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#2.-冒険者の獣人ピム

その日、山羊のヤミーは知った


「去年の山羊は素晴らしかったよ

今年の収穫祭もまた山羊をお願いしてもいいかい?」


「ええ、いいですよ

ちょうど去年の春に生まれた山羊がいましてね

去年より美味しくしてみせますよ!」


「はっはっはっ!それは楽しみだねぇ」


 ロゼッタちゃんと散歩していたら村人とパパさんの話を聞いてしまったのである

私の周りにはまだ何頭か山羊がいるが去年の春に生まれたのは私だけ

…つまり今年の収穫祭は『私』だということだ。


「…なんてこった」


毎年は各家が年ごと順に出す話なのだがここ最近はどうやら魔物が活発になっているせいか弊を越えた魔物により他の家で被害があり山羊がいないという話を聞いて私は嘆きたくなった。

だからといって村から出て外で寝るのも危険である

 『冒険者ヤミー』としては少しずつ力をつけ安定してきてはいるがまだ駆け出しであり住処と言えるものは用意できていない、

なんせここはドがつくほどの田舎であり

隣町のペルペなどは宿などはありはするが雑魚寝部屋か個室だとしてもとても高額だったりする

睡眠中は魔法が切れてしまうので雑魚寝などの宿は自身の正体が山羊であるとバレる危険性が高く

万が一そうなればこういった田舎だと異質なものは排除しようとする風習がある

そして町の住民にバレなくても旅人や数は少ないが他の冒険者なら新手の魔物か物珍しい生き物として襲ってくるか捕まえて売ろうとするといった可能性があるためリスクが高すぎるのである


「どうしたの?ヤミー何処か具合が悪いの?」


今のパパさんたちの話を聞いていなかったのであろうロゼッタちゃんが心配そうに私の頭をなでている中、私はうんうん唸りながらどうするか考え続けていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



―「え?…昇格…試験?」


「そう、こないだレッドベアとグレイウルフを何体か倒したやん?

それで上の人達に報告したら昇格すべきやって言うてんねん」


秋の収穫祭の話を聞いてから2日目のこと 冒険者協会にて秋までに村を出て1頭で生きていくためにも

より多く稼ぐためいつも以上に

仕事を受けようと受付に行くとアリシアがヤミーに昇格試験を受けないかと

話を持ちかけてきた。

 話を聞くに昇格すれば難易度の高い依頼が受けれるようになって

報酬もより多くもらえるとのことだったので

ぜひ受けたいと答えるとアリシアは嬉しそうに頷く


「ならよし!ほな昇格申請手続きを行うわな

あとは試験官として

鉄札てつふだ』の上級冒険者の方が

この近うやと都市マリヴェムから

来るやろうから試験は2週間後くらいかしら?

それまで試験勉強頑張ってな!」


冒険者協会の冒険者には一応階級が存在する

初心の『木札きふだ

中級の『銅札どうふだ

上級の『鉄札てつふだ

そして英雄の『銀札ぎんふだ』の4つがあり

それらは首に下げた札が協会の冒険者であり

階級証明となる

そして、冒険者ヤミーは『木札』であった。

 木札でも生活は問題ないといえるのだが

それは人間ならばという話であり

山羊であるヤミーにとって素性を隠す面でも

心休める宿泊場所の確保ができないというのはかなり苦しく

それ故に昇格は必然と言えるだろう

と、考えながらペルペの町中を歩いていると彼女の目の前にいた人物に気づかず

ぶつかった


「わわっ!?」


「おっと!すまないねお嬢ちゃん怪我はねぇかい?」


「あっえっと、うん、大丈夫!

そっちこそ怪我はない?」


ぶつかった相手は大の大人が見上げるほどの大男で

その手には鋭い爪があり

全身には白と黒の縞模様がある

そしてその顔は人のものではなく虎の顔だった


…男は虎の獣人のようだ


服装は黒のジーンズに上も黒のワイシャツ

そしてその服の上には革鎧を着て腰には短剣


そして首に『鉄札』をつけている


…どうやら彼は冒険者らしい


しかし、このようなドがつくほどの田舎に

上級の『鉄札』冒険者が来ていることに

ヤミーは驚いた


なんせこの田舎では上級冒険者からすれば稼ぎなどあったものではない

それ故、このレベルの冒険者はもっと大きな街か都、もしくは王都に行くのだろう

ヤギのヤミーとしてはロゼッタちゃんとも仲が良くできれば田舎でもいいのだが

稼ぎがないものだから冒険者としては

かなり生活は苦しい

そしてこのままだと自身は

秋の収穫祭に丸焼きになってしまう


だからなるべく早く昇格して大きな街あたりにでも行きたいとヤミーは考えている


「はっはっは!!大丈夫だ!

なんせオレは頑丈だからな!

だからその立派な角が取れたら大変だ

ツノ持ちの獣人は角を失ったら

結婚できないって話だろ?」


「…?…あ!

うんうん…!

…そう…だね!!気をつけなきゃ!

ごめん!あははは…」


獣人の言葉にヤミーは一瞬訝しみ

固まったが慌てて返す

残念ながら彼の言う『角を折ってしまったら結婚できない』

などの獣人の文化などは知らない

なにせ彼女は『ただの賢いヤギ』

であって『獣人』ではないのだ

獣人の彼が心配して

ヤミーの角に傷がないか触れようとしたので

彼女は急いでいると彼に伝えると

逃げるようにして走り去った


というか逃げた

実際、風魔法の応用で

触り心地などを再現しているが

意識して触られたりするとバレる恐れがあったためにこのように逃げたのだ


ヤミーが走り去ったあと虎の獣人の冒険者ピム・エッジはただその場で立っていた


元々強面なため恐れられやすく結構気をつけているつもりだが

こうもあからさまに逃げられると、ー


「…ちょっと傷つく」


そんな彼の背後から話しかける者がいた


「気にするなピム、君の魅力はハートさ!

それにその見た目だってもふもふしてかわ…

―じゃなくてかっこいいよ!」


「ありがとなヴァナ

だがかわいいは言ってくれるな」


「わははは……バレちゃった?」


背後から現れた黒いローブ服を着込み

背中に荷物の入った鞄とあかざの杖を

背負いこげ茶の長い髪を三つ編みにし

片方の煤けた青の瞳だけ長い髪から出した人間の少女ヴァナは笑いながら頭をかく

彼女の首元にも『鉄札』が光っている


「でも、変な子だったね」


「…変?」


ピムはヴァナの言葉に片眉をあげ

そんな顔を見たヴァナは

少し真剣な顔になって答える


「うん、変だったよ

だってあの子全く 獣人の文化とか知らない感じだったみたいだし

それにどうもあの姿も『本当の姿じゃない』みたいだしね」


ヴァナはそう言うと懐から干した果物を出してかじった

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