なぞなぞラブレター
4月下旬、学校から帰ろうと下駄箱を開くとラブレターらしき手紙が入っていた。
『あなたの事が大好きな私は誰でしょう? 次のクイズの答えの頭文字を並べると分かるよ』
3つのクイズと共に。
「......なんだこれ」
「何してんの友樹、早く帰ろ。ピケモンの最新作やらなくちゃ。
手紙の中身を読んでいると、後ろから幼馴染である櫻子の声が聞こえた。
「それ櫻子が昨日誕生日プレゼントでくれたやつじゃなかったか? 何でお前が先にやろうとしてるんだ?」
「友樹の物はあたしの物、あたしの物もあたしの物。あ、あたしの心は友樹の物だよ?」
「やかましいわ」
「あいだっ。って、何その紙?」
櫻子の戯言に、つい持っていた手紙で櫻子の頭を叩いてしまった。
「......なんでもない」
すぐに背中に隠したが遅かった。櫻子はニヤリと笑みを浮かべる。
そして。
「見せろお!! 見せなきゃ友樹の嫌いなあんこ食わせるぞ!!」
櫻子は手紙を奪うべく俺へと飛びかかった。
「......3つのクイズを解かないと送り主が分からないなんて、このラブレターを送った女の子は相当な恥ずかしがり屋さんだね」
場所は打って変わって、俺の部屋。
手紙は奪われ、今は櫻子の手元にあった。
「クイズとは言っても、書いてあるのはなぞなぞだったけどな」
「一緒じゃん」
「全然違う。クイズは聞かれたことにそのまま答えればいいが、なぞなぞは違う」
「さてさて、どういうクイズが書かれているのかな?」
「......話を聞けよ」
手紙に書いてあったなぞなぞは全部で3つ。
「えっと一つ目は、『パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?』。あれ一問目だからか、結構簡単な問題だね?
答えは、フライパンだ!!」
「まあ、短パンとか審判とか。他にも答えがあるにはあるが、書いたやつが捻くれ者でない限りはフライパンで合ってるだろうな」
「じゃあ2問目!! 『喧嘩をしてもこの場所なら、すぐに仲直り。ここ、どーこだ?』。
急に難しくなったね。あたしと友樹は喧嘩したら良く小学校の体育館に行ってたよね」
「それは櫻子がバスケのシュートを先に決めた方が正しい、みたいな勝手なルールを決めたからだろ。というかそんな事はどうでも良くてだな。
仲直りするってことはそれまでの事を"水に流す"ってことだろ? 水に流すところと言えば」
「あ、トイレだね!!」
「多分な」
「よし、最後の問題!! 『いつかは誕生日が来るんだね、と6月1日に言われたよ。さて誕生日はいつ?』。
うーん、どういうことだろ?」
「......その問題はなんというか無理やりだな。"いつか"ってのは"いつの日か"じゃなくて"5日を意味してるんだよ。
それで6月1日に言われたんだから、6月5日って事なんだろうな」
「おー、やるね友樹。全部分かったって事は頭文字を並べれば送り主が分かるんだよね?」
「残念ながら、1問目が"ふ'、2問目が"と"、3問目が"ろ"。どう頑張っても名前になんかならないんだよ」
「えー、じゃあ答えが違うってこと?」
「そんなはずはないと思うんだが」
「ねえ、友樹。これってクイズなんだよね。
じゃあ問題にそのまま答えたらいいんじゃないかな、とあたしは思うんだけど」