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#3.-冒険者のヴァナ・パムゥ

「やっほー!アリシアちゃん!!元気!!?」


閑散とした冒険者協会ペルペ支部に元気な少女の声が響いた

現在ド田舎のペルペ支部で働く他の職員は近所の農家に手伝いに行き今は書類作業をしていた受付嬢のアリシアしかいない

そんな彼女を気軽に呼ぶ声に彼女は頭を上げ目を見開いた


「…え!? ヴァナさん!? 何で!!!?」


黒いローブ服を着込み

背中に荷物の入った鞄とあかざの杖を背負いこげ茶の長い髪を三つ編みにし

片方の煤けた青の瞳だけ長い髪から出した人間の少女、『鉄札』冒険者ヴァナがいた


ヴァナはニコニコしながらアリシアのいる受付カウンターまで来る


「いやー、『王都』の協会が色々偉そうにしてうるさいから依頼断って逃げて来たんだよね

ほら、あいつらって貴族だしさ

あれだったら東の辺境伯の方がましだし

やっぱ依頼受けるなら私らと同じ平民のアリシアちゃんじゃなきゃやってらんないわ!!ってね!」


そう言うとヴァナはアリシアのカウンターに肘を付き彼女に顔を寄せてくる

顔の半分は髪で隠れているがかなり整った顔のためアリシアは少し顔を赤らめた


「えっと、ヴァナさん、ピムさんはどないしたん…どうしたんですか?」


「あぁ、ピムは王都出る前に潜ったダンジョンにあった宝箱の毒ガスのトラップ解除ミスしてそのガス食らって鼻がしばらく使い物にならなくなっちゃってさ

あいつ そのことがものすごく恥ずかしかったみたいでアリシアちゃんに合わせる顔がないって言って宿屋に行ったよ

―別に誰も気にしないのにねぇ

ま、しばらくここで休養って感じかなっ」


アリシアはこの田舎に暮らすようになってからは気にしなくなっていたがいつもの訛りのある喋り方から王都の受付の時の口調に戻し背筋を伸ばした

消して彼女がいつもヤミー などのペルペ支部の冒険者たちに対して失礼な態度をとっていたわけではないが少なからず王都で活動していたこの人にしていい対応ではないと判断したからである

そして彼女はヴァナに王都にいた頃に一緒にいた白虎の獣人である相棒がいないことが気になって質問した

そしてヴァナの返答に彼ならばそうするとも納得し苦笑した


「それで! アリシアちゃんなんかしら依頼あるよね?

王都のやつら性格悪いし嫌がらせで書類は…    

 …アリシアちゃんの実力じゃ全く嫌がらせにならないか、

んっとでもここ冒険者いないし依頼だけは溜まってるでしょ?

ここは私たちがばーっと片付けてあげるよ!

ピムだって鼻が使えなくたって十分動けるしさ!!」


ヴァナは笑顔でアリシアにそう言う


「あ、えっと、それが…

全部片付いて…るん……です」


「…え?全部?」


「…えぇ、まぁ…」


その言葉にアリシアはまた苦笑し答え

答えるとヴァナは目をまん丸にする

ここ最近の依頼に関してはヤミーが『全て』片付けたばかりであったが故である

アリシアがそのことを話すとヴァナは顎に手を当てボソボソと呟く


「…なるほど、デコイだけじゃなくレッドベアとかの頑強な魔物相手にも効果のある技……

異常な依頼達成速度……

となると、……かなりの実力で…

こんな辺境になんで……まさか禁術に手を……

『堕ちた信者』か『禁詞族きんじぞく』あたり…

…うーん、それとも指名手配された魔術師…

…あの子何者…?」


アリシアは途中の呟きは聞き取れなかったが最後の言葉だけ聞きとることができた


「ヴァナさんヤミーちゃんに会うたんですか?」


「…ん、さっきピムと町着いたときに…さ

うん、なるほどやっぱりあの子が冒険者ヤミーね

階級は『木札』…」


そう呟くとヴァナはアリシアに顔を向ける


「ねえ、アリシアちゃんあの子は昇格はしないのかな?

それだけの実力があるって言うなら昇格してもおかしくないと思うんだけど」


ヴァナの問にアリシアは困った顔をしながら答える


「あぁ、実は今日彼女にその話をしてましてこれからマリヴェムにその書類 送ろうとしてたんですよね」


そう言って アリシアはヴァナに手元で書いていた書類を見せた

書類は封筒に入れられておりすでに封蝋がされている

それを見たヴァナは良い笑顔でその封筒をアリシアからひょいっととった


「…え?」


「よし、アリシアちゃん この依頼、私ヴァナ・パムゥとその相方である ピム・エッジの二人が受けよう」


「えっと、あの、ですが…ピムさんに許可は…」


「大丈夫大丈夫!ピムなら笑って承諾してくれるよ!!だから…ねっ?」


アリシアは片目は隠れてはいるがなんとなくヴァナがウインクをしたことがわかった

そして そんな いたずらっぽい感じの彼女を見てアリシア はため息をつく


「はぁ…分かりました

あなたたちは実力としては『鉄札』なので試験官としては全く問題ありませんし元々王都で活動していたので むしろこのド田舎では過剰ですらありますね…

ただ、まぁ…その書類は隣町のマリヴェムに宛てたものなので書き直しですね …」


そう言って アリシアは受付のカウンターの下にある棚からまた新しく依頼書用の紙を出す


「ごめんごめん!ただどうしても彼女の実力が見てみたくてさ

…………まぁ、もしも 『堕ちた信者』とか『禁詞族』だったら早く『処分』しないとだしね」


それを見たヴァナは笑顔を崩さずに謝罪して

その後アリシアには聞こえない声で呟くのであった

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