2話 お母様の再婚
お母様の再婚相手が、平民のストウナー家の当主だと知った時、私は憤慨せざるを得なかった。
いくら、新興富裕階級のストウナー家に財産があるといっても。
そして、いくらクロフォード家が、財産の無い男爵家だからといっても。
「うちは、誇り高い貴族なのよ!どうして、平民風情とお母様が結婚しなければならないのよ!」
私はお母様に希った。
「ジュリア、あなたはまだ幼いから何も分かってないのでしょうけれど、先立つものは何より財産なのよ」
諭すように、お母様が言う。
「でも、私はこんなの絶対嫌!」
これではお母様が、まるで平民の妾みたいだわ、と言いかけて、さすがに私も口を噤んだ。
これが逆さまならよくあることだ、実際お父様も屋敷のメイドに手を付けていたらしいけれど、お母様は見て見ぬ振りをしていた。
政略結婚が半ば義務である貴族階級では、よくあること。
――それなのに!
この結婚には、私は断固反対だわ。
ストウナー家には、私より少し年下の娘がいるというけれど。
私はそんな子と、仲良くなるつもりなんてないんだから!
けれど。
そんな思いは、ストウナー家の娘、エラに初めて会ったとき、すっかり吹き飛んでしまったのだった。
彼女があまりにも可愛らしくて、天使のよう――いえ、そんな形容も、エラの可愛らしさの前では陳腐に思えるくらいだったのですもの!