一人で、エラのことを守れるのかしら……。
そう思っていると。
やはりお母様に解雇された、シンシア先生の言葉が真っ先に浮かんだ。
「何かあったら、私のところにいらっしゃい、ジュリアお嬢様」
シンシア先生との別れ際に、挨拶を許されたのは私一人だったのだけど、先生はエラのことも頼みたかったのだろう。
私は意を決して、シンシア先生の家に行くことにした。