5話 エラの憂鬱(エラ視点)
――また、失敗してしまったわ。
憂鬱な気分で、わたしはため息をつく。
お義姉様たちには、また生意気な女の子と思われたに違いない。
特に、ラビニアお義姉様には。
そしてきっと、お義母様にも。
お義母様――あのひとは、従順で控えめな娘ほど、良縁があると思っているタイプのひとだから。
それでも。シンシア先生にこの世界の仕組みについて学ぶのは、とても楽しかった。
――でも、きっとお義母様たちは、このことを快く思っていないのに違いない。
ふうっ、とわたしが再びため息をついた時だ。
「どうしましたの?エラ?」
そこにいたのは、ジュリアお義姉様だった。
すぐにわたしは振り返って、
「いえ、何でもないの」
と、笑顔を作ってみせる。
けれど。
「そうかしら? 昼間、シンシア先生と一緒にいた時から、エラは思い悩んでいるように見えましたよ?」
そう、問われて。
「賢い女の子は、生意気で可愛げがないんでしょう?」
問い返した。
「何故、そう思うのかしら?」
ジュリアお義姉様が、そう問い返す。
「――お義母様も、ラビニアお義姉様も、そう言ってたのですもの。いえ、ほかの人たちもみんなそう言うわ。そう思ってないのは、お父様とシンシア先生だけ」
わたしがそう言うと。
「私はお母様やお姉様とは違うわ。すぐには信じてもらえるかどうかわからないけど、賢さはきっと将来の役に立つと思うもの」
ゆったりとした口調で、ジュリアお義姉様が言った。
「ジュリアお義姉様は、そう思うの?」
わたしが問うと、
「エラ、あなたのことは私がずっと守ってあげるわ。ずっとずっとよ」
ジュリアお義姉様がうっとりとそういうと、
「約束」と指をさし脱した。
わたしはおそるおそる、ジュリアお義姉さまに指を差し出し、そして指切りをした。
わたしは最後に、つぶやくようにジュリアお義姉様に行った。
「ありがとう」